カルチャー・アイ「ミュージカル『キャッツ』」

CULTURE EYE カルチャー・アイもっと知りたいオーストラリアの歴史や楽しみ方を、気になるイベントや、この国にまつわる文化作品を通してご紹介。毎日見る景色とは違った視点から、今まで知らなかったオーストラリアの魅力や奥深さに出合えるかも。

(取材・文=関和マリエ)

今回のピックアップ▶▶▶ ミュージカル「キャッツ」

ミュージカル「Cats(キャッツ)」は20人以上にもおよぶキャラクター(猫)たち各々の人生を紹介していく形で進行する群像劇だ。夢や希望、もめごとや恋、若さや老い、出会いと別れが、美酒のごとき味わいのある歌と踊りによってテンポ良く繰り広げられる。さまざまな人生が交錯する多民族国家でのキャッツ観賞は、この作品が国境を越えて愛される理由をより理解しやすくする気がする。

「キャッツ」公演の1シーン。物語の主人公は街の片隅のゴミ捨て場で奔放に生きる猫たち「ジュリクル・キャット」。年に一度、天上の空に送られ新たな命を授かるたった1匹が選ばれる特別な夜が訪れ、我こそはと名乗りを上げる猫たちの人生が語られていく...。©Hagen Hopkins
「キャッツ」公演の1シーン。物語の主人公は街の片隅のゴミ捨て場で奔放に生きる猫たち「ジュリクル・キャット」。年に一度、天上の空に送られ新たな命を授かるたった1匹が選ばれる特別な夜が訪れ、我こそはと名乗りを上げる猫たちの人生が語られていく…。©Hagen Hopkins

アイロニーや社会批判にも満ちた同作だが、それを笑い飛ばすでも嘆くでもなく最後まで魅せてくれるのは、やはり物語の力によるところが大きい。原作『キャッツ – ポッサムおじさんの猫とつき合う法』の作者T.S.エリオットはその著作のほとんどを占める詩作品からもうかがえる通り、限られた言葉の中に無数のイメージや視点を簡潔に落とし込む名手だ。

キャッツのエンターテインメント性を決定付けるのは、アンドリュー・ロイド・ウェバー作曲の音楽。最初の一音が鳴った瞬間に空気を変え、観る者を天上の喜びから悲しみの淵にまで自在に連れて行く魔法がそこにはある。歌声や楽曲の響きを体で感じられる舞台公演ならではの感覚に、思わず心を揺さぶられた。ロックやスイング、カンツォーネなど多様な音楽性によりタップやバレエなど豊かなダンス表現が展開し、アクロバティックな動きも含めすべてのシーンが山場のようで目が離せない。

公演が行われたキャピタル・シアター。シドニーでは10月31日~11月29日に上演された。
公演が行われたキャピタル・シアター。シドニーでは10月31日~11月29日に上演された。

同作を語る上で欠かせないのが、元娼婦として仲間から蔑まれ疎まれる孤独なグリザベラによる永遠の名曲「メモリー」の歌唱だ。今回その役に抜擢されたのはオーストラリアの国民的歌手でテレビ番組「The Voice」でもお馴染みのデルタ・グッドレム。緑の木々を思わせるその飾り気のない美声と歌唱力は素晴らしく、逆に動きのみで演技する場面には物足りなさも感じられたが、全身から思いのほとばしるような歌はそれを補って余りあるものだった。

スタンディング・オベーションで幕を閉じた同公演はシドニーでは全日程を終了したが、2015年12月から2016年前半にかけてオーストラリア各都市での上演が決定している(下記ウェブサイト参照)。ロングラン作品たるゆえんをぜひ自身の目で確かめてみて欲しい。

Web: www.catsthemusical.com/australia

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