ベネチア・ビエンナーレ国際美術展特集


「掌の鍵」/塩田千春©Yumi Yamaguchi

今年もイタリアのベネチアで、世界で最も権威ある国際展覧会「ベネチア・ビエンナーレ国際美術展」(以下ベネチア・ビエンナーレ)が開催されている。数々の参加国の中でも、今回例年以上に盛り上がりを見せているのがオーストラリアと日本だ。そこで、参加アーティストや関係者の独占インタビューも盛り込み、その模様を徹底レポートする。文・構成=荒川佳子、現地取材協力=Naomi Shedlezki(Match Box Projects)

ベネチア・ビエンナーレとは

イタリアのベネチアで、1895年から2年に1度開催されている現代美術の国際美術展覧会。開催期間中は、参加国がベネチア市内の会場にパビリオンと呼ばれる展示館を構え、代表キュレーターと代表アーティストによる展示を行う。国が出展単位ということ、ここで与えられる「金獅子賞」「銀獅子賞」「特別賞」の各部門の中には、「国別参加部門」も存在すること、これをめぐって参加国同士が威信をかけることなどが、美術界のオリンピックとも言われるゆえんである。

こうして各国の美術関係者が一堂に会する同展は、現代美術の振興を図り、国際文化交流を深める極めて貴重な場となっている。今年のベネチア・ビエンナーレは11月22日まで開催される。

海外メディアからも称賛を浴びた日本館

今年の日本館での出展に選出された作家は塩田千春氏。キュレーターは、中野仁詞氏。塩田氏は「記憶」や「過去」をテーマに、大規模なインスタレーションを手がけることで知られる作家だ。現在はドイツ在住で、欧州を拠点に活動している。

本展で発表した作品「掌の鍵」のテーマは「歴史を育む人間の記憶」。日本館の壁や天井に目の覚めるような鮮やかな赤い毛糸を張りめぐらし、蜘蛛の巣のような状態となった毛糸の先にはさまざまな形をした18万本の鍵をつり下げた。その下に静かに配置されているのは、2隻の古い木製の小さな舟。自然光・赤い毛糸・鍵・古い船と、使われた要素はシンプルなものの、それらは塩田氏の繊細な感性によって、大胆で華やかな空間に仕上げられた。会場に1歩足を踏み入れると同時に、瞬時に伝わるその感動は観る者の心をつかみ、本作は各海外メディアからも一斉に取り上げられた。

新設パビリオンで話題のオーストラリア

日本館と同様、今回、各国やメディアから大きな注目を浴びることとなったのが、オーストラリア館だ。その理由は新たに設立された豪華なパビリオン。750万ドルもの資金を投じて、この再建設プロジェクトは敢行された。手がけたのはメルボルンを拠点に活躍する建築チーム、デントン・コーカー・マーシャル(編注:ジョン・デントン、ビル・コーカー、バリー・マーシャルの3名による)。河辺に佇む、この見事な現代建築物の誕生は、比較的歴史は浅いが勢いのある豪州のユニークな現代美術シーンが、各国から改めて見直される大胆な変革のきっかけとなった。

新設されたオーストラリア館©John Gollings

キュレーターはリンダ・マイケル氏が務め、作家は、昨年日本でも展示を行ったアデレード出身のアーティスト、フィオナ・ホール氏が選出された。今回彼女は「Wrong WayTime」と題したマルチメディア・インスタレーションを行い、独自の世界観を生まれたての新空間において見事に表現、大成功を収めた。リンダ氏によれば、これは意味深長な考古学的アプローチの展示で、現代社会における問題や揺らぎを具象化しているという。例えば、ここで出展された「Ulmus Glabra」(写真②)などは、紙幣の上に、特有の植物を丹念に描きこむことで、世界経済や歴史、地理、時間を超えた旅についてのさまざまな疑問を投げかけようとするものだった。

①「Manuhiri」/Fiona Hall© Christian Corte

②「Ulmus Glabra」/Fiona Hall© Christian Corte

③フィオナ・ホール氏。オーストラリア館で©Angus Mordant

今年の傾向

今年のベネチア・ビエンナーレの総合キュレーターを務めたのは、ナイジェリア生まれの美術評論家、オクウィ・エンヴェゾー氏。1980年代にニューヨークへ移住し政治学や文学を学んだという同氏は、ポスト植民地主義や政治的な問題なども多く扱う。数々の国際展を手堅くまとめてきた仕かけ人で、現在はミュンヘンで活躍している。その彼が今回選んだ総合テーマは、「All the World’s Futures(全世界の未来)」。さらに彼自身の審美眼によって135人の参加アーティストが選出され、これには7人ものオーストラリア人アーティストも含まれた。

 

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▶オーストラリア館理事インタビューはこちら

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