編集部イチ押し! 9月の新作映画をチェック

cinema check シネマ・チェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじと共に注目の新作を紹介!レーティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

判決、ふたつの希望
The Insult隊長が観た!

ドラマ/TBC 8月30日公開予定 満足度★★★★

アカデミー賞などの受賞シーズンが終わって、中でも外国語映画賞のノミネート作品を観るのが楽しみで、今まで『ナチュラルウーマン』『ラブレス』を紹介してきたが、今回紹介するのもそのノミネート作品の1つ、レバノン映画『判決、ふたつの希望』。オーストラリアでは、6月に行われたシドニー映画祭で上映され、観客賞を受賞している。他でも、ベネチア国際映画祭で男優賞を受賞と、世界中で話題となっている1本だ。

レバノンに住むキリスト教徒のレバノン人であるトニーと、パレスチナ難民のヤセルとの些細な口喧嘩がとんでもない展開になるというストーリー。事の起こりは、トニーの住むマンションのベランダからの水漏れで、その水が通りにいたヤセルに掛かったことから口論となる。一度はヤセルから謝罪に向かったが、そこでトニーからの屈辱的な言葉でヤセルがトニーを殴ってしまったことから裁判沙汰になってしまう。この坂を転がるように、事態がどんどんと大きくなっていく展開は見もの。しかもテンポが早い! 個人的には、このような悲劇は2003年のジェニファー・コネリー出演の『砂と霧の家』みたいに、じっくりと描いて欲しいと思うのだが、今の時代はこのぐらいの方が良いのだろう。

トニーとヤセル、最初に会った時は名前も知らぬ2人。ただのレバノン人であり、パレスチナ人である。彼らの中ではそれぞれの人種というイメージでしかない。もちろん良いイメージを持っているわけではないため、それぞれ相手を屈辱する言葉が出てしまう。しかし、裁判が始まり、相手の名前が明かされ、生年月日が分かり、どういった生活をしているのかが分かる。そうなってしまうと、もうレバノン人ではなく、個人としてのトニーとなり、ヤセルとなる。周りがヒート・アップしていく中、2人はそれぞれ1人の人間として理解していく。「中国の部品なんか使うな!」とか、意外と共通点があることを知り始める。

このところよく見るネットのコメント欄などで「炎上」と言われる、言葉の暴力。まさしく同じことだと思う。相手のことが全く見えておらず、前後関係を見ず過剰な言葉のみを捉え、それに対して平気で相手を屈辱することを書ける。しかし、これが知り合いだったらどうか?

相手が見えない人だからこそできるのではないか? レバノンが舞台で、そこでの人種的な問題、更に法廷劇と聞くと身構えてしまうが、ある意味どこの国でも理解できる普遍的な内容だと思う。自分自身、レバノンが置かれている状況などは詳しくは知らないが、それでも十分に楽しめた。逆に、レバノンなんて興味ないと思って同作をスルーしてしまうことの方がもったいないと思えるぐらいだ。

最初、ちょっと過剰なほどの対応をするトニーに全く共感ができなかったが、これも既に計算されていて、後半の裁判で浮かび上がる事実によって見方が変わってくる。まさに法廷劇の醍醐味だ。それにこのトニー、自動車の修理工だが、やはり困っている人を助けたい気持ちがあるのだろう。もちろん商売だからお金は必要だが、問題のある部分を修理して感謝されることに喜びを見つけているのだと思う。彼は娘を授かるのだが、裁判のそれぞれの弁護士が父と娘の関係で、この辺りも何か意味があったりと思ったり……。

監督と脚本は、ジアド・ドゥエイリ。レバノン内戦状況下で少年期を過ごし、20歳の時にレバノンを離れアメリカへ渡る。その後、クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』や『パルプ・フィクション』などのアシスタント・カメラマンを経て、1998年に『西ベイルート』で監督デビュー。同作では、レバノン史上初のアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた。ラスト・シーンでの2人の顔のアップはジーンときた。今月、オススメの1本だ!

マイル22
Mile 22

アクション/MA15+ 8月30日公開予定 満足度★★★★

優秀なアメリカのCIA捜査官ジェイムス(マーク・ウォールバーグ)は政府によってその存在を公に明かされていない極秘ユニット、オーバー・ウォッチに所属していた。ある日9ポンドの強力な放射性物質が盗まれ、米政府はその行方を追っていた。そして放射性物質の所在を知るという男が、突然在米東南アジア大使館に現れる。ジェイムスはその物質の鍵を握る男リー(イコ・ウワイス)を、22マイルの間命を懸け警護し、物質回収を目指す。監督を務めたのは『ローン・サバイバー』のピーター・バーグ監督。主演、マーク・ウォールバーグとは『バーニング・オーシャン』『パトリオット・デイ』に続いて4度目のタッグを組むこととなり、同作は両者共にプロデューサーを兼ねている。

クレイジー・リッチ!
Crazy Rich Asians

コメディー/PG 8月30日公開予定 満足度★★★★

©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND KIMMEL DISTRIBUTION, LLC
©2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND KIMMEL DISTRIBUTION, LLC

ニューヨーカーであるレイチェル(コンスタンス・ウー)は長年付き合っているボーイフレンド、ニック(ヘンリー・ゴールディング)と共に彼の親友の結婚式に参加するため彼の故郷、シンガポールへ同行する。初めてのアジア訪問に期待を膨らませる一方、ニックの親族と対面する不安も胸に抱いていたレイチェルは、彼の知られざる一面を知ることになる。空港でのファースト・クラス対応や彼を知る人たちの反応、彼はシンガポールでは誰もが知る裕福な一家の御曹司であることが判明する。レイチェルは上流社会と厳しい対面をする。愛はお金で買えないと言われるが、お金は2人の関係を複雑にする。同作は著者、ケビン・クワン氏の同名の小説が原作、ジョン・エム・チュ監督によって映画化されたコメディー作品。

マックイーン
Mcqueen

ドキュメンタリー/TBC 9月6日公開予定 満足度★★★★

©Salon Galahad Ltd 2018
©Salon Galahad Ltd 2018

同作は鬼才で知られる世界的ファッション・デザイナー、アレキサンダー・マックイーンのキャリアと芸術性を追ったドキュメンタリー。彼と親しかった友人や家族のインタビューと復元された貴重な情報からその謎めいた人物像を明らかにしていく。アーティストのレディー・ガガやリアーナなどを顧客に抱えていたことや、英国王室のキャサリン妃のウエディング・ドレスに彼のデザインした物が使用されるなど、世界中から注目を集め、ファッション業界を圧倒させた彼の人生をその世界観を表すビジュアルや音楽を通して描く。その才能溢れる華やかさとダークさが融合する奇抜なファッションはどのように生まれたのか。イアン・ボンホート監督とピーター・エッテッジュイ監督が共同でメガホンを取り、注目が集まっている。

search/サーチ
Searching

スリラー/M 9月13日公開予定 満足度★★★★

©2018 CTMG, Inc. All Rights Reserved.
©2018 CTMG, Inc. All Rights Reserved.

デイビッド(ジョン・チョ)の16歳の娘マーゴ(ミシェル・ラ)が突然行方不明になる。地元では捜査が始まり、事件発生から37時間後、誰にも指示されることなく父親はいまだ手付かずの場所を探ることに……。たくさんの知られざる情報が娘のパソコンに眠っており、彼が知る娘とは全く違う人物像が浮かび上がってくる。物語の大半がパソコンのスクリーン上で動く同作を奇妙に思う人もいるかもしれないが、Eメール・メッセンジャー・フェイスブック・インスタグラムなど、毎日のように利用するソーシャル・メディアを題材にした、現実的な描写からスリルを感じるのではないだろうか。デイビッドは娘と二度と会えなくなってしまう前に彼女のデジタル上の痕跡を基に彼女を救い出すことができるのか。

★今月の気になるDVD★

最高の花婿
Serial (Bad) Weddings / Qu’est-ce qu’on a fait au Bon Dieu ?
コメディー 97分(2014年)

フランス・ロワール地方で裕福に暮らすベヌイユ夫婦は敬虔なカトリック信者で、夫のクロードは外国からの影響を不快に思う、少し閉鎖的な考えのド・ゴール主義者である。4人姉妹のうち3人の娘たちがアラブ人、ユダヤ人、中国人と結婚したため、末娘だけはフランス人と結婚して欲しいと願っていた。その彼女がカトリック教徒と婚約したと聞いて喜ぶが、夫婦の前には黒人青年が現れた――。

同作は偏見という一見重みのあるテーマを逆手に取り、笑いが止まらないコメディー作品になっている。やりすぎではないかと思うほどのステレオ・タイプな偏見がテンポ良くコミカルに描かれており、呆れてしまう人もいるかもしれない。しかし、その偏見が理解できるということは、ある意味誰しもが心のどこかにレイシストな部分を持っているのではないかとふと気付かされる。同作を絶賛する映画評論家もいれば、時代遅れなユーモアはひどいと批判する意見もあり、受け手の考えによって意見が大きく分かれる点も面白い。

オーストラリアの多文化な社会で違う考えを持つ人とどう共存していくべきか、日本社会で育った人は戸惑いを感じることがあるかもしれない。日頃のストレス発散に一笑いしてみてはいかがだろうか。(編集=NT)

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