前田敦子主演作、公開記念!

 

映画「もらとりあむタマ子」主演

前田敦子さんインタビュー

 

 6月4日から開幕する第61回シドニー映画祭では、9・14日に日本映画「もらとりあむタマ子」が上映される。監督は映画「リンダ リンダ リンダ」「天然コケッコー」などを手がけた山下敦弘氏。主演は国民的アイドル「AKB48」に所属していたことでも知られる、前田敦子さんだ。ちなみに前田さんは、2013年8月にBSジャパンで放送されたドキュメンタリー番組の収録で、QLD州とTAS州を訪れている。本紙は「もらとりあむタマ子」の上映に先駆け、映画の魅力や、オーストラリアの訪問先での出来事などについて、前田さんに話をうかがった。

季節とともに変化する人の心を描く

「モラトリアム(moratorium)」という言葉には、「支払猶予」「製造・使用・実施などの一時停止」などの意味があるが、映画「もらとりあむタマ子」は、もう1つの意味「肉体的には成人しているが、社会的義務や責任を課せられない猶予の期間」の状態にある、大卒女子の実家暮らし生活を、四季を通して描いたものだ。

大学を卒業した主人公タマ子は、秋に父が暮らす実家に戻ってきたが、マンガを読んではうたた寝をして、父の家業であるスポーツ店の手伝いもせずに、毎日ゴロゴロしている。ニュース番組を見ては、「だめだなぁ、日本は」と毒づく。そんな状態を見た父は、「おまえがだめなんだろう」と言いながらも、タマ子の面倒を見ている。しかし、父の再婚話が持ち上がったり、近所の中学生が少しずつ大人になっていったりする様子を見ているうちに、タマ子も少しずつ変わっていく――。

もともと同作品は、音楽専門チャンネル「MUSIC ON! TV」で、季節ごとに放送される映像プロジェクトとして企画がスタートし、短編ドラマ「秋と冬のタマ子」を経て、長期映画化されたという経緯がある。そのため、季節ごとの短編ドラマを観ているような、遅過ぎず早過ぎない、独特なまったりとしたテンポでタマ子の変化をとらえている。

「誰でも“モラトリアム”の時期はあると思う」

映画の中では、タマ子の食べるシーンが印象深いと言われている。その無心に食べ物を口に運ぶ様子は、観ている者自身の“素”の状態を映し出しているようで、「実家に帰ると、こうなるよね」と共感した人が多いようだ。

一方、タマ子を演じた前田敦子さんにとって、一番心に残ったシーンは何だったのだろう。


「冒頭に出てくる、うつ伏せで寝ているシーンです。撮影中は周りの人たちから『タマ子は普通のあっちゃんだね』と言われることが多かったですね(笑)」

その冒頭の映像は、ちょうど実家に帰ってきたばかりのタマ子が朝、布団にうつ伏せになって寝ており、部屋の外から父に起きるように声をかけられるが唸って寝返りを打ち、また眠りに落ちるといったもの。まさに、タマ子の“モラトリアム”が始まった瞬間だ。

この作品は、見る者によって感じ方が大きく異なる。仕事に就き、毎日忙しい日々を送っている人にとっては歯がゆく感じ、就職活動に苦戦する人はこの状態を切実にとらえるかもしれない。しかし観る者の状況がどうであれ、タマ子はどこかしら共感できる“何か”を秘めており、それが多くの人の心をつかんでいる。

前田さんにも意見を求めたところ、「私も実際に演じてみてタマ子に共感できる部分がありました。誰でもタマ子みたいな、モラトリアムの時期があるかと思います」と話してくれた。次のステップに進むための“小休止”は、確かに多くの人が経験することなのかもしれない。

山下監督の世界観が引き出すタマ子の素顔

同作品のほか、前田さんは山下敦弘監督(写真左下)の手がけた映画「苦役列車」(2012)にも出演している。その時のことも含め、山下監督の作品について、他誌で「山下監督の映画の世界観が好きです」と前田さんは話していた。いったい、どのような世界観なのだろう。また、監督についてはどんな印象を持ったのだろう。

「女の子をキラキラさせて、かわいく撮っている作品が多いですね。その中でも『天然コケッコー』が大好きです。山下監督の印象ですが、監督は人見知りの部分があるなど、私と少し似ています。ですのでとてもいい距離感でお仕事ができました。一緒にいて心地良い方だと思います」

タマ子を演じるにあたり心がけていたことについても聞いてみると、「特に役作りということはしていません。現場に入って、監督と一緒にタマ子を作り上げていった感じです。肩肘張らずに現場に入っていました」と教えてくれた。2人の波長が合ったからこそ、タマ子の素顔を映像にできたのだ。

オーストラリアでは野生動物に遭遇

前田さんは、昨年8月のテレビ番組「前田敦子 希少動物の大地、オーストラリアをゆく」の収録のため、QLD州とTAS州を訪れた。ブリスベンや郊外のイプスウィッチ、タスマニアのクレイドル・マウンテンなどに行き、大自然の中、コアラやカンガルー、ウォンバット、タスマニア・デビルなどと触れ合い、野生動物保護の現状について学んだ。この収録から感じたオーストラリアの印象について聞いてみた。「日本では見られないような貴重な動物がたくさんいました。現地の方々やオーストラリア全体で、動物に対してのケアや制度を充実したものにしているという印象を受けました」

また、オーストラリア滞在中で一番心に残った出来事についても聞いてみると、「街路樹に普通にコアラがいたのには驚きました!」と話してくれた。

野生動物保護の大切さや、大自然とともに生きること、そしてそのために尽力する現地の人々の努力を番組を通して日本の人々にも届けることができたという。

舞台という新たな挑戦に挑む

前田敦子さんがブレークしたのは、2012年まで所属していたアイドル・グループ「AKB48」がきっかけだった。“会いに行けるアイドル”というコンセプトの下、東京・秋葉原に設置された専用劇場でチームごとに日替わりで公演を行うという活動を行っていたところ、09年ごろからテレビ番組などにも出演するようになり、知名度は上昇。次第に国民的アイドル・グループへと成長した。前田さんは、その中心メンバーの1人として人気を集めていた。

そして、12年にAKB48を“卒業”。それ以降は、映画や音楽、舞台などのソロ活動を行っている。映画「もらとりあむタマ子」は、卒業後初の主演映画だった。

AKB48を離れてから、芸能生活には何か変化があったのか尋ねてみると「特に大きな変化はないですね。普段通り、意識せずに過ごしています」と話している。

現在は、東京・渋谷にある大型複合施設「Bunkamura」の25周年を記念して7月7日~8月3日に行われる、演劇作品「太陽2068」に向けてリハーサルに没頭しているという前田さん。この作品は、芸術監督の蜷川幸雄氏と気鋭の劇作家・前川知大氏のタッグで行われる。出演者は、前田さんのほかに、綾野剛さん、成宮寛貴さん、中嶋朋子さん、六平直政さんなどの名俳優で構成されている。今の気持ちを前田さんにうかがった。

「今度、舞台に初挑戦させていただきます。初めてでどんな風になるか、今から楽しみです。蜷川さんに委ねて、全力で取り組みたいと思います」

“女優、前田敦子”として新たなスタートを切り、その道を突き進む前田さんから、最後に在豪日系コミュニティーに向けてメッセージをいただいた。「この作品は、とても見やすい映画です。ぜひ皆さんで楽しんでください」

心が温まる“もらとりあむ女子”の物語は、ぜひ映画館で。

 

(取材・文=編集部)

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