編集部イチ押し! 8月の新作映画をチェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじとともに注目の新作を紹介 ! レイティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

ボンジュール、アン
Paris Can Wait
コメディー、ロマンス/PG 7月20日公開予定 満足度★★

隊長が観た!

ベネチアの嘆きの橋でのサンセット・キッスから38年。50代になったダイアン・レインは、相変わらず清楚な雰囲気を漂わせている。1979年の『リトル・ロマンス』で映画デビューし、その後フランシス・フォード・コッポラ監督作品に出演し、日本でも大人気の女優というか、アイドルだった10代のダイアン。その後、長い間スランプ状態が続いたが、2002年の『運命の女』、翌年の『トスカーナの休日』で見事な復活を果たした。その彼女の最新作が『ボンジュール、アン』。

成功を収めている映画プロデューサーの夫マイケルと、フランスのカンヌを訪れているアン。彼女は耳の具合が悪く、マイケルの次の訪問先であるブダペストには同行せず、車でパリに戻る夫の仕事仲間のフランス人男性ジャックに同乗して先にパリに向かうことになる。カンヌからパリまでは数時間のドライブにはずだったが、ジャックの提案で寄り道しながら2日も掛かってしまう……。

ダイアン・レイン主演でヨーロッパが舞台と、当然あの大ヒット作『トスカーナの休日』のロード・ムービー版を期待してしまった。しかも今回はフランス。ワインから料理、それに南フランスの美しい景色、それに大人の恋と、もう想像するだけで気持ち良く劇場を後に出来る良質なハート・ウォーミングな体験が出来ると思ってしまう。しかし、結果はただのフランス観光促進映画だった。とにかくジャックのウンチクがすごくて、それもエンドレス状態なので、初めは「ヘー」だけど、途中から「あ、そうなの、で」って感じになってしまう(同じ男として彼の完璧なエスコートにひがみの気持ちもあるかも?)。更に、料理がおいしく見えなかったのも残念だった。『アメリ』のクリーム・ブリュレみたいに、強く印象に残る料理もなく、物語も大きな盛り上がりもなくひたすら平板な印象。

反目していた2人がドライブを続けていくうちに、お互いの知らない面を発見して……と、まあ良くあるパターンかもしれないが、まだその方が見ていて楽しかったと思う。これぞ大人の恋かもしれないが、2人の距離感が最初から最後まであまり変わらないのが平板になっている原因かもしれない。ラストのダイアン・レインの含み笑いも、イヤーな感じだった。


監督は、昔ダイアン・レインを起用していたフランシス・フォード・コッポラの奥さん、エレノア・コッポラ。娘のソフィア・コッポラも監督として大活躍していて、ついに奥さんまで本格的に映画の世界に! しかも81歳! と話題満載だ。今までドキュメンタリーを撮ってきたエレノアの初の長編劇映画ということもあり、自身の体験を基に脚本も手掛けているが、やはり映画としてはまだまだというのが正直な感想。全く同じ素材で、娘のソフィアが監督をしたら、もっと面白い映画になっただろうなと感じてしまう。

主演のダイアン・レイン、確かにきれいだけど、薄い唇を見ているとやはり今の時代の顔からは外れてしまっている。でも、メグ・ライアンみたいに、流行りのプックリ唇にお直ししてオバQになって過去のファンをドン引きさせることもなく、ナチュラルに年齢を重ねているのは立派! 女性からも多くの共感を呼んでいるダイアン・レインなので、この映画も女性の視線から見たら、もっと変わってくるかもしれない。


ザ・ビッグ・シック
The Big Sick
コメディー、ロマンス/M 8月3日公開予定 期待度★★★★

アメリカで活躍する、コメディアンで俳優のクメイル・ナンジアニと、彼のパートナーで、ライター兼プロデューサーであるエミリー・V・ゴードンとの実話を、軽やかなタッチで映画化したラブ・コメディー。本人が演じるパキスタン系ムスリムのクメイルと、ゾーイ・カザンが演じるアメリカ人のエミリーは人種も宗教も違うカップル。エミリーが謎の病気を患ったことをきっかけに、お互いの家族との関係や、文化の違いが織り成す心の葛藤をブラック・ユーモアを交えながら描いている。監督は『ドリスの恋愛妄想適齢期』を手掛けたマイケル・ショウォルター、プロデュースを務めるのは『40歳の童貞男』や『ブライズメイズ史上最悪のウェディングプラン』のジャド・アパトー。


モーディー
Maudie
ドラマ、バイオグラフィー/PG 8月24日公開予定 期待度★★★★

編集部員がお薦め !

カナダの女流画家モード・ルイスの半生を描いた実話に基づいた作品。若年性関節リウマチのため、体が不自由だったモード(サリー・ホーキンス)は両親を亡くし、叔母に引き取られるが辛く当たられ、家出同然でエヴェレット(イーサン・ホーク)の所で住み込みの家政婦となる。堅物で頑固者のエヴェレットと、障害があるにもかかわらず、気丈で明るいモードはお互いを必要とし、愛し合うようになる。モードが家の壁などに、彩色豊かで温かみのある絵を描き始め、フォーク・アーティストとしての才能を開花させていくというサクセス・ストーリーと、彼女自身を取り巻く人間模様が見所だ。夫婦愛や、幸せとは何かを考えさせられる1本。監督はエイスリング・ウォルシュ。


ギフテッド
Gifted
ドラマ/M 8月10日公開予定 期待度★★★★

『(500日)のサマー』や『アメイジング・スパイダーマン・シリーズ』を手掛けたマーク・ウェブ監督の最新作であるヒューマン・ドラマ。母親を亡くし、叔父であるフランクに引き取られた7歳のメアリーは、学校で数学の天才的才能を発揮する。フランクは、メアリーがもっと高度な教育を受けられるよう、ギフテッドの子どもたちが通う私立の学校へ行くことを勧められるが、メアリーを「普通に育てる」という亡き姉との約束を果たすべく、この勧めを断る。しかし、そこへ縁を切っていたフランクの母親が現れ、メアリーの祖母に当たる彼女は、その天才的頭脳を開花させようとフランクから親権を奪おうとする。天才少女を育てるフランクを演じるのは『キャプテン・アメリカ』のクリス・エヴァンス。


ザ・ウォール
The Wall
ドラマ/MA15+ 8月3日公開予定 期待度★★★

新人脚本家のドウェイン・ウォーレルによる今作は、負傷した仲間を助けようとする米兵が、今にも崩れそうな隙間だらけの瓦礫の壁1つを挟み、敵のスナイパーとの心理的な駆け引きに挑む戦争スリラー。イラクで偵察任務中だった米軍狙撃兵ホッブズ中尉(ジョン・シナ)と観測手ロック軍曹(アーロン・テイラー=ジョンソン)は、銃で撃たれた建設作業員の死体を発見する。現場に先行したホッブズ中尉が、何者かによって狙撃される。負傷したホッブズ中尉を救助しようとするロック軍曹だが、敵の正確無比な狙撃に後退を強いられる。メイン・キャストが3人で状況設定がワン・シチュエーションというシンプルな構成ながら、緊迫した戦場がしっかりと描かれた作品だ。


★今月の気になるDVD★

エリザベスタウン
Elizabethtown
ドラマ 123分(2005年)

シューズ会社に勤める主人公のドリュー(オーランド・ブルーム)は、自らが関わった一大事業が大失敗に終わり、会社をクビにされてしまう。挙句、恋人にも見放されたドリューは、自宅で自殺を図ろうとするが、そこに家族から父の訃報が飛び込んでくる。葬儀のため、ドリューは父の故郷・ケンタッキー州エリザベスタウンへと飛行機で向かうが、機内で同地に住む客室乗務員のクレア(キルスティン・ダンスト)に出会う。世話好きで積極的な性格のクレアに引かれたドリューは、クレアとの恋、そしてエリザベスタウンに住む父の友人や親戚たちとの触れ合いの中で自らを再生させていく。

物語自体は、主人公の喪失から再生までの成長と、恋物語により織り成される青春ドラマだが、同作の構成上の面白さでもあり見所なのは、物語終盤がロード・ムービーとして展開されるところだ。エリザベスタウンでの葬儀を終えた後、ドリューはクレアから旅をするよう勧められ地図とCDを渡されると、父親の遺灰が入った壺と共に、アメリカの各地を車で周る旅に出る。その旅のシーン、BGMに導かれるようにこまめに場面展開がされるのだが、同作でのBGMの選択は『ローリング・ストーン』紙の記者としての経歴も持つキャメロン・クロウ監督自らによるもの。

物語の構成の妙だけでなく、エルトン・ジョンやU2など監督厳選の楽曲の数々もこの1本から楽しんでみてはどうだろうか。(編集=RY)

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