【特集】オーストラリアで妊娠・出産 ①受診・入院編

オーストラリアで妊娠・出産 ©Ruji Studio
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日本を離れオーストラリアでの出産には、言葉の壁や自分の親といった身近な存在が近くにいないことなど、心配事が山積みだと考えてはいないだろうか。そんな心配事を解消すべく、同国での妊娠・出産に当たって知っておきたい内容として、本特集では、妊娠が分かってから出産までのスケジュールや出産スタイルについての選択肢、授乳におけるセルフケア、センターリンクからの補助内容などをまとめた。これから出会う我が子のためにぜひ参考にしてみて欲しい。

■記事監修=吉田まゆみ先生(さくらファミリークリニック)、エイドリアン・クオック先生(Mater Hospital, North Sydney)
■記事協力=コンリー鈴香さん(助産師=Sydney Adventist Hospital)、メンダムれい子さん(ドゥーラ=Australia Doula College)

オーストラリアでの妊娠から出産まで

妊娠が分かってからのスケジュール

まず妊娠が分かったら、GP(General Practitioner=一般開業医)へ行こう。妊娠7~8週には、エコー検査(Dating Scan)と血液検査を行うことがほとんどだ。しかし妊娠後すぐ、もしくは妊娠前からもGPに相談できる。食生活や薬についてのアドバイスをしてくれるそうだ。

そして、8~12週の間に専門医(パブリック・ホスピタル=公立病院/プライベート・ホスピタル=私立病院)への紹介状を依頼し、GPからそれぞれ希望の病院へ紹介状を受け取る。12週でダウン症の検査を含めたエコー検査(NT Scan)、20週では胎児の体の発達を詳しく診るエコー検査(Morphology Scan)を行う。安定期(16~28週)の診察は月に一度ほど、妊娠後期(28週以降)からは2~3週間に1回健診をする。また26週ごろには再度、糖尿病の検査を含めた血液検査が行われる。

更に、早めの段階でインフルエンザの予防接種が推奨されていたり、GPでは28週ごろに百日ぜきの予防接種が実施される。

大まかなスケジュールを以下に表でまとめてみた(一般的な流れを示しており、受ける検査や体調などにより人ぞれぞれスケジュールは異なる)。

専門医に掛かる

妊娠してからGPへ行くのは必須だが、出産については、「公立病院」か「私立病院」のどちらで行うのかを選ばなければならない。それぞれの特性については、以下の表にまとめた。

一般的に公立病院は20週以降から掛かることになる。特定の医師や助産師を指定することは難しいが、幾つかのプログラムが用意されているため、事前にどういった態勢で出産をしたいか伝えておくことが可能だ。

プログラムには、助産師と1対1でケアしてもらう「Midwifery Care」、掛かり付けのGPに毎回診てもらうケア「GP Shared Care」、同じ月齢のプレ・ママを集めて助産師が診るケア「Midwifery Group Practice(MGP)」などがある。ただし、持病や、妊娠期間中に高血圧や糖尿病を発症したり、超高齢出産、胎児の成長に問題があるなど高度なケアを必要とする場合、専門の産婦人科医チーム(Obstetric Care)でより細やかに診てもらうことになるだろう。

また公立病院では、メディケアや妊娠をカバーする保険(OSHCやプライベート保険)の加入者は、自己負担なしで全ての検査を受けられる(一部別途費用が掛かる検査もある)。

一方、私立病院では自身で産婦人科医(医師=ドクター)を選び、その医師のクリニック(オフィス)へ出産まで通院することになる。そのため、出産当日から入院期間中まで助産師に会うことはほとんどない(健診時、助産師による保育指導を受けられる場合もある)が、定期健診と出産を同じ医師が担当する。毎回の健診で簡単なエコー検査ができたり、個室でゆとりを持って産後の回復や育児技術の習得に努めることができたり、専用の待合室でコーヒーを飲めるなど公立病院よりも、比較的待遇が良い。費用に関しては、加入しているプライベート保険の会社や契約内容によって異なる。

出産スタイル

赤ちゃんの状態や妊婦の体調、出産時の状況によって変わってくるが、どのような出産を希望するのか病院側へ伝えることが可能だ。

公立病院では「バース・ルーム」と呼ばれる出産に特化した部屋が設けられていたり、病院によっては水中出産のため部屋にプール(風呂)のような水場が用意されている所もある。また、分娩台でも足を固定しなかったり、ベッドの上で四つん這いになるなど好きな体勢が取れる。

他にも笑気ガス(Happy Gas)と呼ばれる麻酔を使用したり、帝王切開や無痛分娩(エピドュラル=硬膜外麻酔)などの選択肢がある。

ただし出産時の状況によっては、赤ちゃんとママの健康と安全を最優先とし対処するため、希望がそのまま通らないことも多々あることを知っておきたい。

妊娠・出産が分かったら……

GP(一般開業医)

公立病院(Public Hospital)

  • 一般に妊娠20週以降から掛かる。
  • 特定の医師や助産師を指定することは難しいが、Midwifery Care、GP Shared Care、Midwifery Group Practice(MGP)などのプログラムを希望可能。
  • 入院期間は一般的に1~3日。
  • 退院後、助産師が自宅に子どもとママの状態を診察しにくる。
  • メディケア(永住権及び市民権保持者)や妊娠をカバーする保険(OSHCやプライベート保険)は、自己負担なしで全ての検査を受けられる(一部別途費用が掛かる検査もある)。

私立病院(Private Hospital)

  • 自ら産婦人科医を選び、その医師のクリニックに掛かる。
  • 出産当日から入院期間中まで助産師に会うことはほとんどない(健診時、助産師による保育指導を受けられる場合もある)が、定期健診と出産には同じ医師が担当する。
  • 毎回の健診で簡単なエコー検査ができる。
  • 入院期間は、普通分娩で約4日、帝王切開の場合、約5日とされる。
  • 費用は、加入しているプライベート保険の会社や契約内容によって異なる。
検査 備考
7~8週 GPに行くエコー検査(Dating Scan)と血液検査 ●私立病院は紹介状を出してすぐに診察の予約が取れる。
●公立病院での初回の診察は、特に問題がなければ20週を超えてから。
●希望者はNIPT(赤ちゃんの性別や染色体異常が分かる血液検査)の検査を受けられる(10週~)。
●12週の血液検査は、エコー検査(NT Scan)の数日前に行う。血液検査の結果とエコー検査の結果を合わせて染色体異常がある確率がどれくらいかを調べるダウン症のスクリーニングを行う。
●従来28週以降で受けるように言われていた百日ぜきの予防接種は、規定が変わり、少し早め(20週以降)に受けても良い。
●インフルエンザの予防接種が推奨されている。
8~12週
GPに専門医への紹介状を書いてもらう。
12週 血液検査とエコー検査(NT
Scan)
安定期
(16~28週)
18~20週 エコー検査(Morphology
Scan)
26~27週 血液検査と百日ぜきの予防接種(GP)

入院から退院まで

オーストラリアでは出産後の入院期間は基本的に日本よりも短い。公立病院では出産当日から3日の間に退院し、私立病院では普通分娩で約4日、帝王切開の場合は、約5日とされる。ただ、どのくらいの入院期間が必要かは、赤ちゃんとママの経過により医師が判断する。また早い段階での退院は、院内感染や血栓症のリスクを減らすとされている。

公立病院では退院後、入院日数が短いことから助産師が自宅まで赤ちゃんとママの状態を診察しに来てくれる。赤ちゃんの体重や黄疸(おうだん)の程度、授乳や排便、排尿の頻度などがチェックされる。

赤ちゃんがいる日常生活へのアドバイスや、ママの体の痛みや出血、授乳に関するトラブルにも対応してくれる。

その他、赤ちゃんのかかとからの採血により、先天性の障がいの有無を調べる。

私立病院では、授乳の仕方や沐浴方法といった育児の教育指導をし、ママの体の回復をサポートして母子を正常な状態に安定させた後に退院させる。

また、助産師やナースを24時間体制でいつでもナースコールで呼ぶことができるので助かる。パートナーがママと同室で泊まれるようにもなっている。

入院期間中には、ママへの産後診察や、ママやパパに向けた育児クラスやワークショップが開催されている。

私立病院ではラクテーション・コンサルタント(後述)が常駐していたり、ママの体の産後回復、腰痛、排尿トラブルなどの軽減のため、フィジオセラピストからのサポートが受けられるそうだ。

また健診に関して、生まれてすぐに子どもは、両親の同意の下、ビタミンKの注射及びB型肝炎の予防接種が打たれる。更に新生児健診の一環として、聴力検査も産後すぐに行われる。

吉田まゆみ先生とエイドリアン・クオック先生に聞いた、あれこれ!

オーストラリアでの妊娠・出産に関して気になることを吉田まゆみ先生(さくらファミリークリニック)とエイドリアン・クオック先生(Mater Hospital, North Sydney)の2人の専門家に以下の通り聞いた。

オーストラリアでの出産の特徴

吉田まゆみ先生(以下、吉田先生):オーストラリアでの出産は、総合病院で産婦人科、麻酔科、小児科チームの協力の下、対応しています。夜間も交代で医師が対応するため、問題が起きた時の対応力は高く、とても安心です。難産時には小児科医がすぐに駆け付けてくれます。
 赤ちゃんは「カンガルーケア」で、産後すぐママのお腹の上に置かれ、それ以後は基本的に一緒です。また沐浴は、自宅に帰ってからが一般的です。
 日本で里帰り出産の場合、言語面での不安もなく、実家の助けを借りながら子育てができ、産婦人科の個室で3食・昼寝付きの産後を過ごせます。しかし、飛行機には妊娠36週以降は乗れないため、オーストラリアに残るパートナーと、家族としての時間を過ごす機会が限られてしまいます。

妊娠期間中の食事、運動、体調について

吉田先生:つわりがひどい場合、水分補給をしっかり心掛けてください。ホルモン・バランスの関係で、イライラしたり、泣いてしまうことがあると思います。なるべくストレスをためないよう、できる範囲で適度な運動を心掛けると良いでしょう。
 また、妊娠中のタバコと飲酒は絶対に避けてください。葉酸のサプリは、赤ちゃんの背骨の発達を助けます。可能であれば、妊娠予定の3カ月月前から飲み始めてください。葉酸に加えて、ビタミンDやヨウ素を含んだプレ・ママ用のサプリは、処方箋なしで薬局で購入できます。

エイドリアン・クオック先生(以下、クオック先生):妊娠中は、野菜や果物、魚や肉からのタンパク質をバランス良く摂取する必要があります。過度な体重増加は、妊娠中の糖尿病や高血圧などの妊娠中の合併症のリスクを高める可能性があり、体重増加の管理も必要です。デンプン食品や甘い物など過剰な炭水化物は避けた方が良いでしょう。
 定期的な運動は、身体的・精神的に妊娠中の女性を助けます。ヨガ、水泳、ピラティスなどの運動は、妊娠中によくある背中の痛みを和らげるのに役立ちます。エアロバイクや軽い活動も可能です。

パートナーとの関係

吉田先生:初めての出産は、誰でもとても不安です。診察に付き添って言語面でのサポートや、一緒に出産学級に参加することで、妊娠・出産に関する知識を共有することができます。オーストラリアでは、パパも長期の産休を申請できるので、できるだけ2人で赤ちゃんを見てあげるのが理想です。

クオック先生:サポートに協力的なパートナーは、新しくママになる人にとって非常に頼もしい存在であり、ママの出生後のうつ病の可能性を大幅に減らすとされています。

関連職種

妊娠から出産、そしてその後の育児において関わるであろう人たちの職業を以下に挙げてみた。

  • 産婦人科医:専門医。私立病院の場合、特定の医師を選択することになる。
  • 助産師(Midwife):妊娠・出産におけるサポート全般を行う。妊娠期間中の保健指導、産後のママの体の回復や育児技術の習得のサポートなどを行う。
  • ラクテーション・コンサルタント:正式名称は「国際認定ラクテーション・コンサルタント」(International Board Certified Lactation Consultant/IBCLC®)。国際的な資格であり、妊娠期間中・産後を通して、さまざまな状況での母乳育児・授乳について、ママ自身がセルフケアができるよう、適切な情報提供や相談と教育を行う。
  • ドゥーラ(Doula):思い描くような出産ができるようにプレ・ママ(ママ)とその家族を支える存在(特に38週ごろ~出産まで)。資格があるわけではなく、オーストラリアでは「Australian Doula Collage」が最大クラスの組織であり、研修(実地を含む)を修了した者を認可している。

■ オーストラリアでの妊娠・出産におけるPDF資料(NSW州政府発行)も参考になる。ぜひ目を通してみて欲しい。

『妊娠・出産について(Having a baby – Japanese)』(日本語)

★Web: www.health.nsw.gov.au/kidsfamilies/MCFhealth/Documents/having-a-baby/having-a-baby-japanese.pdf

『Food Safety During Pregnancy』(英語)

★Web: www.foodauthority.nsw.gov.au/_Documents/foodsafetyandyou/pregnancy_brochure.pdf


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