頚肩(けいけん)の凝り(頸性神経筋症候群)

ドクター印藤の「ここがツボ」

第50回 頚肩(けいけん)の凝り(頸性神経筋症候群)

過去約20年の情報伝達や社会の変化は、いかなる時代よりも急激と言われます。人間は、社会的動物の側面を強く持っていますから、このような劇的変化にも何とか適応していこうとします。

しかし、このような特長は逆に周囲の環境への過剰適応となってしまうこともあります。歴史的に見て、人は自分の属する集団内の決まりを守らなければ生きていけないこともしばしば起きました。そのため、仲間外れにならないように行動することは得手でも、集団の行動原理に過剰にのめり込む危険を察知するセンサーは、働きにくくなっているようです。

情報化社会による新タイプの病は、そのような特性の盲点を突いたものと言えるのではないでしょうか。PCや情報端末の画像を長時間見つめることによって、大脳の視覚や記憶を司る部分に慢性的な疲労が蓄積されてきた結果、体はさまざまな障害を起こす危険性を持っているのです。

頚肩部を取り巻く筋肉群は、僧帽(そうぼう)筋や広背筋のような大きなものから、大小後頭直筋のような小さなものまで多様に存在します。これで5~6キロの重い頭を支え、互いに協調して自由に動くようになっています。しかし、近くの平面上の一点を見つめることではそのような柔軟性はほぼ無視され、決まりきった動きしか許されません。そのため、その硬直状態を長時間強制的に続けた結果、異常に頸部から肩にかけて固まってしまい、可動性のない人を多く診るようになりました。

頸肩部には脳に酸素を運ぶ内外頸動脈や脊髄神経、そして頸部神経叢(そう)など生命維持に欠かせないネットワーク機能が集約されています。その部分に慢性的な硬直状態を作ることは、単なる筋肉の疲労にとどまらず、自律神経系やホルモン系にも悪影響を及ぼす可能性を持っています。

慢性的な凝りと同時に、疲労感や視覚異常など自律神経失調を感じるようならば、シャワーなどで循環を促進し、ストレッチも加えつつツボ指圧を継続するようにしてください。既に長期にわたって上実下虚(冷えのぼせ)の状態になっているので、足の方への気血誘導も大事です。少しずつ毎日行えば、かなり効果を期待できます。

太陽:眉の外端と目尻の中間から、約1横指後方の陥凹部。
天柱:後頭部の筋肉(僧帽筋)と頭骨の接合部外側。按じて痛む所。
風池:後頚部、天柱穴の外方1横指の陥凹。
翳風:耳垂と頭骨乳様突起との間。口を開けると凹み押すと耳中に響く。
肩井:鎖骨中央の窪み(缺盆)から直上し、肩上部を按じ固く響く所。
肩外兪:肩甲骨、内側の角の骨際。
膏肓:肩甲骨の内側骨際の中央付近。
斜角:缺盆と肩井の中間で、強圧すると痛む所。
湧泉:足底部中央よりやや前方。足指を屈すると凹む所。


印藤裕雄(いんどうひろお)
1991年北里研究所付属東洋医学総合研究所および間中病院東洋医学科を経て開業。2004-08年メルボルンの国立モナシュ大学日本研究センター客員研究員(伝統医療の研究および技術指導)。森ノ宮医療大学講師(東洋医学)。09年茨城県土浦市に、新しい時代ニーズに合った総合的東洋医療を目指し、東洋医療センターを開業。11年から東京での診療活動も開始。日本統合医療学会評議員、全日本鍼灸学会会員など。著書『癒しの芸術と科学‐身体・心・魂の調和』三恵社、『潜在能力の科学』など。コラム・診療についての質問は、facebook:hiroo.indo@facebook.comまたはwww.facebook.com/CentreForEasternMedicineJapanまで。

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