尺八奏者ライリー・リーさん独占インタビュー

インタビュー

Photo: Rudi van Starrex

オーストラリアの和

オーストラリアで見つけたステキな「和」を紹介。

現世を表わす音色を求める

尺八奏者

ライリー・リーさん インタビュー

日本で外国人初の大師範として認められ、世界を舞台に活躍する、在豪アメリカ人尺八奏者、ライリー・リーさん。9月15〜28日に国内6カ所で行われる、豪州の太鼓パフォーマンス・グループ「TaikOz」と日本の太鼓グループ「鼓童」のコンサートにゲスト出演する。同氏は日本で尺八を学び、またその間、「佐渡國鬼太鼓座(かつての鼓童)」で太鼓のパフォーマーとしても活動していたという。日本の伝統音楽である尺八や太鼓に見る彼の世界観とは? コンサートの見どころも含めて話を伺いに訪れると、その尺八を吹く姿の孤高で近寄りがたいイメージとは反して、軽快な語り口調の日本語で気さくにインタビューに応じてくれた。

 

尺八と出会い、太鼓へと繋がる

−1970年代に日本で7年間、尺八の修行をされ、外国人初の大師範となられました。そもそも尺八に魅せられたきっかけとは?

私がまだ高校生くらいの時、父からもらった中国の竹笛を遊び感覚で吹いていました。ちょうどヒッピーが流行っていたころで、天然の素材を用いたオリエンタルな雰囲気の竹笛にも自然に興味が湧いて。これは尺八の親戚みたいな笛です。

そして人間国宝の山本宝山による尺八のレコードも聞いていました。2分半ほどのソロの曲だったのですが、もう愕然とするくらい感動して、何度も聞きました。

 

インタビュー

Photo: Keith Saunders, TaikOz

−実際に尺八と出会ったのは、日本への旅行で訪れた、ある楽器店の店主がきっかけだったそうですね。

1971年、私が20歳の時、約3カ月の滞在予定で大阪を訪れたのですが、ふと尺八のことを思い出して、阪急百貨店の尺八を販売する楽器店に行きました。店内には1万円と5万円の尺八が並んでいました。その当時のお金の価値は、地下鉄が30円、タクシーは1回90円。値段を見てびっくりしました。

しかし、どの尺八を見てもただの竹にしか見えません。不思議に思って「1万円と5万円の尺八は、どう違うのですか?」と初老の店主に聞いたところ、「お前、本当に知りたいか?」と言われました。てっきり高い尺八を薦められるのかと思ったのですが、「口で説明しても分からない」と、近くで習える有名な尺八の教室を紹介されました。それで、酒井竹保2代目の弟子になって、3カ月の滞在が気付いたら7年に。

まさか尺八を本気で習うとは思わなかったですし、1からのスタートでした。でも好きなことをしていたので、辛いと思ったことはなかったですね。外国人が尺八を習うことについては、私があまりに没頭している様子を見て、先生も喜んでいたみたいで、問題はなかったです。

生計を立てることに関しても、尺八を最優先するためにできるだけ仕事量を減らしたかったので、1日4時間半、英会話講師やモデルの仕事をしていました。今思えば、それだけで食べていけたなんて、とてもラッキーですよね。

 

−7年間の滞在中には太鼓グループ「鼓童」の前身である「佐渡國鬼太鼓座」で、太鼓奏者としてもパフォーマンス活動をされていたそうですね。

日本に来てから3年半目のことでした。佐渡國鬼太鼓座(新潟県)リーダーの田耕さんが主催で、お琴、踊り、尺八の先生と弟子が集められて、日本芸能のワークショップが開かれたのですが、私も竹保先生と参加する機会がありました。そこで、田さんに誘われて太鼓を始めたのがきっかけです。それからは太鼓の練習やランニングなどのトレーニングが増えて、尺八の練習時間を確保するのが大変になりましたが、仲間たちと叩けて、楽しかったですよ。

 

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Photo: Rudi van Starrex

尺八で現世を表現する音色

−日本の伝統楽器である尺八はフルートなどの笛とどのように異なるのでしょうか。

楽器によって特性が異なるため、簡単には説明できないですね。尺八は歴史が古くて、かつては禅宗の「吹禅*」で使われていました。そのため、軽快なメロディーのある西洋音楽とは異なる独特の音楽性が、創られたのです。

また管楽器のフルートと違って竹でできていますし、造りもとてもシンプルな楽器です。フルートなどは時を経て複雑な造りに進化してきましたが、尺八はその逆。尺八は、唐の時代に中国から渡ってきたのですが、当時のものには穴が6つあるのに比べて、現在のものはたったの5つ。もっとシンプルになったんです。

そして楽器の教え方も西洋の方法と異なります。日本的な考え方と禅の影響から、先生と弟子の人間関係が大切とされています。また、これは武道などにも言えますが、技術だけではなく言葉では表わせない“生き方のすべて”もまた先生から弟子へと伝えられます。尺八を通して、「どう生きれば良い人間になれるのか」と考えたり、人生やこの世のすべてについて思いを馳せる、それが西洋の音楽との大きな違いだと感じています。

 

−佐渡國鬼太鼓座では、訓練の一環で長距離を走ると聞きました。

そうですね。3年半〜4年くらい鬼太鼓座にいましたが、8回くらいフルマラソンを走りました。多い時には週100キロも…。雨の日も雪の日もTシャツだけで毎日走っていました。

鬼太鼓座には、走ることで自然が理解できるという教えがありました。雨や風を尺八の音色で表現するように、日本の芸能は自然が素になっています。それを深く豊かに表現する上で、自然を理解することはとても重要だったんです。

また走ることで、物事には限界がないということにも気が付きます。最初はできないと思っていることでさえ、練習を継続することで必ずできるようになるんです。「限界」という概念は自分が作ったもので、実際はどこにあるのか分かりません。

だから今、私が大師範という身であっても、一番良い音色が出せるように、死ぬまで追究していきたいです。これはビギナーの人にも言えることで、目指す先は皆同じ。水平線上の前の方を歩いているのか、後ろを歩いているのか、その違いだけです。

 

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Photo: Keith Saunders, TaikOz

日本の伝統音楽と向き合う

−リーさんは尺八奏者であるとともに、TaikOzの創立者の1人で、現在アート・ディレクターでもいらっしゃいます。そもそも太鼓は昔、どのようなことに使われていたのでしょうか。また、最近、日本の伝統音楽がポップやロックとミックスされていることについて、どう思いますか?

さっきお話した吹禅のように、宗教に使われていましたし、戦争で「がんばるぞ!」と気持ちを高めるためにも用いられていました。今は、祭りで使われるのが一般的ですね。神社や寺で使用された太鼓が、土地それぞれの特徴をもつようになっていったから、現在の太鼓の姿があるんだと思います。

ミックスすることに関しては、それをいやがる人もいますが、私は音楽家としてそれを求めるのは自然なことだと思います。自分の楽器で私もさまざまな音楽に挑戦したいですね。

 

−外国人として日本の伝統音楽を伝えることについてどう思われますか。

尺八の音楽に人種や民族は関係ないと思います。尺八の世界には「本曲」という、この楽器のためだけに作られ、かつては吹禅で使われた曲があるのですが、これには本人の曲「自分の曲」という意味が込められています。ですので、日本人の尺八奏者が築き上げてきた曲をただ上手に吹くのではなく、「自分の曲」を尺八で表現することが大切なんです。そのため、日本の伝統音楽を伝えるというよりは、尺八の教えが示すように、自分の音楽を伝えることが一番重要だと感じています。

 

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Photo: Rudi van Starrex

コンサートの抱負

−今回のコンサートの見どころと、在豪日本人に感じてほしいことは?

歴史ある「鼓童」の伝統的な音色と、新しい音楽に挑戦する「TaikOz」の革新的な音色の融合が一番の見どころです。また、私の尺八と鬼太鼓座のオリジナル・メンバーの息の合ったセッションもお薦めです。

日本人の皆さんの中には、こちらに来て日本人のアイデンティティーについて考えている人も多いと思いますが、自分のルーツを知りたいと思うのでしたら、ぜひコンサートに来てください。尺八や太鼓を聞いたら、何か答えが見つかるかもしれません。

 

太鼓のリズムや尺八の音色の中に流れる自然の息吹や諸行無常の観念、日本人としてのアイデンティティー、そしてリーさんをはじめとするパフォーマーたちの情熱を、このコンサートでぜひ体感してみてほしい。

*編注:禅宗で用いられ、いわゆる座禅に対して「弓道」を「立ち禅」、「尺八」を「吹禅」と言う。


国内6カ所で公演!

鼓童 & TaikOz in Concert

●ブリスベン

日時:9月15日(土)8PM

会場:Queensland Performing Arts Centre- QPAC, Cnr. Grey & Melbourne Sts., South Bank QLD

料金:$45〜90

Tel: 136-246

Web: www.brisbanefestival.com.au

●アデレード

日時:9月19日(水)、20日(木)6: 30PM

会場:Her Majesty’s Theatre, 58 Grote St., Adelaide SA

料金:$25〜60

Tel: 131-246

Web: www.bass.net.au

●キャンベラ

日時:9月22日(土)7: 30PM

会場:Canberra Theatre, Canberra Theatre Centre, Civic Square on London Circuit,

Canberra ACT

料金:$39〜70

Tel: (02)6275-2700

Web: www.canberratheatrecentre.com.au

●メルボルン

日時:9月24日(月)7:30PM

会場:Hamer Hall, Arts Centre Melbourne, 100 St Kilda Rd., Melbourne VIC

料金:$40〜75

Tel: 1300-182-183

Web: www.artscentremelbourne.com.au

●ニューキャッスル

日時:9月26日(水)7: 30PM

会場:Civic Theatre , 375 Hunter St., Newcastle NSW

料金:$52〜70

Web: premier.ticketek.com.au

●シドニー

日時:9月27日(木)、28日(金)7: 30PM

会場:City Recital Hall, Angel Place, Sydney NSW

料金:$50〜85、学校の団体1人$20

Web: www.cityrecitalhall.com

*上記のすべての電話番号・ウェブサイトは、チケット購入先


ライリー・リー(Riley Lee)

◎1951年アメリカ生まれ。現在、オーストラリアを拠点に活動する尺八奏者(大師範)。2代目酒井竹保や横山勝也に師事。講演活動を行いながら、映画『ファミリー・ツリー』などのサウンド・トラック製作に携わるなど、活動内容は多岐に渡る。

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