【来豪インタビュー】日本旅行代表取締役社長 堀坂明弘氏

来豪インタビュー

日本旅行代表取締役社長

堀坂明弘氏

ナンバー・ワン戦略国としてオーストラリア旅行に注力していきたい

インタビュー:馬場一哉

Photo: Naoto Ijichi
Photo: Naoto Ijichi

日本で最初の旅行会社として「赤い風船」などのパック商品で人気を博す株式会社日本旅行では、今後4年間、オセアニア市場を「戦略国」の1つと位置づけ、オーストラリア、ニュージーランド市場に力を注いでいくという。その一環で8月中旬、日本旅行本社より堀坂明弘代表取締役社長がシドニーに視察に訪れた。同社がオセアニアに注力するその理由とは。堀坂社長に話を伺った。

オーストラリア訪問で得た感触

──御社は、もともとヨーロッパ市場を重点的に売って来られていますが、今回オーストラリアを戦略国に設定した利用はどこにあるのでしょうか。

「オーストラリアにはすばらしいポテンシャルがあります。私自身は、昨年初めてオーストラリアを訪れたのですが、ヨーロッパのような雰囲気のある街並みで趣があり、街中も非常にクリーン。それでいてちょっと郊外に行けば大自然という環境がすばらしい。極めて魅力的なデスティネーションであることに加え、安心・安全という要素も大きいです。近年ヨーロッパはテロへの不安を持たれる方が多く、この安心・安全という要素は非常に重要です」

──航空便の増加も日豪間の行き来を活性化する後押しとなっていますね。

「全日空、日本航空も一定の便数を飛ばしていますし、カンタス航空も路線が充実しています。日本航空は成田からメルボルンに直行便を飛ばしますし、期間は限られていますがカンタス航空も関西国際空港との間に週3便を飛ばすことになりました。我々としてはこれらの路線をしっかりと活用させて頂き、日豪間の双方往来の促進に注力したいと考えています」

──今回、カンタス航空も訪問されたと聞いています。

「カンタス航空は路線として最も充実しています。今回は私たちが持つ強みについてプレゼンテーションをさせて頂きました。関西への直行便が復活するということで、弊社が持つ西日本エリアのネットワーク、JR西日本などとのコネクションを活用できる点などを共有しました。具体的な提携の形についてはこれから詰めていくこととなります」

──関西への直行便ができたことで、堀坂社長のバックボーンが全面的に生きる形となりましたね。

「私のJR西日本時代の経験が生きるのはもちろんのこと、弊社は関西、中国、北陸、九州にも幅広く店舗ネットワークを持っています。インターネットに押されてはいるもののフェイス・トゥ・フェイスのプロモーションができるのは我々としては大きな強みです。ただ、カンタスの直行便も週3便ですから、これから真価が問われるでしょう」

旅行会社の果たす役割

──個人がインターネットを使って旅行の手配をする時代になりました。それに伴い、旅行会社の立ち位置も変わってきていると思います。

「個人手配の流れというのは避けられないものですし、その中で我々が果たす役割を今一度考える必要があります。個人のお客様に対しては、やはり安心・安全をどのように提供できるか。自分たちでは行けないような価値のある場所に我々を介して行けるようにするなど、いかに付加価値を高めていけるかという点が課題として挙げられるでしょう。また、今後旅行会社が取り組みを強化していかなければならないのはMICE(マイス)や、教育旅行などにおいてしっかりとコンサルティングをしていくことだと思います。オーストラリアと日本の間には姉妹都市が108ありますし、それだけでもさまざまなテーマでの旅行をクリエイトすることが可能です。

オーストラリアからの訪日旅行に関して言えば、これから日本ではオリンピックやラグビー・ワールド・カップ、ワールド・マスターズ・ゲームなど大きなスポーツ・イベントで否応なしに人が訪れます。その際にどうやって日本の各地をより積極的に回ってもらうかが重要になります。そういった中で姉妹都市というのは大きな流れを生み出せる要因になると考えています。スポーツ、文化というような切り口で交流をどうやって促していくか。それが旅行会社にとっての大きなミッションでしょう。今は逆にチャンスだと思いますね」

──旅行商品の提供ではなく、旅行というカルチャー自体を活性化させていくということですね。

「価値ある場を提案していくということも重要ですね。教育旅行も単に物見遊山ではなく、どういう価値を提供できるか。語学交流などもそれには含まれるでしょう。オーストラリアは親日国ですし、安心してサービスを作ることができるので非常に魅力的です。何を体験するか、何を学べるか、そういった新たな切り口の提案が旅行会社には求められると思います」

日本国内におけるインバウンド対応

──大きな国際的イベントを前に、外国人旅行客の受け入れの問題が日本では浮き彫りになってきています。

「よく言われるのはインフラの問題です。かなり急速に改善されつつありますが、Wi-Fiスポットが足りない、標識などサインが分かりづらい、多言語の表示、案内放送など挙げれば色々あります。その中で私が心配しているのは民泊の議論。例えば古民家や町屋の再生などであれば日本の古いカルチャーを感じられるという点でも良いと思うんです。ただ、マンションの空き部屋の貸し出しなどは、住人間のトラブルの問題なども含めてよくよく考えていなかければならないでしょう。せっかく日本に来てもいわゆる情緒も何もありません。供給が足りていないので仕方ないとも言われますが、私は質の面を非常に憂いています」

──供給が足りない一方でつぶれる宿泊施設も後を絶ちません。

「経営の仕方にさまざまな工夫をされていると思いますが、大きいのは2013年に施行された改正耐震改修促進法ですね。そこで体力的に対応できない所が多く出てきてしまった。少しお金を投入すれば再生できる所はたくさんあったと思います。いずれにせよ、今後も外国人観光客は増えていきますので受け入れ体制についてはしっかりと対応しなければならないでしょう。日本各地には魅力的なデスティネーションがたくさんありますし、日本の隅々まで外国人客が分散して滞在するようにならないともったいないと思います。そのためにも、細かく整備していかなければと思いますね」

──さまざまな課題がありますが、1つずつクリアしていくしかないですね。最後に弊紙の読者にメッセージをお願いします。

「デジタル化によっていくら世の中が便利になっても、さまざまな場所を訪れ、自分の目で景色を見て、フェイス・トゥ・フェイスで交流を行うなどリアルな体験は大切です。何よりとても楽しいものです。それを、それぞれの世代やステージなどで行うことを考えると時間はいくらあっても足りないくらいだと思うんです。そのために我々旅行会社に何ができるか、今後もしっかりと考えていきたいと思います」

──本日はありがとうございました。(8月16日、シドニー市内シャングリラ・ホテルで)


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<プロフィル>
ほりさか・あきひろ
1979年(昭54年)慶大経卒、日本国有鉄道入社。JR西日本執行役員総務部長、取締役兼常務執行役員営業本部長などを歴任し、沿線の観光振興などの事業を担ってきた。2016年6月から現職

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