編集部イチ押し! 5月の新作映画をチェック

 辛口コメントで映画を斬る、映画通の日豪プレス・シネマ隊長と編集部員たちが、レビューやあらすじとともに注目の新作を紹介 ! レイティング=オーストラリア政府が定めた年齢制限。G、PG、M、MA15+、R18+、X18+があり、「X18+」に向かうほど過激な内容となる。作品の評価は5つ星で採点結果を紹介。
 

トレジャーハンター・クミコ
Kumiko, the Treasure Hunter
    ドラマ/PG

今月のムービー・レビュー

4月23日公開 満足度★★★
隊長が観た!

2001年に、米国ノース・ダコタ州のファーゴから60キロ東に位置する雪深い森の中で、東京在住の女性が凍死しているのが発見された。

この事件から、英語圏ではとある都市伝説が生まれることとなる。彼女がファーゴを目指していたのは、1996年の映画『ファーゴ』を見て、映画の中で雪の中に埋められた大金が入っているブリーフケースを探すためで、その途中で森の中でさまよって凍死してしまったという話だ。なぜ彼女が映画を本当のことだと思ったのかは、『ファーゴ』の冒頭に「これは実話である」というテロップが入っていたため。実はこのテロップ、監督のコーエン兄弟の演出の1つで、実際はまったくのフィクション! まあ、このあたりのおトボケ振りがまさにコーエン兄弟の持つブラック・ジョーク的なセンスだが、当時はこのテロップにだまされた人も多かった。

実際のところは、アメリカ人男性との不倫関係が破局し、そのための自殺だったと判明。それは『ファーゴ』のテロップと同じ『ディス・イズ・ア・トゥルー・ストーリー』というタイトルでドキュメンタリーにまとめられ、2003年にイギリスでテレビ公開された。

今回紹介するのは、そのドキュメンタリーの方ではなく、都市伝説の方を元に制作されたもう1つの作品だ。


地方から上京して1人暮らしのクミコ。もうすぐ30歳で、友達も彼氏もいなく、職場でも浮いた存在の彼女の唯一の趣味は、「宝探し」。映画『ファーゴ』のビデオを見て、これを実話と思い込んだクミコは、映画の中で埋められた大金が入ったブリーフケースを探すためダコタへと向かうが…。

この映画、ストーリーだけを追っていくと、コミュニケーション能力に著しく欠けたOLが、口うるさい母親やお茶くみのつまらない仕事から逃避するためアメリカに渡り、そこで人々に親切にされるもそれをことごとく振り払って、勝手に妄想する「宝」をひたすら探すわがままな女の話となってしまう。しかし、劇中でも挿入される『ファーゴ』のように、ブラック・コメディーとしてみると、かなりおもしろい! 会社の上司のほとんどセクハラのような台詞や、母親との電話での会話のトーン、さらに後半のダコタに渡ってからは、アメリカの片田舎のおせっかいなオバちゃんが、日本人と聞いて「将軍」の小説を手渡したり、英語が上手くないクミコを保安官(実はこの人、この映画の監督さん)が中華レストランに連れていって通訳をお願いしたりと、クスクスと笑えるエピソードがずらり。そのあたりの、笑いとシリアスなクミコの心象風景とのバランスは見事だ。

また、前半は日本国内にて日本語で撮影されており、「これは日本映画?」と惑わされる自然なシーンに仕上がっている。主演の菊地凛子がプロデューサーとしても参加しているので、彼女がかなり指示を出していたのではと思われる。ただその菊地凛子、今作での演技も評判だが、日本人から見るとキャラ的に共感するにはちょっと難しく、なぜ彼女がそこまで孤独になってしまったのか、そのような性格になってしまったのか、もっと背景を描いても良かったと思う。

もともとは、バカな日本の女の子が映画を信じてファーゴに向かうという笑い話的な都市伝説だが、実際は悲しい話で、そのあたりを知って見ると、ラストの頬に赤みがさし、幸せそうなクミコの表情を見て、一層切なくなってしまった。


QL1505_CINE_L2
X + Y
     ドラマ/M

今月のムービー・レビュー

公開中 期待度★★★★★

編集部員が観た!

類まれな数学の才能を持つ一方、人とコミュニケーションを取ることが極端に苦手な主人公・ネーサン。自分の母親とさえも上手く関係を築こうとしない困った彼が、数学界のオリンピックとも言われる国際大会「国際数学オリンピック」への出場を志したところから、めくるめく大冒険が始まる…。知られざる禁断のオタクくんたちの世界だが、とてつもなく不器用に、しかし純真に走りぬく少年の姿にグッと親近感。思いがけない展開に最後は号泣!


ラブ・アンド・マーシー
Love & Mercy
     バイオグラフィー/PG

今月のムービー・レビュー

6月25日公開予定 期待度★★★★

編集部員が観た!

米国西海岸から奇抜でブリ—ジーなサウンドを送り出し、一世を風靡した人気バンド、ビーチ・ボーイズ。そのメンバーで作曲を担当したブライアン・ウィルソンの半生を描いた作品。極限まで自分を追い込んだ孤高の天才の知られざる苦悩のストーリーとともに、当時の名曲がこれでもかというほど贅沢に使われ、その誕生秘話なども盛り込まれた制作風景は見応えたっぷり。改めて彼らのアルバムを手に、その1音1音まで味わい尽くしたくなってしまうほど、心つかまれた作品。


ホワイル・ウィー・アー・ヤング
WHILE WE’RE YOUNG
     ドラマ/M

今月のムービー・レビュー

公開中 期待度★★★

「子どもは持たない」と決めた40代半ばのジョシュとコーネリア。子育てに追われる同世代グループの中では次第に浮いた存在となっていく中、若くクレージーなジェイミーとダービーに出会い、急激に親交を深めていく。しかしそこでも問題が浮上してしまい…。価値観とライフスタイルの多様化がもたらす選択の自由。しかし、自分たちは本当にこれで良いのか——その答えは簡単には見つからない。ニューヨークを舞台に、誰もが抱える現代社会の本音をあぶり出す。


ジ・エイジ・オブ・アダライン
The Age of Adaline
     ドラマ/M

今月のムービー・レビュー

公開中 期待度★★

出産を終え銀幕復帰したブレイク・ライブリー演じるアダラインは、不慮の事故に遭ったその日から一切歳をとらない奇妙な体になってしまう。1世紀にわたって世界中を旅した末、とある男性と出会うが…。必要以上に終始大げさでメロドラマ感満載の予告編には、どこまでこちらの気持ちがついていけるかやや不安に。しかし、プリントのドレスや細見シルエットといった1930年代の妖艶なレトロ・ファッションを愛でるだけでも、女子には十分楽しめてしまいそう。

 

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