編集部イチ押し! 11月の新作映画をチェック

cinema check シネマ・チェック

辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじと共に注目の新作を紹介!レーティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。

ビューティフル・ボーイ
Beautiful Boy隊長が観た!

ドラマ/TBC 10月25日公開予定 満足度★★★

昨年の映画で印象に残っている1本が『君の名前で僕を呼んで』。ぶっちゃけゲイ映画なんだけど、イタリアの眩しい夏の日差しや空気感が何とも言えず心地良かった。80年代が舞台背景になっていて、アーミー・ハマーなんか、超短い短パンなんか履いて、雑誌『POPEYE』のLA特集から抜け出してきたみたいだったし、話題になっていたあのディスコ・シーンとか、ノスタルジックな雰囲気も満載で、また夏が来たら再鑑賞するつもりでいる。そして、主人公を演じたのがティモシー・シャラメ。同作品をまさに瑞瑞しくしているのが彼だろう。特にラストの電話のシーンでは彼の演技力が感じられ、アカデミー賞の主演男優賞ノミネートも納得。ここ最近の若い人気俳優は、成長するにつれ、ことごとくマッチョなイメージに向かっていくことが多いが、ティモシーの場合は細い線をキープして、少女漫画に出てくるような美少年だ。とは言っても、最近の少女漫画なんて見てもいないから(アンソニー、アンドレの時代)、この言葉が当てはまるかは不明だが……。

その彼の最新作が今回紹介する『ビューティフル・ボーイ』。薬物依存症になった息子とその父親の物語で、ベストセラーとなったデビッド・シェフの自伝を映画化したもの。薬物依存症と聞いたから、どんな壮絶な話か、ティモシーがどんなボロボロの姿を見せてくれるか、なんて思いながらの鑑賞となったが、良い意味で裏切られてしまった。同作は、父親からの視線で描かれているため、彼が具体的にどこまでの薬物依存症かがはっきりしない。かなり重度だとは思うが、彼の生活を細かく追っているわけではなく、父親から見たところを中心に描かれているから、薬物に溺れてズタズタのシーンは少ない。薬物に陥っていく過程や、そこから禁断症状に苛まれながらの復帰などもなく、親と子の関係をスケッチ的に何層も重ねながら丁寧に描かれている。それはそれで十分楽しめたが、映画としての盛り上がりは少ないように感じた。

ただ、彼が出ているせいか、全体に漂うフィレッシュ感は、ハンパなかった。タイトルの「ビューティフル・ボーイ」は、あのジョン・レノンが息子のショーン・レノンに捧げた曲で、劇中も父親役のスティーブ・カレルが息子を見つめながら歌っている。息子役は年代に合わせて幼年期を2人の子役が演じているが、まあ、いずれにせよ息子がティモシー・シャラメだったら、どの父親でも「ビューティフル・ボーイ」って歌いたくなるよなという感じ。この曲だけではなく、他にもさまざまなジャンルの音楽が使われており、その選曲センスはピカイチ。このシーンにこの音楽? ってこともあったけど、音楽とシーンの合わせ方はワクワクするほど楽しめた。

父親役のスティーブ・カレルだが、どうしてもコメディーのイメージが付いてしまっていて、ひげをたくわえたジブいオヤジで、ずっとシリアスな演技を見せてくれるけど、『40歳の童貞男』の脱毛シーンがチラチラしてなかなか共感するのが難しかった。

最後に映画のテーマからは外れるけれど、スティーブ・カレルが演じる父親は離婚していて、新しい奥さんと生活している。それが、元奥さんがビジネス・ウーマン系で、新しい奥さんがアーティスト系という、全く違ったタイプの人と再婚しており、実際は人って、再婚するとしたら違ったタイプの人に惹かれるのか? と思って興味深かった。

ワイルドライフ
Wildlife

ドラマ/M 11月1日公開予定 満足度★★★★

Ⓒ2018
Ⓒ2018

舞台は1960年代のアメリカ、モンタナ州。プロ・ゴルファーのジェリー(ジェイク・ギレンホール)と専業主婦のジャネッタ(キャリー・マリガン)の間には14歳の1人息子ジョー(エド・オクセンボールド)がいた。自宅周辺で山火事が発生し、カナダとの国境にまで火が回り、ジェリーは失業したことなどをきっかけに山火事の消火活動を行う団体に加わる決意をする。妻と息子から離れて暮らすことになるが、家族を養うためにジェリーは家を出た。ジョーは、母が浮気などのトラブルに直面していることに気付いてしまうなど、父親がそばにいなくなったことで少しずつ大人としての視点を持つことになる。同作は両親の夫婦関係が少しずつ崩れていく中で、10代の若者が何を感じているのかを描いている。

ボヘミアン・ラプソディ
Bohemian Rhapsody

バイオグラフィー、ドラマ、ミュージック/TBC 11月1日公開予定 満足度★★★★

同作は『ウィ・ウィル・ロック・ユー』など、誰もが知っている楽曲を作り出した伝説のロック・バンド、クイーンとリード・ボーカル、フレディ・マーキュリーの活躍を記念して作られた作品。当時の常識や既成概念を次々と破り、どのように地球上で最も愛されるエンターテイナーにまで上り詰めたのかを彼らのアイコニックな楽曲の数々と共に描く。バンドは解散の危機に追いやられるが、1985年に行われた20世紀最大のチャリティー・コンサート「ライブ・エイド」の前日にメンバーは感動の再会を果たし、フレディは生命を脅かす病と向き合いながら、クイーンをロックの歴史に残る史上最高のパフォーマンスを披露した。フレディを演じたのは『ミスター・ロボット』でエミー賞を受賞したラミ・マレック。

蜘蛛の巣を払う女
The Girl in The Spider’s Web

スリラー/TBC 11月8日公開予定 満足度★★★

©2018 CTMG, Inc.
©2018 CTMG, Inc.

ドラゴンのタトゥーが入った孤独な天才若手ハッカー、リスベットとジャーナリストのミカエルがスパイやサイバー犯罪など、政府の悪事や犯罪組織の陰謀を暴くために奮闘する。原作は、世界的ベストセラー推理小説『ミレニアム』シリーズで、2011年に公開されたデビッド・フィンチャー監督による『ドラゴン・タトゥーの女』の続編となっている。同作でタッグを組んだのは『ドント・ブリーズ』のフェデ・アルバレス監督と『クラウン』でゴールデン・グローブ賞受賞経験のあるクレア・フォイ。映画関係者らからも高評価を得るなど大ヒットした前作の『ドラゴン・タトゥーの女』より、監督や主演女優が変わったことに対し、ミレニアム・ファンの間で論争が繰り広げられていることでも注目が集まっている。

サスぺリア
Suspiria

ドラマ、ファンタジーホラー、スリラー/TBC 11月8日公開予定 満足度★★★

アメリカ人バレリーナのスージーは、世界的に名高いドイツのダンス・アカデミーに通うことになるが、そこで不吉めいた超常現象や、血の気が引くような殺人が相次ぎ、邪悪な陰がバレリーナを巻き込んでいく。1977年に公開された、ホラー映画の巨匠ダリオ・アルジェントの傑作『サスぺリア』がリメイクされた作品で、オリジナル版で主演を演じ、同作にも出演しているジェシカ・ハーパーは「今まで観た映画の中で、最も鮮やかに恐ろしい映画」とコメントしている。監督を務めたのは『コール・ミー・バイ・ヨア・ネーム』のルカ・グァダニーノ監督。『フィフティ・シェイズ』シリーズのダコタ・ジョンソンや『キック・アス』のクロエ・モレッツが出演しており、豪華なキャスティングとなっている。

★今月の気になるDVD★

ハロルドとモード 少年は虹を渡る Harold and Maude
ドラマ 91分(1971年)

青年ハロルド・チェイソンは少し変わり者。何も生活に困らない裕福な環境にいたが、自ら孤独を選び、死に並々ならぬ興味を持っていた。その死への好奇心や気の合わない母親への反抗心から、彼は繰り返し自殺を装ったり、母親からプレゼントされたジャガーを霊柩車に改造し、赤の他人の葬儀へ参列したりしていた。母親は、ハロルドに「普通」になって欲しいと、セラピーや恋人候補を押し付けるが、ハロルドの悪戯(いたずら)には拍車が掛かる。

彼はそのうち、何度かの葬儀でモードという女性を見掛ける。モードも同じく他人の葬儀に参列する変わり者だが、理由は彼と反対に、彼女は生きることに執着を持ち、自分が生きていることをより実感するため、他人にどう思われようと自分のしたいことを貫く79歳の老婦人であった。そんな対極的な考えの2人が出会い、年の差を越えて恋愛へと発展する奇妙な物語。

同作は生きるということを考えさせられながら、笑いが止まらない、不思議な作品。モードの天衣無縫でお茶目な言動に気持ちが和むと共に、きっと彼女の人生観に心を動かされることだろう。2人の思いがけない行動が繰り広げるドラマは最後まで先が読めず、目が離せない。(編集=NT)

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