幸せワイン・ガイド@オーストラリア「ヤラ・ヴァレー」

ワインの産地、ブドウ品種名などの表記は、オーストラリア連邦政府のワイン振興団体であるワインオーストラリアの基準に合わせています。

今月の銘醸地:ヤラ・ヴァレー


「一番好きなワイン産地は?」と聞かれたら、私の場合、「ヤラ・ヴァレー」は間違い無く3本の指に入ります。幸せなことにメルボルンで2年間、学生生活を送る機会に恵まれた私にとって、この食と文化の街から1時間強ほどのドライブで行けるヤラ・ヴァレーは、シドニーで暮らす今でも、特に思い入れのある産地です。

ヤラ・ヴァレーでは、その冷涼な気候からエレガントで線の細い、上品なワインがたくさん生産されています。当時はまだワインの勉強など全くしておらず、知識も何もありませんでしたが、何となく体に染み込むような優しいワインが多いなと感じました。以来ワインを選ぶ時は、自然とヤラ・ヴァレーのワインを好んで買うようになりました。

気候、土壌

土地の持つ多様な条件が、ブドウ栽培に細かなバリエーションをもたらしている
土地の持つ多様な条件が、ブドウ栽培に細かなバリエーションをもたらしている

ヤラ・ヴァレーは全体的に冷涼な気候ですが、地域内でも標高が海抜50メートルから400メートルと幅広く、この標高の幅と複雑な土壌の種類が組み合わさり、日当たりや気温なども含めブドウ栽培を取り巻く環境において更に細かなバリエーションが存在します。その細かな環境の違いの中で、さまざまなブドウ品種が本領を発揮する産地です。

歴史

ヤラ・ヴァレーに最初にブドウが植えられたのは1838年のことです。その後ブドウ、ワイン造りが発展するものの、害虫フィロキセラの到来、株式市場の暴落などで一時期ワイン造りは停滞していた時期もありました。

ヤラ・ヴァレーの主力品種

ヤラ・ヴァレーの主力品種は、何と言ってもピノ・ノワールです。フランスのブルゴーニュを原産とするピノ・ノワールの香りや味わいの特徴には、イチゴ、ラズベリーやチェリーといった赤い可憐な果実、スミレやラベンダーのようなフローラル系の香り、紅茶葉のような土っぽさ、そしてクローブやナツメグといったスパイスなどが挙げられます。

ヤラ・ヴァレーの中でも比較的温かな場所では、シラーズやカベルネ・ソーヴィニョンも作られています。ヤラ・ヴァレーのカベルネやシラーズもまた、温暖な産地のものに比べると線が細くフェミニンで、ミディアム・ボディのものが多いです。また、最近シラーズを「Shiraz」ではなく「Syrah」と表記する生産者が増えています。従来のガッツリ濃厚なオ―ストラリアのシラーズのイメージを払拭し、ヨーロッパのスタイルに近い、より涼やかなワインであると揶揄するためと思われます。

そして白は、まず、ピノ・ノワールとは姉弟のような関係にある、シャルドネです。同じブルゴーニュ原産の白ブドウ品種であり、ヤラ・ヴァレーでは上品で洗練されたスタイルのものが多く作られています。ピーチやメロン、グレープフルーツのような果肉の柔らかな果実の香りに、複雑なミネラルや樽熟成から来るバニラ・ビーンズやナッツのような甘く芳ばしい香りが重なります。ヤラ・ヴァレーのシャルドネはくどすぎず、飲み心地の良いものが多いです。

そして、上記のようなオ―ストラリアで昔から親しまれてきたクラシックな品種に加え、イタリア品種であるネッビオーロや、オーストリアの白品種グリューナー・フェルトリナーといった、面白いオルタナティブ品種の生産が、特に次世代の若い生産者たちの間で進み、オーストラリア・ワインの幅をより一層押し広げています。

スパークリング・ワインの生産

ヤラ・ヴァレーの主力品種であるピノ・ノワールとシャルドネは、シャンパーニュを始めとする、高級スパークリング・ワインを作る品種でもあります。ドメイン・シャンドンは、最大のシャンパーニュ・メーカーであるモエ・シャンドンが、ヤラ・ヴァレーで設立したワイナリーです。シャンパーニュと同じ「瓶内二次発酵」と呼ばれる伝統的な製法により、品質の高いスパークリング・ワインを生産し、広く親しまれています。

お薦めの生産者は

ヤラ・ヴァレーのお薦めの生産者は、まず同地に最初にブドウを植えたイェリング・ステーション(Yering Station)、一時期ワイン造りが途絶えたヤラ・ヴァレーを復興させたヤラ・イェリング(Yarra Yering)、マウント・メアリー(Mount Mary)、イェリングバーグ(Yeringberg)など。そして、安定した品質のオークリッジ(Oakridge)、洗練され深みのあるシャルドネやピノ・ノワールが自慢のジャイアント・ステップス(Giant Steps)もお薦めです。

また、ヤラ・ヴァレーには小規模生産者も多く、ホドルス・クリーク(Hoddles Creek)、ティモ・メイヤー(Timo Mayer)、ルーク・ランバート(Luke Lambert)、マック・フォーブス(Mac Forbs)など、冷涼気候のヤラ・ヴァレーに、新しい風を吹き込む新世代の生産者たちにも注目が集まっています。

*今月のお薦めワイン*
ヤラ・ヴァレーのエレガントなワインを楽しんで

低価格かつ秀逸なピノ

Hoddles Creek Estate Pinot Noir/$21.99
Web: www.hoddlescreekestate.com.au
鴨肉、焼き鳥、ビーフ・カルパッチョ、サーモンの刺身などと

飲み心地の良いシャルドネ。BYOデートに

Giant Steps Yarra Valley Chardonnay 2016/$35
Web: www.giantstepswine.com.au
ポーク・チョップ、シーフード・パスタ、ハマチの刺身などと

パーティーへの持ち寄りに

Oakridge LVS Cabernet Sauvignon 2014/$38
Web: www.oakridgewines.com.au
上質なステーキ、ラム・チョップ、ビーフ・ブリスケットなどと


<著者プロフィル>
フロスト結子
◎日本人としての合格者はまだ少ないワインの国際資格WSET® Diploma in Wine & Spirits及び日本酒のAdvanced Certificateを取得。日本でワイン関連商社の貿易業務に携わった後、2009年オーストラリア人の夫との結婚を機にシドニーへ移住。現在はオーストラリア国内大手オークション会社であるGraysOnlineのワイン部門でカテゴリー・スーパーバイザーとして勤務する傍ら、フリーランスとしてライティング、ワイン関連の翻訳、市場調査などで精力的に活動中。ワインのコメントは「とにかくおいしそうに書く」がモットー。Web: auswines.blog.jp

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