第5回 BHPビリトン

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銅、金、ウランを採掘するSA州のオリンピック・ダム鉱山。拡張計画への投資決定の先送りが発表された(Photos:-BHP-Billiton)
豪州企業名鑑

 

第5回 中国依存は豪州経済の写し鏡
資源価格下落で投資にブレーキ

 

BHPビリトン
BHP Billiton

  鉄鉱石や原油・ガス、石炭、卑金属、ウランなどの鉱物資源の開発や生産、投資を世界各地で手がける英・豪系の鉱業大手BHPビリトン。豪州の鉱業大手BHPと英・オランダ系の同ビリトンが合併して2001年に発足した。鉱業会社としては世界で最大、時価総額でも有数の超巨大企業となっている。
■会社概要
登記名———————————BHPビリトン・リミテッド(豪州)、BHPビリトンPlc(英国)
本社———————————–メルボルン
創立———————————–1860年(ビリトン)、1885年(BHP)
設立———————————–2001年
最高経営責任者(CEO)——————–マリウス・クロッパーズ氏
従業員数——————————–12万5,000人(社員と契約社員の合計)
売上高*———————————722億2,600万米ドル(0.7%)
利子・税引き前利益(EBIT)*—————-272億3,800万米ドル(▲14.8%)
*BHPビリトン2012年6月期決算(カッコ内は前年度比の増減率、▲はマイナス)

 


■沿革


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2007年からCEOを務めているマリウス・クロッパーズ氏

 社史によると、NSW州西部ブロークン・ヒル近郊の羊牧場で1883年、黒いすずの鉱床が発見された。これをきっかけにして1885年、銀、鉛、亜鉛を採掘するブロークン・ヒル・プロプライエタリーズ(BHP)が立ち上がった。1900年代初頭までには鉄鉱石の採掘や製鉄にも乗り出した。その後、合併や吸収を繰り返して鉱物資源の採掘から精製、製鉄、石油・ガス開発まで幅広く手がけるようになった。海外権益への投資も進め、資源国豪州を代表する大手企業に成長した。

一方のビリトンは、オランダ領東インド(現在のインドネシア)のビリトン島でオランダ人が1851年にすずの鉱床を発見したのが発端となり、1860年にオランダで設立された。主にアルミニウムやアルミナ、クロム、マンガン、合金、ニッケル、チタンなどの金属資源の開発・生産を行う世界的な大企業となった。

2001年、豪州のBHPと、英国に拠点を移し南アフリカに多くの権益を持つようになったビリトンが合併した。当時、外資に買収される豪州の代表的な企業が相次いでいたため「ブランチ・エコノミー」(支店経済)という言葉がよく使われた。しかし、BHPビリトンは本社をメルボルンに残し、ロンドンに経営本部を置いた。豪証券取引所(ASX)に上場するBHPビリトン・リミテッドと、ロンドン証券取引所に上場するBHPビリトンPlcの2つの上場会社が、1つの事業体を経営する「二元上場会社」という形態を採った。

 


■現況


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WA州北部ニューマンの鉱山で鉄鉱石を運ぶ巨大なダンプ・トラック

新会社は製鉄部門を本体から切り離すなど経営の効率化を進める一方、M&Aや権益への投資を加速して規模拡大を図った。05年にはSA州の銅・金・ウラン鉱山オリンピック・ダムなどを所有するウエスタン・マイニング・コーポレーション(WMC)を傘下に収めた。07年には英・豪系の同業リオ・ティントに敵対的買収を仕掛けたものの、08年の金融危機後に断念している。

12年6月期の年次報告書によると、世界中に100カ所以上の拠点を展開し、社員と契約社員を合わせて12万5,000人を雇用している。12年6月期の売上高は722億2,600万米ドルと前年度比0.7%増。利子・税引き前利益(EBIT)は、272億3,800万米ドルと同14.8%減少した。

主な事業は、原油、アルミニウム、卑金属(ウランを含む)、ダイヤモンドなど、ステンレス鋼原料、鉄鉱石、マンガン、原料炭、一般炭の8部門。売上高は、鉄鉱石(226億100万米ドル)、原油(129億3,700万米ドル)、卑金属(115億9,600万米ドル)、原料炭(75億7,60 0万米ドル)、一般炭(60億2,200万米ドル)の順に多い。事業別のEBITを見ても、鉄鉱石(142億100万米ドル)、原油(63億4,800万米ドル)、卑金属(39億6,500万米ドル)の3つが稼ぎ頭となっており、全体のおよそ9割を占めている。

一方、ASXの株価は11年初頭に45豪ドルを超え、金融危機前の07年の最高値水準を回復した。その後反落し、12年末にかけてやや持ち直したものの、12月末時点で37豪ドル前後で推移している。

英経済紙「フィナンシャル・タイムズ」の世界企業ランキング「グローバル500」(2012年)によると、12年6月30日時点の株式時価総額は約1,795億米ドル。株価の低迷を背景に、時価総額の順位は世界20位と11年の6位から大きく後退した。 このランキングで日本企業のトップは30位のトヨタ自動車となっている。

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WA州沖で2010年に操業を開始した浮遊式の石油生産システム

 


■展望


近年の商品価格の高騰を受けて飛ぶ鳥を落とす勢いだったBHPビリトンだが、ここにきて株価の下落、減益と、雲行きがやや怪しくなってきた。世界経済の不透明感を背景に最大の需要先である中国の景気が減速、商品価格が大幅に下落しているためだ。

12年6月30日時点の主な商品の国際価格(米ドル建て)を1年前と比較すると、原料炭が35.2%、アルミニウムが26.9%、一般炭が26.2%、鉄鉱石が20.8%、それぞれ大幅に下落している。

豪州の国内事業では12年、8月にオリンピック・ダム鉱山の拡張計画への投資決定を先送りすると発表したほか、10月に合弁で操業するQLD州の炭鉱を閉鎖、同月に鉄鉱石部門の人員削減も発表するなど相次いでコスト削減に踏み切った。 マリウス・クロッパーズ最高経営責任者(CEO)は年次報告書で、商品価格の下落と高い資源国通貨という厳しい状況に「今後1年間は力強いバランスシートを維持するため新しい開発計画を承認する計画はない」と言明した。

12年6月期の売上を国・地域別に見ると、首位の中国が216 億1,70 0万米ドルと全体の30%を占める(2位の日本は89億2,000万米ドル=12.4%)。その現状は「中国頼み」と言われる豪州経済の相似形と言える。

商品価格の下落にもかかわらず、豪ドルの対米ドル相場は依然として高水準で、資源輸出に不利な状況は続いている。新規の大型投資を抑制する動きはしばらく続きそうだ。

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