編集部イチ押し! 4月の新作映画をチェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじとともに注目の新作を紹介 ! レイティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

「第89回アカデミー賞」

隊長が観た!

2月26日、ロサンゼルスで開催された第89回アカデミー賞授賞式。今回は映画レビューの代わりに、この映画界の一大イベントの所感などをお届けする。

まず、今年のアカデミー賞最大の話題は何と言っても「作品賞の発表間違い」という前代未聞のハプニング。授賞式のクライマックスである作品賞発表のプレゼンターとして『俺たちに明日はない』主演のウォーレン・ベイティとフェイ・ダナウェイが登壇。封筒を開けたウォーレンが困惑の様子でその紙をフェイに見せたところ、フェイがすぐさま『ラ・ラ・ランド』と発表。そして、同作のキャストやスタッフが壇上でスピーチを始めたにもかかわらず、間違いが明らかにされ受賞作は『ムーンライト』と訂正された。しかし、その時点で既に2人もの受賞スピーチが終わり、しかもその間違いを発表したのが『ラ・ラ・ランド』のプロデューサーというお粗末ぶり。

原因は、プレゼンターへの封筒の渡し間違いという人的ミス。封筒は2通用意されて上手と下手にいるスタッフから手渡されるものだが、これはプレゼンターがどちらから出るかが不明なため。そこで、既に発表された主演女優賞(『ラ・ラ・ランド』エマ・ストーン)の残された方の封筒がウォーレンの手に渡ってしまった。間違いに気付いた彼がそれをフェイに見せたところ、彼女は書かれていた『ラ・ラ・ランド』の文字を見て口にしてしまった。この封筒を管理していたのが、票の集計を請け負っていた大手会計事務所の社員。この社員が、作品賞発表前に舞台袖でエマ・ストーンの写真を撮り、ツイッターに投稿していたことも発覚し(本人は投稿を削除したが)大問題に。結局、彼は今後アカデミー賞に一切出入り禁止となってしまった。

授賞自体は、最多ノミネートの『ラ・ラ・ランド』一色になるかと思っていたが意外とバラけて、1作に偏ることなくバランス良く作品が並んだ。特に『ムーンライト』は、人種、貧困、麻薬、それにセクシャル・マイノリティーと暗く重くなりがちな素材を扱いながら、まるでフィルムを洗ったようにきれいな発色で描き、映画全体のテンポ、音楽の使い方など、バリー・ジェンキンズ監督はこれが長編2本目とは思えない完成度の高さ。主人公を年代別に3人の俳優が演じているが、似た俳優を使うのではなく、性格や表情などのキャラクターの作り込みで同一人物に見せてしまう演出力。個人的に高く評価していた作品だったので、この映画が作品賞に輝いたのは大変うれしい。しかし、話題が完全に賞の発表間違いやその犯人探しに向かい、ちゃんとしたスピーチも聞けず、この作品にスポットが当たらなかったことが悔やまれる。

更に、式自体がトランプ大統領に対する政治的な色合いが強かったのも、予想していたとはいえ気になった。他にも、司会のジミー・キンメルの“宿敵”であるマット・デイモンに対する言動も、2人の関係を理解している人にはネタとしてウケるだろうが、ちょっとイジメっぽく見えてしまった。

笑ったのは、ニコール・キッドマンの不可思議な拍手。一部ネットで、エイリアンとかアザラシの曲芸と言われ、一瞬映っただけで目を疑うほど変な拍手だったが、借り物の高価な指輪を傷つけないように気を遣ったためと後で語っていた。最後に、ライアン・ゴズリングが同伴していた胸元がセクシーな女性。妻のエヴァ・メンデスではなかったので、ネットで「一体誰?」と話題になっていたけれど、彼女はライアンのお姉さんなので、ファンの方、どうぞご安心を。


美女と野獣
Beauty and the Beast
ファンタジー/PG 公開中 期待度★★★

ディズニーが1991年に制作したアニメをディズニーが自ら実写化した作品。若い娘と野獣を主役に、外見にとらわれない人間の心の美しさを描いて万人に愛されてきたストーリーで、今作で主役の娘ベルを演じるのは『ハリー・ポッター』シリーズでおなじみのエマ・ワトソン。ハリポタを卒業した後、現代ドラマの映画に何作か出演したもののヒット作の無かった彼女が、再びファンタジーの世界に舞い戻ってきた。アニメから飛び出したような彼女のスレンダーな肢体と芯の強さを秘めた表情が美しい。野獣を演じるのは、人気ドラマ『ダウントン・アビー』で注目されたダン・スティーブンス。ディズニー作品らしく、アニメ版からの楽曲に新曲を加えたミュージカル・ナンバーが物語を盛り上げる。


ゴースト・イン・ザ・シェル
Ghost in the Shell
SF、アクション/CTC 3月30日公開予定 期待度★★★

士郎正宗の人気漫画『攻殻機動隊』を原作に、アメリカ人の監督と脚本で実写化したハリウッド映画。舞台は核戦争を体験した未来の日本。テクノロジーが支配する社会で犯罪と立ち向かう内務省の公安9課(通称攻殻機動隊)最強の捜査官・少佐は、世界を揺るがすサイバー・テロ事件を発端に、忘れていた記憶を取り戻す。そこには驚くべき過去が隠されていた。原作の主人公・草薙素子にあたる全身義体の少佐を演じるのは『アベンジャーズ』などのアクション映画でも活躍するスカーレット・ヨハンソン。全身が透明になる「光学迷彩」など、攻殻機動隊の世界観を彩る数々の科学技術がVFXでどのように表現されるのかも楽しみ。少佐の上司・荒巻をビートたけしが演じる他、桃井かおりら日本人俳優も出演。


ライフ
Life
SF、スリラー/CTC 3月23日公開予定 期待度★★★★

世界各国から国際宇宙ステーションに集められた6人の宇宙飛行士たち。すばらしいチームとして火星で採取した未知の地球外生命体の細胞を極秘調査していた彼らだが、高い知能を持ち、次第に進化・成長する地球外生命体の存在を前に、その生活や人間関係が狂い始める。形を変えて襲い来る謎の生命体。それは宇宙船のクルーだけでなく地球に住む人びとにも死をもたらす壮絶な恐怖の始まりだった……。期待が高まるシリアスなSFスリラー。宇宙飛行士役を演じるのは『デッドプール』のライアン・レイノルズ、『デイ・アフター・トゥモロー』のジェイク・ギレンホール、真田広之ら。監督はレイノルズの出演作『デンジャラス・ラン』や『チャイルド44 森に消えた子供たち』を手掛けたダニエル・エスピノーサ。


スマーフ:ザ・ロスト・ビレッジ
Smurfs: The Lost Village
アニメ/PG 3月30日公開予定 期待度★★★

ソニー・ピクチャーズが贈る最新3Dアニメーション作品は、青い肌の妖精スマーフたちの新しい冒険コメディー。スマーフ族の村唯一の女性スマーフェットと仲間の男性スマーフたちは謎めいた地図を手に入れ、他の女性スマーフが住むという「失われた村」を探して禁断の森に足を踏み入れる。そこにはスマーフ種族の歴史に隠された大きな秘密が待っていた。スマーフはベルギーの漫画家ピエール・クリフォールが生み出した、ヨーロッパのどこかの森に住むというキャラクター。今作では2011年、13年のスマーフ映画より原作に近いキャラクターの造形になっているとか。声優陣はジュリア・ロバーツの他、歌手のデミ・ロヴァート、『ワイルド・スピード』シリーズ出演のミシェル・ロドリゲスなど豪華なキャスティング。


★今月の気になるDVD★

彼女を見ればわかること
Things You Can Tell Just by Looking at Her
ドラマ 110分(2000年)

ロサンゼルスに住む、職業も年齢も家族構成もさまざまな女性6人の人生への期待や失望を、数日間のエピソードで静かに描いた作品。老母を介護中の医師、不倫相手の子どもを身ごもった銀行支店長、乳がんの恋人と暮らすレズビアンの占い師、10代の1人息子と暮らすシングル・マザーの絵本作家、そして全盲の妹と2人暮らしの刑事。5話のオムニバス形式だが、登場人物が全編を通して絶妙にオーバーラップしているのが見どころ。本人たちは気付いていないけれど皆がどこかでつながっていて、そこに別の物語がある。偶然と言えば偶然。それを安手のテレビ・ドラマのように「そんなのあり?」と感じさせることなく、人生って偶然の重なりだよねと思わせてくれるのは脚本のうまさだろう。

ベテランのグレン・クローズ、全盲の役でもキャピキャピ感を忘れないキャメロン・ディアスなど、女優陣の演技がすばらしい。これほどまで丁寧に女性の心の綾を描けるのは女性監督に違いないと思いきや、監督も脚本もコロンビア出身の男性、ロドリゴ・ガルシア。『百年の孤独』で有名なノーベル文学賞作家ガルシア・マルケスの息子と聞けば、ストーリー・テラーの血を受け継いでいると納得する。

どの登場人物に共感するか。そこから今自分が人生のどの辺りにいるのか、心の底にどんな感情を抱いているのかが分かるかもしれない。(編集=YO)

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