ヒップホップMC・音楽プロデューサー VERBALさん(m-flo/TERIYAKI BOYZR)さん

来豪インタビュー
サーファーズ・パラダイスでのイベントではDJを中心にm-floの楽曲も披露し、会場を沸かせた

来豪インタビュー
「型にはまらず進化し続けたい」
ヒップホップMC・音楽プロデューサー
VERBALさん(m-flo/TERIYAKI BOYZR)

インタビュアー=斎藤和子 
取材協力=メモリー・プロダクション 
写真=Jay Cruz Photography (Tel: 0401-061-775)

 エム・フロー(m-flo)やテリヤキ・ボーイズ(TERIYAKI BOYZR)のメンバーとして活動するほか、映画監督やジュエリー・ブランドを手掛けるなど、日本のヒップホップ界をベースにマルチな活躍を見せるバーバル。日本語と流暢な英語をミックスした彼のリズミカルなラップは、大学・大学院時代を米国で過ごしたバイリンガルならでは。その彼が10月17日、サーファーズ・パラダイスで開催されたメモリー・プロダクション主催のライブ・イベントに登場。同イベント直前に行った本紙独占インタビューで、ヒップホップに対する熱い思いを語った。

 

小学生でヒップホップに目覚める
 トレードマークのサングラスをかけずにインタビュー会場に現れた彼が、「サングラスをかけない方が逆に誰にも気付かれないんで(笑)」と気さくに話しながら、うっすらと照れ笑いを浮かべた。飾らず、自然体で、柔らかな物腰から優しいオーラが放たれている。ヒップホップ界の第一線で活躍するアーティストが、こんなにも穏やかな空気感を持っているのかと少し驚かされつつ、まずは彼がヒップホップに興味を持ったきっかけからインタビューをスタートさせた。
ーー小学校5年生の夏休みに親にボストンに連れていってもらって、小中学生が参加するYMCAのサマーキャンプに参加したんです。その時に、僕と同い年くらいの子たちがダンボールを敷いて、当時流行っていたRUN-D.M.C.の曲でブレイクダンスを踊ったりしていたんですね。僕より年下の子でも、おしゃれなネックレスとかをしていて、ませていて大人っぽいし、日本で漫画を読んでいるくらいだった僕にとっては、“何だこれー!!”みたいな。すごい衝撃を受けました。

 

デビューが遅れたことに今は感謝
 これをきっかけにヒップホップに魅了された彼は、以来、自身で英語のリリックを書き、ラップをするようになる。高校時代には、後に結成されることになるプロデュース・ユニットm-floのメンバー、タク(☆Taku Takahashi)とライブ活動を開始させ、この時既に、複数のレコード会社からデビューのオファーを受けていたという。しかし、彼は大学進学を決意する。
ーーそれこそ今は、いわゆるクラブ系と言われるアーティストが結構増えてきていますが、この時はラップやダンス・ミュージックを引用したJポップなどはあまりなく、親からしても「それで食べていけるのか?お前、ばかか?」みたいな時代でした(笑)。エグザイル(EXILE)のヒロ(HIRO)さんがまだズー(ZOO)にいた時ですよ。それで大学に行くことに決めました。
 でも、その当時にデビューしていなくて良かったなと思うのは、業界的にどうという以前に、自分自身がまだ若過ぎて、価値観や道徳的なところで心の準備ができていなかったと思うんです。だから1回世界を見てみて、就職もちょこっとして、大学院に行った後で、“やっぱり音楽好きだわ”と心の底から思えてデビューできたのは、本当に良かったと思っています。

 

日本語の堅さをうまくアレンジ
 大学ではマーケティングや哲学を学び、卒業後には1度、サラリーマンも経験。その後、大学院で神学を学んでいた彼に再びメジャー・デビューの話が浮上する。交流を続けていたタクが手掛けた楽曲に彼がラップ(英語)を入れた作品が、現在の所属事務所の社長、浅川真次氏に評価されスカウトされたのだ。ここでm-floが誕生する。それまでずっと英語でリリックを書いていた彼が、初めて日本語を混ぜ合わせていく。
ーーもともとヒップホップってアメリカのジャンルなので、もちろん英語が乗るのに適したビートを使ってラップをしたりしているわけです。だから日本語になった時点で違和感があるのは避けられない。美しい言葉ですけど、ラップにすると説教くさくなるというか、どうしても堅くなってしまうので。それをリズミカルにするために、僕は、日本でインターナショナル・スクールに通っていたころの仲間うちの喋り方をそのままリリックに落とし込んでいくような感じで、うまくアレンジするようにしました。

 

ヒップホップはもっと盛り上がるはず
 こうしてメジャー・デビューを果たすと、彼はみるみる活躍の場を広げ、日本のヒップホップ・シーンを盛り上げていった。しかし、流行の入れ替わりが激しい日本でヒップホップ熱を保つのはたやすいことではない。2008年に初監督を務めたドキュメンタリー映画『DEAD NOISE』では、「日本のヒップホップ界は今後どうなるのか?」というテーマで、その実態をまじめに掘り下げている。その彼に今の率直な思いを聞いた。
ーー本場と同じようにやらないとリアルじゃないとか言う人もいるんですけど、日本とアメリカでは土台が違います。言葉も文化も異なるアメリカのやり方をそのまま日本に持ってきても、うまくいくはずないですよね。
 もうちょっと頭良くやっていこうよ!って、僕はよく言うんですけど、女の子と付き合うのと一緒だと思うんです。例えばブラジル人の女の子と付き合ったら、ここは日本だから日本語を話せと相手に要求しても無理があるし、逆にブラジルの文化をすべて理解しろと言われても困る。お互いに譲り合って、中間点でうまくリレーションシップを保っていく必要があるわけです。
 ヒップホップも、アメリカではああだけど日本ではこうした方がいいよね?というオルタナティブな提案をしていけたらいいと思います。そうすれば、もっと楽しく盛り上がれるジャンルになるはずだと、僕は思っています。

 

型にはまらないファッションが好き
「心はいつもBボーイ」と確言する彼の首元には、ラッパーのステータスとも言えるジュエリーが輝いている。自分だけのオリジナルが欲しいという思いから自作するようになり、その趣味が高じてジュエリーのデザイン・ブランドも手掛けている彼。ファッション・センスにも定評があるが、そこにあるこだわりとは?
ーー英語で言ったら“Don’t take yourself too seriously”。マジ過ぎるとあんまりおもしろくないというか。世界で認められている人って、どこかひねりを入れていたり、ガス抜きのエッセンスがある人だなって思うんですよね。今日の僕の服装で言ったら、全身Bボーイだけど靴だけロックっぽいみたいな。そういう“崩し”があるファッションが好きです。型にはまらないようにしたいといつも思っています。

 

ステレオ・タイプを崩して進化し続けたい
 最後に、生粋のBボーイ、バーバルに今後の目標を聞いた。
ーー常に新しいものを取り入れて進化していきたい。そうして自分の好きなヒップホップをもっと向上させていきたいと思っています。あと今、KOZMというエージェンシーを作っているんですけど、若いアーティストにもチャンスがあるような土台を作りたいと考えています。日本の音楽業界とは契約のシステムからして全く違う、みたいな、そういうところから全部攻めて、とにかく何に対してもステレオ・タイプを崩していきたいというのが今後の目標です。
 インタビューを終えて、彼の放つトゲのない柔らかなオーラの要因が、彼が持つ広い視野と、自身がこよなく愛するヒップホップ界をも客観視できるという、偏りのないバランス志向にあるのだと気付かされた。彼の音楽やファッションが多くの人に受け入れられるのは、聞く人、見る人に、その心地良い“バランス”の良さが伝わるからではないだろうか。まずはステレオ・タイプを崩し、偏りのないニュートラルな状態にしたものに、新しいエッセンスを加え、さらに勝るものを生み出して行く…。このサイクルで、彼がまたどんな心地よい“バランス”を生み出し、各シーンに注入していくのかが楽しみだ。

 

お父さんでも分かる ! ヒップホップ用語集
*Bボーイ
HIP HOP カルチャーに興ずる者。
*ヒップホップ
アフロ・カリビアン・ヒスパニック系アメリカ人から生まれたストリート文化。ちなみに、ラップ、DJ、ブレイクダンス、グラフィティ(路上のスプレーアート)などの特徴がある。
*ブレイクダンス
ストリート・ダンスの1つ。逆さの状態のまま頭で回る(スピン)など、アクロバティックなものが印象的。
*Run-D. M.C.
アメリカのヒップホップ・グループ。1980年代初期のヒップホップ・ブームの火付け役。


来豪インタビュー

PROFILE
VERBAL(バーバル

●Producer/MC/DJ/Designer。m-floでの活動のほか、独自のコネクションを生かして数多くのアーティストとコラボレーション。“超豪華”ラップ・グループTERIYAKI BOYZRのメンバーとしても活躍しており、Pharrell、Kanye West、will.i.am(BLACK EYED PEAS)など、海外のアーティストとも交流が深い。昨年よりDJとしても飛躍を遂げ、そのスタイルはファッション界からの注目も熱く、ジュエリー・ブランド「ANTONIO MURPHY & ASTROR」、そして「AMBUSHR」のデザインも手掛ける。また、初の映画監督にも挑戦しており、今後もミックスな感性を武器にあらゆるフィールドでの活躍に期待が集まる。新たに立ち上げた KOZM AGENCY の代表として、MADEMOISELLE YULIA を筆頭にさまざまなアーティスト/プロデューサーのマネジメントも始める。
www.m-flo.com
www.teriyakiboyz.com
www.ambushdesign.com
www.twitter.com/ambushdesign
www.kozm-agency.tv
バーバルさんから日豪読者へメッセージ
今回、ゴールドコーストに20年ぶりにやって来ました。また来たいと思っているので、ぜひm-flo、TERIYAKI BOYSRを広めてください。よろしくお願いします !

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