森、トースト、そしてワイン

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

ベン・ホルトの豪州ワイン物語

森、トースト、そしてワイン

朝食を準備していると、不意に携帯メールが入り、焼いていたトーストを焦がしてしまう。でもそれが最後のひと切れなので、仕方なくその焦げたパンにマーマレードを塗る。すると何とも不思議なことに、いつもより味がふくよかだ。悪くない、と思う。

ワインの味を左右する要素として、皆さんが思いつくのは何だろう。ブドウの種類? ボトルの年数? 焦げたトーストではないことは確かだろう。しかしワインと「トースト」の間には、実はとてもユニークな関係がある。説明しよう。

大多数の赤ワインと、白ワインの多くはナラ(オーク)の木でできた樽で造り上げられる。しかし、平均約1, 200ドルかそれ以上のその樽は、ただの保存用の入れ物ではない。できたてのワインに独特の味や香りを移し、私たちが楽しめる飲み物へと変化させてくれる。

オークはたいてい、フランス、ハンガリー、北米の厳選された森のものが使用される。それぞれに個性があるため、森の選択は極めて重要だ。オークの木は板状に切られ、数年外気にさらされる。こうしてワインに影響を及ぼす不純物が取り除かれ、準備が整うと、樽職人が板状の木を樽型に組み立てる。

焦げたトースト(マーマレードなし)の話は、ここで関係してくる。樽は、完成前に炎で軽く内部を焦がされる。焦げの度合いは一般的にライト、ミディアム、ダークの3段階あり、さまざまな香りをワインに添えてくれる。クリーム・ブリュレ、シナモン、キャラメル、バニラ、エスプレッソ、コーヒーの焙煎豆などを思い浮かべてほしい。

よって、ワインの醸造家が、例えばシャルドネ造りに当たる時、考慮しなければならないことは多数ある。まず第1に、ナラの樽を使うか使わないか(赤よりも白ワインに、ここでの選択の余地がある)、樽に使用する木の原産の森、樽内部の焦げの度合い、そして樽での保存期間。ワインが「オーク樽の香りがする」と表現されるのを聞いたことがあるかもしれない。これには、その人が繊細な味覚の持ち主である、オーク樽の香りがブドウの味を圧倒している、またはオーク樽による風味や味とブドウの果実の味が「混ざる」までに十分な時間が経っていない、ということなどが理由に挙げられる。

何はともあれ、オークはワインの醸造過程に不可欠な要素だ。次回ワインを飲む時は、ぜひこのことを思い出し、オークと果実の味が識別できるどうか試していただきたい。…“たる”ほど!


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Email: nichigopress@gmail.com


ベン・ホルト
 

ヒルトン・ワールドワイド・マーケティング統括本部長(日本・韓国・ミクロネシア地区担当)。QLD大学で文学修士(日本語と韓国語)ならびに科学修士を取得後、在豪日系企業などで食品輸出、商品取引、マーケティングに従事。2002年〜07年にオーストラリア・ワイン事務局日本代表、12年5月までオーストラリア政府観光局日本地区マーケティング本部長を務めた後、現職。
 

Web: www.holt-blog.com
Twitter: Mr_Riesling
www.facebook.com/Ben.Holt.69

 

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