編集部イチ押し! 3月の新作映画をチェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじとともに注目の新作を紹介 ! レイティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

ジャスパー・ジョーンズ
Jasper Jones
ドラマ、ミステリー/M 3月2日公開予定 満足度★★★

隊長が観た!

アカデミー賞にノミネートされ、これでようやくメル・ギブソン復活!と言われた彼の監督作品『ハクソーリッジ命の戦場』(2016年)。アメリカ陸軍衛生兵の話だが、次から次へとオーストラリア人俳優が出てきて、自分の中ではすっかりオーストラリアの話のようになっている。この映画で主人公の父親役を演じたのが、ハリウッドでも大活躍中のオーストラリア人俳優ヒューゴ・ウィーヴィング、その妻役もオーストラリア人のレイチェル・グリフィス。彼女を一気にスターにしたのが『ミュリエルの結婚』(1994年)で、彼女だけでなく共演のトニ・コレットもその後ハリウッドへ渡り『シックス・センス』(1999年)などで有名になった。

いつも感心するのは、ハリウッドで有名になり世界的なスターになっても、地元の低予算映画などにもちゃんと出演するオージー俳優が多いこと。今回紹介するオーストリア映画『ジャスパー・ジョーンズ』には、そのヒューゴ・ウィーヴィングとトニ・コレットが出演。原作はオーストラリアの作家クレイグ・シルヴェイが2009年に発表したベストセラー小説で、11年のALAプリンツ賞で最終候補作になるなど高評価を受けている。

同作は1960年代のオーストラリアが舞台で、読書好きの13歳の少年チャーリーが主人公。ある晩、白人とアボリジニの間に生まれた問題児ジャスパー・ジョーンズが彼の寝室を訪ねてくる。ジャスパーに助けを求められたチャーリーが一緒に森の中に入っていくと、そこには……。

チャーリーを演じるのは、『PAN~ネバーランド、夢のはじまり~』(2015年)でヒュー・ジャックマンと共演したブリスベン出身のリーヴァイ・ミラー。彼は「ラルフ・ローレン」の15年秋冬子ども服キャンペーンのグローバル大使なども務め注目が集まる子役の1人。更にその友達役がパース出身で『ナイスガイズ!』(2016年)出演のアンゴーリー・ライスで、彼女の次回作は今年公開の新『スパイダーマン』と、ソフィア・コッポラ監督『白い肌の異常な夜』のリメイク版。つまりベテラン・オージー俳優と注目のオージー新人俳優の共演で、かなり期待していた『ジャスパー・ジョーンズ』なのだ。

チャーリーはジャスパーと会った夜から、両親の不和や、街の中にある人種差別などの闇の部分に気付き、友情、恋などを通して少しずつ成長していく。しかしどうもそれぞれのエピソードのプロットがバラバラとした印象で、最初の森の中での事件をメインとしつつもそのミステリーが続いていかず軸がブレブレ。子どもたちが主人公なので、話題のテレビ・ドラマ『ストレンジャー・シングス』や、スピルバーグ製作の『SUPER8/スーパーエイト』(2011年)のような、胸がキュンキュンする時代背景が濃厚に描かれていると思ったけれど、この辺りも、60年代オーストラリアのノスタルジックな雰囲気があまり醸し出されていなかった。

それから大好きなトニ・コレットだが、「ケロヨン登場?」と思ったほどの怪演ぶりはどうなんだろう。子役は良かったが、期待が大きかったのか、ちょっと残念な結果となってしまった。


T2 トレインスポッティング
T2 Trainspotting
ダーク・コメディー、ドラマ/R18+ 2月23日公開予定 期待度★★★

クールな音楽、スタイリッシュなせりふとカメラ・ワークでポップ・カルチャーと退廃的な若者たちを描き、カルト的な人気を誇った『トレインスポッティング』(1996年)。21年の時を経て、その待望の続編が公開。監督は前作と同じくダニー・ボイル、主要キャストのユアン・マクレガー、ロバート・カーライル、ジョニー・リー・ミラー、ユエン・ブレムナー、ケリー・マクドナルドらも再び登場する。ヘロイン中毒、ゆすりや泥棒など社会のはみ出し者たちが、スコットランドのエディンバラで再会。器用な大人になりきれず、荒んだ人生を全力で駆け抜ける彼らの選ぶ未来とは? サウンドトラックも熱狂的に支持された前作同様、今作を彩るザ・クラッシュ、クイーン、アンダーワールドなどの楽曲も楽しみ。


ローガン
Logan
SF、ドラマ/TBC 3月2日公開予定 期待度★★★

アメリカン・コミック『X-MEN』の超人キャラクター「ウルヴァリン」を主人公としたスピンオフ映画シリーズの第3作目。ウルヴァリンは高い肉体再生能力を持つ不老不死のヒーローだが、過去の同シリーズとは異なる哀愁の漂う同作では、長い戦いに疲れ顔に深いしわを刻んだウルヴァリンのローガン(ヒュー・ジャックマン)が登場。年老いたプロフェッサーX(パトリック・スチュワート)に「ミュータントの最後の希望」という謎の少女を託される。やがて少女の特異な能力も明らかに……。アメコミ大手マーベル・コミックの作品から飛び出したヒーロー作品とは思えない渋い画面だが、ハードなアクションも健在。監督は『17歳のカルテ』や『ウルヴァリン:SAMURAI』のジェームズ・マンゴールド。


イーグル・ハントレス
The Eagle Huntress
ドキュメンタリー/G 3月16日公開予定 期待度★★★★

サンダンス映画祭で注目を集めた、鷹匠の少女のドキュメンタリー。元々男性のフィールドだった伝統あるモンゴルの鷹匠だが、アルタイ山脈近くに住む13歳のアイショルパンは学校生活の傍ら父から教えを受け、毎年恒例の鷹匠の大会出場を目指す。見渡す限りに広がる大地と壮麗な山脈、雪山などを背景に、自然体であどけない少女の成長が描かれる。BBCニュースで彼女の存在を知ったという監督のオットー・ベルは、たった3人のクルーで「Huntress(狩猟の女神)」としての彼女の姿をフィルムに収めた。ドローンやウェアラブル・カメラ、折りたたみクレーンなどを駆使して鷹の飛翔を撮影したという、その映像の臨場感にも期待。ナレーションは『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のデイジー・リドリー。


沈黙-サイレンス-
Silence
ドラマ/MA15+ 公開中 期待度★★★★

キリスト信仰をテーマにした遠藤周作の『沈黙』。この小説を初めて読んだ時から映画化を考えていたというマーティン・スコセッシ監督が、約30年の時を経て完成させた大作がついに公開。キリスト教信仰が禁じられていた江戸時代、布教のために先に入国していた宣教師の行方を追ってポルトガルから長崎へ密航した2人の弟子は、幕府によるすさまじい宗教弾圧と、その中で信仰を捨てずに生きる貧しい日本人の姿を目の当たりにする。異国での厳しい弾圧下で信仰心を試される弟子の1人を演じるのは『アメイジング・スパイダーマン』で主演を果たしたアンドリュー・ガーフィールド、日本の俳優陣には浅野忠信や、海外作品初出演となる窪塚洋介など。「踏み絵」という言葉の重みが迫ってくる問題作。


★今月の気になるDVD★

アメリカン・ヒストリーX
American History X
ドラマ 120分(1998年)

近年、実話に基づいた作品の受賞傾向が強いアカデミー賞の作品賞。特に、アメリカで制作された『クラッシュ』(2004年)など人種差別問題を扱った作品は、その国に住む者にしか持ちようのない「問題への当事者意識」が色濃く反映されたものと言える。

『アメリカン・ヒストリーX』もアメリカにしか語り得ない衝撃作。父親を黒人に殺された恨みから白人至上主義グループのメンバーになったデレク(エドワード・ノートン)はある日、黒人の車泥棒を殺害した罪で服役することになる。デレクの弟ダニー(エドワード・ファーロング)は服役中の兄を崇拝し、兄以上に白人至上主義に身を染めていく。しかし、刑期を終えて戻って来たデレクは別人のように穏やかな人間に変わっていた。あまりにも違う兄の姿に、ダニーの心は揺れ動いていく……。

同作の題名は、物語の冒頭でヒトラーの『ある闘争』を論文のテーマに選んだダニーに対して、校長が兄デレクについてのレポートを書くよう出した課題のタイトルでもある。物語の最後に衝撃の展開が待っているが、兄に諭され人種差別への考えを改めていくダニーはそのラスト・シーンの前に「怒りに任せるには人生は短すぎる」という言葉と共にレポートを締めくくる。物語を通して見ることができる兄弟の内面的な変化に、その言葉の本当の意味は一体何か考えてみてはどうだろうか。(編集=RY)

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