AUSメディア・ウォッチ「ブック・クラブのすすめ」

オーストラリア・メディア・ウォッチ

オーストラリアの新聞をはじめ、テレビ、ラジオ、映画、書籍などのメディアで今話題のもの、または面白い記事やエピソードを毎月1つ取り上げ、そこから見えるオーストラリア社会を在豪日本人の視点で紹介する。

第8回:ブック・クラブのすすめ

日本ではあまり聞かないがオーストラリアで一般的なものにブック・クラブがある。クラブのメンバーで同じ本を読み、定期的に集まって読んだ本について話し合うグループだ。

こう書くと真面目な読書会のようなイメージがあるが、実際はワイン片手におしゃべりをする気軽な集まりのようなものが多い。本にかこつけて人が集まる機会を作るという意味合いもあるのかもしれない。

ブック・クラブってどんなもの?

個人的な話で恐縮だが、私は引っ越しのたびに地元のブック・クラブを見つけて入ることにしている。ブック・クラブは口コミで広がるので、周囲の人に聞けばたいてい誰かが地元のクラブを知っている。多くの場合、ブック・クラブは近くに住む知り合いで形成されている。交替で各メンバーの家に集まるからだ。地域の人と知り合う良い機会だ。

私がこれまでに参加したブック・クラブは3つ。海外赴任中の女性たちが集まるクラブ。男性メンバーが多く、ワインと本のどちらがメインか分からないクラブ。お茶を飲みながら比較的きちんと本の議論をする、子育て世代の女性を中心としたクラブ。それぞれに読む本や議論の内容が異なり、違った楽しみ方があった。

多種多様なブック・クラブだが、共通しているのは、本というテーマのもとに一歩踏み込んだ話ができることだ。

人と道で出会えば天気の話。バーベキューで集まれば最近の旅行の話。ディナー・パーティーでは人の噂話。社交辞令的な会話をする機会は多くても、人と踏み込んだ議論をする機会は意外と少ない。しかし本当は誰でも、「人生これでいいのか」「愛とは」「本当の幸せって?」というようなことについて時には考える。そんな少し気恥ずかしい話でも、本という口実があれば気軽にできるものだ。だからブック・クラブは面白い。

「ブック・クラブがあることで私の人生は豊かになっている」とまで言うのは、13年前にキャンベラで自らクラブを立ち上げて以来まとめ役として積極的にかかわるトレーシー・ノーブルさん。

ノーブルさんがブック・クラブを立ち上げたのは産休中。子供が産まれたら授乳中に本がたくさん読めるだろうという気軽な発想だった。そこで職場や教会、近所の人たちを集めてブック・クラブを作った。

「毎月の集まり(ブック・クラブ)がなければ、こんなに多くの異なった本を読むことはありませんでした。そんな本を読んで議論をするのが好き。そして議論が共にできる(ブック・クラブの)仲間が好きです」

ノーブルさん(中央)とブック・クラブのメンバーたち
ノーブルさん(中央)とブック・クラブのメンバーたち

ブック・クラブをまとめてきた13年の間には、メンバーたち自身も離婚、産後うつ、家族の死などを経験してきた。「そんな時、ブック・クラブに助けられたという声もメンバーたちから聞きます」

定期的に集まって本、人生、家族、政治、恋愛、死などについて語るブック・クラブ。踏み込んだ個人的な話題に話が広がることもある。バーベキュー・パーティーで話すには重すぎる内容も意外と自然に話せてしまう場だ。

テレビ版ブック・クラブ

テレビで観られるブック・クラブもある。ABCテレビで過去10年間にわたって放送されている番組『The Book Club』だ。プレゼンターのジェニファー・バーンさんとその他の出演者が、新刊書や話題の本について話す。

ノーブルさんも番組視聴者の1人だ。読みたい本を見つけるきっかけになるし、意見の異なる出演者が本の解釈をめぐって議論を交わすのが面白いという。

そんな老舗番組の新シリーズが今月17日から始まる。第1回目では、オーストラリア人児童文学作家であるアンディ・グリフィスさんへのインタビューが予定されている。

小学生の子どもがいる家庭であれば、ツリーハウス・シリーズの本が必ず家に数冊あるのではないだろうか。今では第5作目の『The 65-Story Treehouse』まで出版されている。同書は、昨年オーストラリアで最も売れた本でもある(ニールセン・ブックスキャン調査)。

テレビ番組『The Book Club』の新シリーズは、昨年までの毎月の放送から毎週の放送に形を変えての再スタートだ。最新作『The 78-Story Treehouse』の出版を8月に控えた人気作家へのインタビューも興味深いが、今年話題のその他の本に触れるのも楽しみだ。

番組を観て楽しまれた方、本が好きな方、読んだ本の感想を誰かに言わないと気がすまない方。番組を観たついでに、地元で実際のブック・クラブを探してみてはどうだろう。

ブック・クラブは正式な組織ではない。気軽な趣味の集まりだ。ノーブルさんに習って自分で作ってしまうのもありだ。

『The Book Club』新シリーズ(全13回)は、5月17日(火)夜10時からABCテレビで毎週放送予定。


クレイトン川崎舎裕子
Hiroko Kawasakiya Clayton
◎米系通信社の東京特派員(経済・日銀担当記者)を経て、2001年よりオーストラリア在住。クイーンズランド大学院にてジャーナリズム修士号を取得後、03年からライター。キャンベラを拠点に社会事情などについての記事を雑誌や新聞に執筆する
Web: twitter.com/HirokoKClayton

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