顔面神経麻痺・痙攣

ドクター印藤の「ここがツボ」

第44回 顔面神経麻痺(まひ)・痙攣(けいれん)

人の体がなぜ治癒するのかについて考えてみましょう。体には筋肉や内臓系のような可視的構造の他に、自律神経、ホルモン、免疫系の身体機能を維持するホメオスタシスが存在します。そして、その両者のバランスを取るために、大脳などの精神神経機能があります。一方、外界には温湿度などの物理化学的要因、ウイルスなどの生物的環境要因があります。

これらの要因は常に変化し、身心を中心としたダイナミズムを形成しています。従って健康状態というのも一義的に決まるものではなく、身体内面(小宇宙)と環境(大宇宙)との微妙なバランスの下に成立しているのです。病院での検査結果による数値や診断というのは、その中において時系列で切り分けた1つの瞬間値にすぎません。ですから、その基準内に収まれば健康であるとは必ずしも言えず、また逆であっても病気とは断言できません。

古くから東洋世界では、顔面の麻痺・痙攣は比較的多く発生していたようで、「口目喎(ゆがむ)」「喎僻(かへき)」「瞤動(痙攣する)」などと記されています。春先のまだ寒冷な風に吹かれると春に動じやすい肝臓に邪気が宿り、肝の支配組織である筋に異常が起こると考えられていました。これは現代医学では長く原因不明とされていましたが、ヘルペス・ウイルスによるものが70パーセント以上を占めると近年報告されています。このウイルスは、筋肉に寄生すると終生離れず、宿主の免疫状態低下により増殖力を回復し、発病することも分かってきました。

つまり、東西で基盤となる考え(哲学)は異なるのですが、体に巣食う病原体(病邪)の勢力増大によって病気は発生するというプロセスはかなり似通っています。高齢化社会を迎え、現代医療もホメオスタシスによってバランスを重視する方向に変化しつつあるように思えます。

地球環境も水というネットワーク機能を持つ物質によって循環し、バランスを保っています。個々の分析も重要ですが、物質や生命現象の相互関係性を観察し、より全体的な見方を身に着けることが今後の最重要事になるでしょう。

陽白:眉毛中央の上方1横指。瞳孔の直上。
瞳子髎:目尻の外方約半横指の陥凹部。
地倉:口角の傍ら約半横指。瞳子の直下。
頬車:下顎骨と耳垂の間。口を開けると凹む所。
水溝:上唇の正中上部。鼻中隔の直下。溝の中央。
風池:後頚部、僧帽筋起始部(天柱)の外方1横指の陥凹部。
翳風:耳垂と頭骨乳様突起との間で、口を開けると大きく凹む所。
肩井:鎖骨中央部の凹み(缺盆)より直上し、肩上部を押して固く響く所。
曲池:肘を深く曲げ、肘窩横紋の外端を探ると上腕骨の外側上顆を触れ、押すと響く所。


印藤裕雄(いんどうひろお)
1991年北里研究所付属東洋医学総合研究所および間中病院東洋医学科を経て開業。2004-08年メルボルンの国立モナシュ大学日本研究センター客員研究員(伝統医療の研究および技術指導)。森ノ宮医療大学講師(東洋医学)。09年茨城県土浦市に、新しい時代ニーズに合った総合的東洋医療を目指し、東洋医療センターを開業。11年から東京での診療活動も開始。日本統合医療学会評議員、全日本鍼灸学会会員など。著書『癒しの芸術と科学‐身体・心・魂の調和』三恵社、『潜在能力の科学』など。コラム・診療についての質問は、facebook:hiroo.indo@facebook.comまたはwww.facebook.com/CentreForEasternMedicineJapanまで。

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