編集部イチ押し! 4月の新作映画をチェック

cinema check シネマ・チェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじと共に注目の新作を紹介!レーティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

希望のかなた
The Other Side of Hope隊長が観た!

ドラマ、コメディー/TBC 3月29日公開予定 満足度★★★★

今年のアカデミー賞授賞式が先日行われたが、昨年のような授賞作品の発表間違いなど大きなアクシデントもなく無事終了。主演女優賞のフランシス・マクドーマンドは、やっぱり変なオバちゃんだな(授賞式後のパーティーでオスカー像が盗まれるというパプニングもあったらしい)とか、『シェイプ・オブ・ウォーター』で作品賞を受賞したギレルモ・デル・トロ監督が、間違いがないか封筒の中を確認したりなど、それなりには楽しんだが、授賞作品や受賞者も前評判通りで、意外性が少なく少々退屈な授賞式だった。個人的には、先月紹介した『ナチュラル・ウーマン』が外国語映画賞を受賞したのがうれしかったし、主演のダニエラ・ヴェガがプレゼンテーターとして登場したのも見どころの1つだった。

そして今月紹介するのは、昨年のベルリン国際映画祭で批評家だけでなく観客からも大きな支持を受けて、監督賞を受賞した『希望のかなた』。名匠と呼ばれているフィンランドのアキ・カウリスマキ監督によるヒューマン・ドラマだ。

シリア人の青年カリード(山田孝之似)は、内戦が激化するシリアから妹と一緒に脱出するが、途中で妹と離ればなれになってしまう。そんな中、ヨーロッパに入り各地を転々とした後、なんとかフィンランドにたどり着く。そこで彼は、フィンランド政府に難民の申請をし、はぐれてしまった妹を探し呼び寄せようとしていた。しかし政府からは難民申請を却下され、強制送還されることになってしまう……。

今、ヨーロッパで問題となっている難民というシビアなテーマ。しかし、そういった硬いイメージは全くなく、そこはかとなくユーモアに溢れる作品だ。ほぼ会話のない冒頭のシーンに、人形劇のような表情も抑揚もない登場人物たちと、最初は戸惑うかもしれないが、これがアキ・カウリスマキ監督の持ち味。セリフでの過剰な説明もなく、どんよりした空気感が漂っているのだが、なんとも言えない温かな気持ちになるのは、デジタルを一切使わず、フィルムにこだわって撮影したためか。

特に興味深かったのは、ストーリー上は、内戦や難民申請を却下されたり、政府規模の大きな〝負〟の要素が続くのだが、その下では、一般の人びとの〝善意〟が次から次へと発生すること。無表情のまま、おかわりのスープを何事もないように注ぎ入れたり、殴り合った後、いきなり仕事をオファーしたり、〝善意〟というものは当然行われるべきという監督の考え方なのか、通常はそういった行為を行うに当たり何かしらの説明があるべきだが、それを一切排してる点だ。しかし、それが胸にグサグサきてしまった。移民であるカリードもまた、路上のミュージシャンや物乞いに小銭を恵んだりするのも良かった。


主人公のカリードとは別にレストランのオーナーになる男性がいるのだが、彼も初めから最後まで無表情だが、映画が進むにつれ人間味溢れたキャラクターに見えてきてしまうのは、まさしくアキ・カウリスマキ・マジック! また、音楽の使い方も効果的で、フィルムで撮影した温かみのある映像ににうまくハマっていた。

しかし、何より日本人にとって衝撃的なのは、すしが出てくるシーン。オーストラリアの日本食レストランでも「はぁ?」っと思わず隣の席なのに声が出てしまう、そう、すしにこれでもかという程ワサビを山盛りにするオージーたち。そういった光景を見慣れているから、ある意味「あるある」で大爆笑だったけれど、これを見て自分たちの食べ方は間違っていなかったと思うオージーが続出しないことを切に祈る。

最後に、英語タイトルである『The Other Side of Hope』、「希望の別のサイド=絶望」ということで、温かな映画ではあるけれど、ラストは、一般市民の〝善意〟だけではどうにもならない難民の非情な現実を示していると受け取った。

エブリ・デイ
Every Day

ドラマ、ファンタジー、ロマンス/PG 4月5日公開予定 期待度★★★★

ニューヨーク・タイムズでも高い評価を得たデイビッド・レヴィサンのベストセラー小説『エブリ・デイ』を映画化した作品。16歳の少女・リアノンは、毎日異なるティーン・エイジャーの体に宿る「A」という霊体と恋に落ちる。24時間後にはどこの誰になるのか全く分からないAとリアノンは、お互いを見つけようと毎日必死で探し合う。2人が惹かれ合うほど、彼らを苦しめるのはAが翌日には違う人物に姿を変えてしまうという現実。そして、彼らはそれまでに経験したことがない重大な決断を下すことになる。『君への誓い』のマイケル・スーシー監督がメガホンを取り、ヒロインのリアノンを『スパイダーマン:ホームカミング』、『ビガイルド 欲望のめざめ』の若手女優・アンガリー・ライスが演じる。

ポップ・アイ
Pop Aye

ロード・ムービー/M 4月5日公開予定 期待度★★★

シンガポールの若手女流監督カーステン・タンの長編デビュー作。舞台はタイ・バンコク。建築家としてかつて成功を収めたポーンは、中年を迎えすっかり自分に自信を失っていた。ある日、彼は幼いころに飼っていた象・ポパイとバンコク市内で偶然再会する。そこから、ポパイを彼の故郷へ連れて帰るため、2人が一緒に育った農場を目指す旅に出ることを決める。旅の道中で起きるさまざまな出来事や多種多様な人びととの出会いと交流を描く心温まるロード・ムービー。2017年第30回東京国際映画祭、サンダンス映画祭やチューリヒ映画祭などでも上映され、話題となった注目の同作。主演は、近年歌手活動を再開したタイ人俳優のタネート・ワラークンヌクロ。

犬ヶ島
Isel of Dogs

アニメーション/TBC 4月12日公開予定 期待度★★★

『グランド・ブダペスト・ホテル』で監督を務めたウェス・アンダーソンが、近未来の日本を舞台に、離島に追放された愛犬を探す少年の冒険を描いた長編アニメーション。犬インフルエンザが蔓延した20年後の日本・メガ崎市。この病気の流行を食い止めるため、全ての犬は「犬ヶ島」と呼ばれる巨大なごみ置き場に強制隔離されることに。12歳の少年・小林アタリは、彼のボディーガードであった愛犬・スピッツを見つけるため、たった1人で犬ヶ島へ行くことを決断。それは、メガ崎市の運命と未来を変える壮大な旅の始まりだった……。声優陣にはビル・マーレイ、エドワード・ノートン、オノ・ヨーコらの他、日本からロック・バンド・RADWIMPSの野田洋次郎や夏木マリら豪華メンバーも出演している。

ザ・パーティー
The Party

ドラマ、コメディー/MA15+ 4月12日公開予定 期待度★★★

『耳に残るは君の歌声』などで知られるサリー・ポッター監督によるブラック・コメディー。ジャネットは自身の昇進を祝うため、ロンドンの自宅でパーティーを開催する。招待したのは、親しい友人とそのパートナーたち7人。出席者たちがいろいろな話を共有していく中で、パーティーは徐々に盛り上がりをみせるが、ジャネットの夫・ビルからのある「お知らせ」を皮切りに、全員からさまざまな暴露話が次々と披露されることに……。そして、シャンパンでの乾杯と共に華やかに始まったパーティーは、大きな人間関係のトラブルへと発展してしまう。主人公のジャネットを演じるのは、『それでも恋するバルセロナ』『ステイ・フレンズ』のパトリシア・クラークソン。

★今月の気になるDVD★

「母たちの村」Moolaade
ドラマ 124分(2004年)

アフリカ諸国の一部地域では、現在でも割礼(女性器切除)が伝統的慣習として行われている。不衛生な環境で手術が行われ、これが原因で亡くなるケースも少なくない。

この問題を取り上げ、第57回カンヌ映画祭「ある視点」部門でグランプリを受賞したのが、アフリカ映画『母たちの村』だ。舞台は、いまだに割礼の慣習が根付く西アフリカの小さな村。ある日、主人公・コラおばさんの元に、手術を拒んだ4人の少女が保護(モーラーデ)を求めて逃げてくる。この出来事をきっかけに、少女たちを救うため、そして女性の地位確立を目指して、村の母親たちが立ち上がる。

同作の見どころは、あらゆる場面で描かれている勇敢な女性たちの姿だ。各所で女性の強さと、母親が娘を大切に思う気持ちが真っすぐに表現されていて、その強いメッセージ性に胸を打たれる。

また、村の暮らしに加えて、男尊女卑の社会や一夫多妻制といったアフリカ文化が如実に描写されている点もこの映画の特徴の1つ。昨年末には同性婚が正式に認められ、女性だけでなく性的少数者の権利も広く保護されているオーストラリアとは対照的とも言えるだろう。同作を観て、男女格差などの国際的課題や多様性について考えてみるのも良いかもしれない。(編集=MU)

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