【シドニー・ラーメン特集2016】最高の1杯を求めて

シドニー・ラーメン特集 最高の1杯を求めて

冬に入り寒い日々が続く中、街中の人気ラーメン店には長い行列ができるなどシドニーのラーメン業界は盛り上がりを見せている。本特集では現在のシドニー・ラーメン事情を紹介すると共に、本紙お勧めのラーメン店厳選14店を紹介。クーポンも複数用意したので訪れたことのない店舗があればこの機会に行ってみてはいかがだろう。取材・文=馬場一哉

シドニーのラーメン事情 ▶

厳選シドニー・ラーメン店(1/2)

厳選シドニー・ラーメン店(2/2)


ラーメン・ブームはいつまで続く?

シドニーでラーメン・ブームが巻き起こっていると言われて久しい。それまで数えるほどしかなかったラーメン店が増え始めた第1次ブームは今から約10年前と言われている。その後行列店がむしゃらなど名物店もオープンし、2012年になるとシティの人気店ずんどやセルフ式の格安ラーメン店てんこもりがオープン、その年末にはついに日本から一風堂が進出してくるなど新店ラッシュが巻き起こった。その後も、国内外の有名シェフがラーメン店をオープンするなど話題には事欠かず、引き続き人気は続いているが、ここまでくるともはやこれは「ブーム」ではない。ラーメン自体が1つの食文化として受け入れられ「定着」の局面に入ってきていると言っても良いのではないか。

チャッツウッドのウエストフィールドにアジア系の店を集めたフードコートが新設
チャッツウッドのウエストフィールドにアジア系の店を集めたフードコートが新設
同フードコート内にはラーメン・バーガーなどラーメン・インスパイア系のフードも登場
同フードコート内にはラーメン・バーガーなどラーメン・インスパイア系のフードも登場
シドニー・モーニング・ヘラルド紙でもラーメンをはじめとしたヌードル・スープを特集
シドニー・モーニング・ヘラルド紙でもラーメンをはじめとしたヌードル・スープを特集
ローカルのシェフ同士によるラーメン・バトルも行われた
ローカルのシェフ同士によるラーメン・バトルも行われた

実際、「ラーメン」というワードは至るところで耳にし、目にするようになった。例えば、チャッツウッドにあるショッピング・センター、ウエストフィールド内に新しくアジア系の店を集めたフードコートが誕生したが、その多くの店で麺料理が出され、その中にはもちろんまかないというラーメン店が含まれている。さらにラーメン・バーガーなる商品を売っている店もあった。

また、当地の大手地方紙シドニー・モーニング・ヘラルドが毎週火曜、紙面に挟み込んでいる「グッド・フード・ガイド」でもラーメンは登場する。ほかローカルのシェフによるラーメン・バトルの企画が催されるなど何かと盛り上がりを見せている。

ラーメンのクオリティーは?

人気の高まりはうれしい限りだが、ではラーメン自体のクオリティーはどうなのか。日本では例えばだしを取る昆布1つとっても選択肢は多く、また調味料の選択肢も全国見渡せば特徴的な商品が無限大にある。そういった意味ではラーメン向けの素材が限られている感は否めない。しかし、それでもなお手に入るものを駆使し工夫を重ね高いレベルのラーメンを追及し、結果として日本の人気店にひけを取らないレベルの1杯を提供している店は多い。ただ一方で、及第点ぎりぎりという店もまた少なくない(注:あくまで日系のラーメン店のみを対象に書いている)。

こうした店の出すラーメンの特徴は2つに大別できる。1つはスープが薄く、コクなどのうまみが感じられないというパターン。ある店は「メインで来る客層の味覚に合わせているので、日本人が来たら味を濃くする」と言うが、薄くてもコクやうまみは感じられるもの。その意味では元々スープに何かが欠けているのだろう。

また、2つ目はバランスが悪いということ。自店で頑張ってスープを作っていても、スープと合わせるかえし、さらには麺、トッピングなどとうまくマッチングしなければ結果として「まずくはないが何か物足りない」ラーメンとなる。

完全オリジナルのラーメンを作るためにはスープ、かえし、麺、トッピングなどすべてこだわって自作できればいいが、それには高い技術、手間、コストがかかる。そのため既存の業務用のスープやかえしにアレンジを加えるという方法を取っている店も少なくないだろう。

これは日本国内も同様の状況であるし、既存のものの質が悪いというわけではない。そういったものをうまくアレンジしながらでも味のアベレージを高めていく店が増え、レベルの底上げがなされていくことを期待したい。

そんな中、自店のスープの味へのマッチングを重視し、ここ数年増えてきているのが自家製麺だ。シティの人気店ずんどは弊紙とコラボレーションした「油そば」を開発したがあれも同店の自家製極太麺だからこそ実現できた。

おいしい麺を作るには何より小麦粉の質が大切だ。日本ではオーストラリア産の小麦が多く人気も高いため、こちらの小麦もラーメンに適していると考えてしまうがどうもそうではないようだ。オーストラリア産の小麦でも製粉自体は日本国内で行っており、その技術はオーストラリアのそれよりも高いという。同じ小麦であっても製粉技術の差ゆえ製麺には日本からの小麦粉を使うのが一番だそうだ。

シティ、チャッツウッドに2店舗を構え、自家製麺へのこだわりで知られる博多丸では日本の製粉会社の粉を輸入しているという。オーストラリア国内の小麦粉で製麺したこともあったが同店のスープになかなかマッチせず「風味のある麺、歯切れのある麺を作っていきたい」との思いからコストの増加は承知で決定したという。日本の粉で作った低加水のストレート麺、加水率の高いちぢれ麺はどちらもそれぞれスープにしっくりとマッチする。

同店のみならず自家製麺を打ち出している店は少しずつ増えてきているが、選択のバリエーションがさらに増えることは消費者としては素直にうれしいところだ。

最近では自家製麺にこだわりを見せる店が増え始めている(写真は博多丸)
最近では自家製麺にこだわりを見せる店が増え始めている(写真は博多丸)
日本から小麦を輸入するなどこだわりを見せる博多丸の麺の完成度は非常に高い
日本から小麦を輸入するなどこだわりを見せる博多丸の麺の完成度は非常に高い

2号店オープン・ラッシュ

翁氏がオープンした2号店Wok Noodle and Barでラーメンを作る翁氏設
翁氏がオープンした2号店Wok Noodle and Barでラーメンを作る翁氏設
洒落た内装の弥榮2号店はニュートラル・ベイにオープン(写真は同店店長の関川氏)
洒落た内装の弥榮2号店はニュートラル・ベイにオープン(写真は同店店長の関川氏)

市場の拡大という面から最近顕著に見られるのは新規参入よりも既存店舗の拡大だ。最大手の一風堂はすでに4店舗を展開中、また博多丸、キングスフォードで人気を誇っていたまんぷくもそれぞれチャッツウッドに2号店を構えた。

そんな中、ここ最近2号店のオープンで話題になっている店が2店ある。まず、キングス・クロス・エリアでは初のラーメン店となるWok Noodle and Barだ。日本でも有名なラーメン・シェフ翁和輝氏がチャイナタウンの翁さんラーメンに続きオープンした店舗だ。オープンから4カ月、手ごたえを感じているようで「アジア人が少ないエリアなので客はほぼローカル。それでも満席になってにぎわう」と話す。魚介豚骨ラーメンを頂いたが美味だった。翁氏が直接作るラーメンを食べたければぜひキングス・クロスまで足を運んでみるといいだろう。

また7月上旬に新規オープンするのがシティで新たな行列店となった弥榮ラーメンの2号店だ。メイン・メニューは本店と同じく豚骨ラーメンだが、その製法を1号店とは大きく変えている。スープは濃厚ながらしつこくなく、特製のかえしと相まって新たな豚骨スープを生み出しすことに成功している。また鶏白湯ラーメンも注目だ。真っ白な濃厚鶏白湯はシドニーでは珍しいが、本場日本では今、最も人気が高まっているラーメンだ。同店店長の関川岳志氏は「シドニーにはおいしい鶏のラーメンがなかったのでやることにしたんです。豚骨が主流の市場ではありますが鶏もぜひ食べてもらいたいですね」と話す。

人気店には多数の客が押し寄せ行列になることもしばしば(写真はめんやシティ店)
人気店には多数の客が押し寄せ行列になることもしばしば(写真はめんやシティ店)

シティから郊外に広がりを見せ始めたシドニー・ラーメン事情。今後はさらなる市場の拡大を期待しながら見守り続けたい。


interview

モダン・ヌードル・バー、サラリーマン・シェフ
ステファン・セッコールドさん

人気レストラン「Flying Fish」のエグゼクティブ・シェフを務めたステファン・セッコールドがシドニー、サリーヒルズに開店したラーメンを中心に据えたヌードル・バー「サラリーマン」が話題となっている。オージー・シェフの目にラーメンはどう映っているのか。
(Photo: Naoto Ijichi)

「新しいレストランを運営するに当たってちょっと他とは違うメニューを出してみたいと考えました。そんな中、人気が高まってきているラーメンに注目しました。ただ、もちろん最初はラーメンの作り方なども分からないので、日本で有名店に足を運んでみるなど研究をしました。いろいろ食べ歩いた中で特においしかったのはスカイツリーの近くにある竹末というお店です(編注:端麗しょうゆラーメンで知られる超人気店)。ラーメン作りはこれで完成、というものがないので本当に大変です。時にフラストレーションもたまりますがより良い味にするために日夜頑張っています。サラリーマンのラーメンは、いわゆる日本人が食べてきたような伝統的なラーメンとは違うかもしれません。しかし、いろいろと工夫を重ねておりますのでぜひ試しに食べに来てもらえるとうれしいです」


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