グループウェア最大手「サイボウズ」青野慶久社長、初来豪インタビュー


Photos: Naoto Ijichi

PR 初来豪インタビュー
青野慶久社長

業務効率化への最良のプラットフォーム
kintoneでオーストラリア市場に意気込み

スケジュール管理、タスク管理、業務報告など社内の業務の効率化を図るためのグループウェアのトップ・ベンダーとして知られるサイボウズ社の青野慶久代表取締役社長が、セミナーを開催するためシドニーを訪れた。2014年から3年連続で「働きがいのある会社」(100~999名部門、Great Place to Work(R) Institute Japanが実施)にランクイン、15年、16年は連続3位に選ばれるなど注目を浴びる同社社長にインタビューを行った。( 取材:馬場一哉)

──青野社長がサイボウズ社を立ち上げた動機には「一般的な働き方」への不満もあったのではと推察しますがいかがでしょう。

青野「おっしゃる通りです。以前働いていた会社では皆が協力的に働けていない点に不満を持っていました。新人時代、常に忙しくしている先輩が隣にいて僕も手伝いたかったのですがそれができませんでした。なぜならその先輩が何をしているのか全く知らなかったからです。情報が共有されてさえいれば新人でも協力することができたのではないか。そのような考えが僕の原点にあります」

──ご自身で会社を興そうと考えたきっかけは何だったのでしょう。

青野「ウェブの台頭ですね。それまでソフトウェアというのはパソコンにインストールするのが当たり前でしたが、ウェブが登場し、ブラウザでアドレスを入れれば簡単にサービスにアクセスできるようになった。これを知った時に、シンプルなグループウェアを実現できるんじゃないかと思い、いてもたってもいられなくなりました」

──なるほど。その後、あっという間に日本国内のグループウェア・トップ・ベンダーの企業へと成長、グローバル展開をされています。海外での主力商品「kintone(キントーン)」はどのような特徴を持った商品なのでしょうか。

青野「弊社ではもともとスケジュールを共有したり掲示板を立ち上げたりするいわゆるアプリケーションと呼ばれるレベルのグループウェアを提供してきました。しかし、グローバル展開するにあたっては日本の文化に依存したアプリケーションでは対応が難しいというのが実情でした。そこで開発したのがキントーンです。キントーンではグループウェアでよく使われる顧客リストや売り上げ管理、情報共有などの機能はテンプレートとしてそろっていますが、ユニークなのはそれらを自分たちでアレンジしたり新たなアプリケーションを作れるところにあります」

──ユーザーの思い通りのアプリケーションを作れると。

青野「そうです。もちろん新たなアプリケーションを作る場合には業務プロセスを見直し、どのような機能を実装するかなどある程度発想力が必要ですが作業自体はマウスでドラッグ&ドロップするだけなので難しくないです。お客様が思いつかれることのほとんどはキントーン上で実現できると思います」

オーストラリアは状況が整っている

──オーストラリア市場への進出に先駆け、すでにアメリカ、中国などでキントーンが導入されていると聞いています。

青野「あるアメリカの大手IT企業では同社の小売店舗のマネジメント・システムとしてキントーンを導入いただいています。それまでは世界中に点在する店舗スタッフのシフト管理にエクセルを使っていましたが、誰がいつどの部分を更新したか分からなくなったり、ファイルをコピーした瞬間にどっちがマスターなのか分からないなどといったトラブルが頻発していたようです。ところがオンライン上にデータがまとまっていれば、最新情報をいつでも得られますし更新履歴も残るので安心です。また疑問点があればそのままキントーンのコミュニケーション・ツールを使って質問することも可能になるということで有効利用して頂いています」

──全てワンストップで完結できるのはありがたいですね。

青野「はい。その他アメリカでは大手スポーツメーカー、宇宙産業など多くの企業に利用頂いています。中国では現地に展開している日系企業が主で650社ほど契約頂いています。例えばアサヒビールさんでは販促品の管理などにキントーンを使っているそうです。飲食店にアサヒビールを売り込む際にはジョッキやのぼりなど販促品を出すそうなのですがこれが100種類ほどあって管理がなかなか困難だったそうです。ビール・サーバーも値段が高いものなので管理を慎重にしたいということで導入頂きました。またキントーンの動きとして面白いのはユーザーの4分の1は社外の人とのやり取りで使っているということです。これまで情報共有というと組織の中で閉じたものだったのですがIDを社外の人に発行することで関わる全員で1つの情報を共有できるわけです」

──なるほど。1つのデータベースを関係者全員で共有できるのは大きいですね。

青野「はい。関連する人全員がデータを共有していれば、例えば商品の発注作業などが必要なくなります。商品の在庫数が少なくなってきた時点で現場判断で商品を発送するなどプロセスのオートメーション化が可能になります。これも面白い特徴ですよね」

──素晴らしいです。そんな中次の国外市場としてオーストラリアに目を付けた理由をお聞かせください。

青野「僕たちが海外市場で見ているのはITの先進性と組織マネジメントのニーズなんです。オーストラリアの場合、組織マネジメントのニーズは相当高いと思います。人件費が上がっているため人材を大量に活用できないですし、長時間働く習慣もない。そうなると限られた時間の中で人材をうまくマネジメンとしないといけません。またITの先進性に関しても高いですし、クラウドというテクノロジーに対しても嫌悪感がない。オーストラリアは状況が整っています」

日本人の働き方の問題点

──サイボウズ社では、6年間の育児休暇制度や在宅勤務、時間制限のある働き方などさまざまなワーク・スタイルが用意されており、古い価値観に一石を投じていると感じます。

青野「日本では子育て後の女性の職場復帰が難しかったり、男性が家庭を顧みずに長時間労働で何とかまわしているというような状況が今でもありますが、昨今その幣害がよく指摘されるようになりました。そして各企業がその問題を考える時に限られた時間の中で同じ効率を上げるにはシステムが必要だと気づくと思うんです。そこでようやく僕らの出番かなと思っています」

──そういった点で企業が変わっていかないと今後は社員が定着しないような時代になってきていますね。

青野「良い働き方を提供できない会社が長く続くはずがないとみんな気づき始めてます。私は企業の方には今変えないと危ないですよと言っています。今新しい働き方にチャレンジすれば、あの会社は新しい働き方をさせてくれるということで若い人も注目するし女性も集まります」

──なるほど。しかしながら業務を効率化し時間を短縮化することは理想ですが、その分仕事が停滞するようになっては問題です。

青野「そうですね。仕事はできていないけれどもさっさと定時に帰ってしまい、制度を盾に権利を主張するというような人ももちろんいます。その点でも僕らはお役に立てます。誰が今どのタスクをやっていて、それがどこまで進んだのかを全て履歴に残すことで、その人の仕事内容が明らかになります。ここを明確にしておかないと『頑張ってます』のひと言でごまかされてしまいます」

──いわゆる「見える化」ですね。サイボウズ社では在宅勤務制度も取り入れているようですが、これもまた管理が難しいところだと思います。

青野「在宅勤務を認めるには社内カルチャーとしてごまかしは許されないという空気を徹底的に作ることが大前提になります」

──日本の終身雇用制度に関してどう思われますか。

青野「終身雇用自体はそんなに大きな問題ではないと思います。良くないのは年功序列制。同じ年に入社し同じように給料が上がっていく。このシステムがあることで労働の柔軟性が生まれづらくなっていると思います。仕事ができない人間がずっと会社にしがみついているという状況もここに原因があります。また正規・非正規の問題もあります。同じ仕事、同じ時間、それでも正規の人間の方が給料が高いというのはおかしい。そんなことをやっていると競争力がどんどん下がります」

──完全実力主義にする場合の問題として年配の方たちの仕事のチャンスが減ってしまうことが指摘されると思います。

青野「仕事をシフトしていく必要はあるので例えば再教育の機会を増やさないといけないと思います。この辺はインターネットが支援してくれることが多く、教える人と教えられたい人のマッチングをすれば良いと思います。また年齢層が上の人の給料を下げられない理由の1つとして子育てがあります。これは公的資金が少ないのが問題です。年功序列を壊すともに公的な教育資金をバックアップする必要があります。この両立ができるかどうかですね」

──青野社長は総務省ワーク・スタイル変革プロジェクトにも外部アドバイザーとして関わっておられます。そういった点では政府にも声を届けられます。

青野「そうですね。グローバル展開している日本のソフトウェア企業なのである意味日本政府にものを言いやすい立場ではあります。私が内圧として、日本を離れられている皆さまが外圧として、両面から政府に働きかけられれば日本も変わっていくと思います」

──海外在住者として私たちもできることをしていきたいと思います。最後に記事を読んでいる読者に向けてひと言いただけますでしょうか。

青野「オーストラリアは働き方に関するシステムが非常に多様性に対応している素晴らしいと思います。もし日本で悩んで悶々としているのであればぜひ行ってみることをお勧めしたいです」

──本日は貴重なお話をありがとうございました。

(7月19日、シドニーで)


青野慶久(あおの・よしひさ)
1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て1997年8月サイボウズを設立。社内のワークスタイル変革を推進し、自身も3児の父として3度の育児休暇を取得するなど「働き方」の変革を目指す。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザー、CSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)

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