編集部イチ押し! 9月の新作映画をチェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじとともに注目の新作を紹介 ! レイティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

モーディー
Maudie
ドラマ、バイオグラフィー/PG 8月24日公開予定 満足度★★★★

隊長が観た!

カナダのフォーク・アート画家、モード・ルイスを描いたヒューマン・ドラマ、と言われても多くの人は「誰それ?」だろう。自分もそうだった。機会があれば、ググって、彼女の作品を見てみるといい。シンプルで、ちょっとキッチュで、明るい色合いの素朴な作品を目にするだろう。何とも言えない幸福感が絵からにじみ出てくるような作風で、女性らしい温かみを感じる。しかし、実際のモード・ルイスは、若年性関節リウマチを患っていて、かなり貧しい生活をしていた。その彼女の生涯が描かれているのが、今回紹介する『モーディー』。

若年性関節リウマチのため幼少のころから体が不自由だったモード。父母が亡くなり叔母と暮らし始めるが折り合いが悪く、家政婦を探していた漁師のエヴェレットの所で住み込みで働くようになる。エヴェレットは、気難しく頑固者で、時には暴力も!そんな中、モードは、家の壁などに絵を描き出し、エヴェレットの勧めもありポストカードを作るようになる。それをエヴェレットの魚と一緒に売っていくことになるが……。

いやー、久しぶりにハートウォーミングの傑作を見た感じ。音楽も良かったし、カナダの田舎の漁村の美しい景色や、四季折々の季節の移り変わり、特に雪のシーンは強く印象に残っている。彼らは、小さな家に住んでいるのだが、そのちょっと詰まった映像から、パン!と屋外の引きの広い場面に変わるタイミングなど、実にうまい。元々、純粋でそれ故に世間からちょっと外れてしまった不器用な人たちのストーリーは、心にグサグサくる方だったので、個人的にどストライク。リヤカーにモードを乗せて走るシーンなんて、目がウルウルしてしまった。

また、映画中盤で、叔母からモードへ「あなたが家族の中で一番幸せになった」と言われたように、リウマチを患っていても、貧困でも、決して卑屈にならないモード。ただのハートウォーミング映画ではなく、幸せとは? 人を愛するということは?など、考えさせれられる映画でもある。


主演は、あの『ブルージャスミン』でケイト・ブランシェット演じるジャスミンの異母姉妹ジンジャーを演じたサリー・ホーキンス。その相手役にイーサン・ホーク。初め、いくら何でもイーサン・ホークはイケメン過ぎて、ミスキャストじゃないの?と思って見ていた。しかし、あの気難しく性格が悪そうに見えるエヴェレットが、実はただ不器用なだけで、実際はモードのことを本当に愛しているのをチラ出しした時、これがブ男であれば「あ、そうなの」で終わるところが、イーサン・ホークだから「えっ、この人メッチャいい人じゃん」になってしまう。このギャップ効果がイケメンであればあるほど効いてくるので、どんなに悪く描いたキャラクターも、見た目で愛すべき人物としてしまうキャスティング・マジック!彼のファンが、また増えそうだ。

モードが、アーティストとして成功していく姿だけではなく、彼女を支えるエヴェレット、彼女の才能を見出す近所に住むサンドラ、かつて生んだ娘など、さまざまなエピソードが重ねられた感動作。まだまだ寒い日もある季節、この作品で心まで温かくなってください。


ロスト・シティーZ
The Lost City of Z
ドラマ、バイオグラフィー、アドベンチャー/M 8月24日公開予定 期待度★★★★

実在したイギリス人冒険家のパーシー・フォーセットの伝記アドベンチャーを描いた、デイビッド・グラン原作のベスト・セラー小説を映画化した作品。時代は20世紀前半、パーシー率いる探検隊は南米大陸ブラジルとボリビアの国境を測量するため、アマゾンに奥深く進入した。そこには、彼らの想像を超える出来事が待ち構えていた。そして彼らは、アマゾンに存在すると言われる伝説の都市Zを探し求め、更に秘境に足を踏み入れていく。パーシーがなぜそこまでアマゾンに魅了されていったのか、探検隊のメンバーや家族といった彼を取り巻く人間関係を描きながらシリアスな冒険ドラマに仕上がっている。出演はチャーリー・ハナム、ロバート・パディソン、シエナ・ミラー、トム・ホランド他。


ヒットマンズ・ボディガード
Hitman’s Bodyguard
アクション、コメディー/MA15+ 8月31日公開予定 期待度★★★★

世界最高峰のボディーガードが引き受けた仕事は、国際司法裁判所での証言台に立つことになった世界で最も有名な殺し屋の護衛。2人はかつて深い因縁で結ばれていた。24時間というタイム・リミットの中で、イギリスから国際司法裁判所の本部があるオランダ・ハーグまでの珍道中を描いたアクション・コメディー。ボディーガード役を『デッドプール』のライアン・レイノルズ、殺し屋役を名脇役のサミュエル・L・ジャクソンが演じる。1992年に公開された、ケビン・コスナーとホイットニー・ヒューストンが共演し大ヒットした名作『ボディーガード』を模したポスターでも注目されている作品。監督は『エクスペンダブルズ3-ワールドミッション』のオーストラリア出身のパトリック・ヒューズ。


トミーズ・オナー
Tommy’s Honour
ドラマ、バイオグラフィー、ヒストリー/M 9月7日公開予定 期待度★★★

伝説のゴルファー、トム・モリス親子の人生を描いた実話に基づいた作品。1860年から始まった世界最古のゴルフ選手権である全英オープンで、67年までに4回優勝し、「近代ゴルフの父」と称される父トム・モリス・シニア(ピーター・マラン)と17歳という若さで全英オープンを制し、18歳の時には77という前人未到の最小スコアを達成した伝説の天才ゴルファー、息子トム・モリス・ジュニア(ジャック・ロウデン)。固い絆で結ばれたモリス親子の関係と2人のゴルフに懸けた人生、そして当時のスコットランドのゴルフ業界が描かれているゴルフ好きにはたまらない1本。名優ショーン・コネリーの息子で、俳優でもあるジェイソン・コネリー監督がメガホンを取ったことも話題に。


IT/イット
IT
ドラマ、ホラー、スリラー/MA15+ 9月7日公開予定 期待度★★★

1986年に発表された、スティーブン・キング原作のホラー小説を映画化したリメイク版『IT/イット』がついに公開。あの恐ろしい殺人ピエロ「ペニーワイズ」が帰ってくる。舞台は89年夏、アメリカのメイン州デリーの町で不可解な連続子供失踪事件が発生する。邪悪なピエロが事件に関係していることが分かり、その謎を解決すべく立ち上がったのは7人の少年たち。実の弟ジョージが事件に巻き込またことで、ピエロにリベンジを誓う少年グループのリーダー、ビル役は『ヴィンセントが教えてくれたこと』で高い評価を受けたジェイデン・リーベラーが務める。そして本作で恐ろしいペニーワイズを演じるのは『シンプル・シナモン』のスウェーデン人俳優ビル・スカルスガルド。


★今月の気になるDVD★

マイ・ブルーベリー・ナイツ
My Blueberry Nights
ドラマ、ロマンス 95分(2007年)

失恋したばかりのエリザベス(ノラ・ジョーンズ)は、ふと立ち寄ったカフェの店主ジェレミー(ジュード・ロウ)と、彼が焼くブルーベリー・パイによって少しずつ癒されていく。そんな中、ジェレミーはいつも売れ残ってしまうブルーベリー・パイをエリザベスに薦める際に「パイのせいじゃない、選ばれないだけだ」と印象的な言葉を口にする。それから度々、カフェを訪れるようになったエリザベス。ブルーベリー・パイを愛しげに食べる彼女に好意を抱くジェレミーだったが、元恋人への想いを捨てきれないエリザベスは一人旅に出ることを決意し、ニューヨークを後にする。

アメリカを縦断するエリザベスと、ニューヨークに居るジェレミーの物理的距離は離れる一方。しかしそのまま疎遠になるわけではなく、エリザベスは彼に手紙で近況や心情報告をする。アルコール中毒症の警察官アニー(デビット・ストラザーン)と彼の別れた妻、スー・リン(レーチェル・ワイズ)との出会いや、ロード・トリップを共にすることになった女性レスリー(ナタリー・ポートマン)などから、多くのことを学び、成長していくことで、物理的距離は離れながらもエリザベスとジェレミーの心理的距離は逆に縮まっていく。

通常男女は互いの距離を頻繁なコミュニケーションによって埋めるのに、この物語の2人は全く逆の方法で成し遂げる。恋のせつなさを描く名手『恋する惑星』、『花様年華』のウォン・カーウァイ監督初の英語作品。画期的な恋愛ドラマだ。(編集=YI)

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