健忘症候群

ドクター印藤の「ここがツボ」

第49回 健忘症候群

日豪両国を始め、先進国の多くで平均寿命は既に80歳を超えました。また、日本人の70歳以上の男性で約16年、女性では20年の平均余命を達成しています。人生50年と言われたのは半世紀程前のことですが、私たちは今や90年の人生を全うするためのモデルを作る必要に迫られています。

しかし、健康に生きられる指標である健康寿命は、平均寿命より10年前後短く、その差は徐々に拡大しています。これは現代医療の薬や検査にどれだけお金を投じてもいつまでも健康で長生き出来るわけではない、ということを示唆しています。世の潮流は、受け身の「レディメイド医療」から、自ら心身を管理する「セルフケア医療」になりつつあるのではないでしょうか。

中年以降、人はさまざまな身体機能の低下を見ますが、記憶障害は自覚的に分かりやすいものの1つです。

記憶は、脳内の海馬や側頭葉皮質前部などを中心とした神経回路で主に担われます。その中で「記銘-保持-想起」というプロセスを経て記憶が保たれ、数十秒以内で容量制限のある即時(短期)記憶と数時間~数日保持される近時記憶、それに数週~数十年にわたる容量無限大の遠隔記憶に分かれます。

記憶障害の起こるレベルは、この2つ目の近時記憶に起こることが多いのです。人と約束したことを忘れる、物を無くす、朝食に何を食べたか、また友人の名前を思い出せないなどにおいて発覚します。原因は、①頭部外傷や脳梗塞及び出血、②低血糖症、③ヘルペス脳炎、④心因性、⑤初期認知症など多岐にわたり精査を必要とします。

東洋医学的には健忘は五臓の内、心と腎、それに短期的に脾臓(ひぞう)の衰えによって起こるとされます。加齢によって先天の気(精)を内包している腎の力が徐々に衰え、精神力の減少と共に心を過度に用いるようになります。その心の使用過度によって集中力の低下を来たし、朦朧(もうろう)となることを健忘とします。

セルフケアとしては、脳内循環を改善させるツボと全身調整の役割を持つツボを刺激することによって行います。早期に着手すれば効果の高い方法ですので、毎日試してみてください。

百会:頭頂部、左右耳介の尖端を結ぶ線と正中線の交点から少し後方の陥凹。
印堂:眉間の中央。
天柱:後頭部の筋肉(僧帽筋)と骨の接合部外側、押して痛む所。
完骨:耳介の後方、頭骨乳様突起の下端より約1横指後方の凹み。
腎兪:伏臥位で、肋骨下端の線と腰椎(第2、3)の交点より約2横指外方。
足三里:ひざを立て脛骨の前面外側を指で押し上げると指の止まる所。圧すれば響く
照海:内踝(うちくるぶし)の直下0.5横指の凹み。
巨厥:胸骨下端の下2横指。
膻中:左右両乳頭の間。胸骨正中の凹み。


印藤裕雄(いんどうひろお)
1991年北里研究所付属東洋医学総合研究所および間中病院東洋医学科を経て開業。2004-08年メルボルンの国立モナシュ大学日本研究センター客員研究員(伝統医療の研究および技術指導)。森ノ宮医療大学講師(東洋医学)。09年茨城県土浦市に、新しい時代ニーズに合った総合的東洋医療を目指し、東洋医療センターを開業。11年から東京での診療活動も開始。日本統合医療学会評議員、全日本鍼灸学会会員など。著書『癒しの芸術と科学‐身体・心・魂の調和』三恵社、『潜在能力の科学』など。コラム・診療についての質問は、facebook:hiroo.indo@facebook.comまたはwww.facebook.com/CentreForEasternMedicineJapanまで。

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