ダンスで豪州1を目指すあの人にインタビュー

ユキノ・マクヒューさん

So You Think You Can Dance Australia
豪州1を目指す日系人ダンサー

 

 オーストラリアのトップ・ダンサーを発掘する人気TV番組「So You Think You Can Dance Australia」で、シドニー在住の日系人ダンサー、ユキノ・マクヒューさん(20歳、別名:八木由貴乃)がトップ・ダンサー20に選ばれ、現在は視聴者投票による勝ち抜き選で活躍している。得意な分野はヒップホップ。“芯の強さ”が感じられるパワフルなダンスが印象的なユキノさん。その素顔に迫った。(取材・文=森あずさ)

 

ヒップホップとの出会い

オーストラリア人の父と日本人の母を持つユキノさんは、茨城県出身。8歳になるまで日本で過ごし、父の故郷であるオーストラリアに移り住んだ。しばらくの間、ゴールドコーストで暮らし、15歳の時にダンスを極めるため、親元を離れて単身シドニーへと移動。パフォーミング・アーツ専門の高校に通うようになった。両親と姉の奈津実さんは語学学校経営のため日本に残り、ユキノさんはシドニーでホームステイをしながら通学することになった。現在はシドニーのランドウィックで暮らしている。

得意とするダンスのジャンルはヒップホップ。だが最初はクラシック・バレエを習っていた。

「6歳の時、小さな女の子がチュチュを着ているのを見て、うらやましくなり『お母さん、私もバレエ踊りたい!』と言ったのが、ダンスを始めたきっかけです。実際に習い始めたら、練習ではチュチュじゃなくてレオタードを着ることに気付いて、ちょっとがっかりしましたけどね」

ヒップホップに目覚めたのは、13歳の時。型にはまった動きや音楽が特徴のクラシック・バレエよりも、独創性のあるダンスを求めていたユキノさんは、自分の好きな曲に合わせて自由に表現できる、ジャズ・ダンスやヒップホップに挑戦するようになった。そしてある日、人生を変える出来事が起こった。

「私のダンス・クラスに、あるヒップホップのダンサーが来てくれて、初めてすごいパフォーマンスを見ました。その時、『これだ!これがしたいんだ!』と思って。それからヒップホップにのめりこんで、15歳になるころには、ヒップホップ・ダンサーと名乗るようになりました。ちなみに私が影響を受けたそのダンサー、ジョエル・ラスムッセンは、今期の『So You Think You Can Dance Australia』の競技者の1人なんですよ。すごい運命ですよね」

 

芸者がインスピレーションに

同番組では、国内の多くの応募者の中からオーディションで100人を選び出し、そこからさらにふるいをかけてトップ・ダンサー20人を選出。2月末からは毎週、視聴者による人気投票を行い、票数が少ない競技者から1人ずつ落としていく仕組みになっている。3月12日時点では、ユキノさんは素晴らしいパフォーマンスで勝ち残っている。

番組の見所は、競技者の持ち味が生かされたダンス・パフォーマンスが見られることだが、実はもう1つの醍醐味がある。それは、クラシック・バレエのダンサーが、サルサやヒップホップを踊るなど、競技者の“通常のスタイル”とは違うダンス・ジャンルでのパフォーマンスが見られること。人気投票が始まってすぐ、ユキノさんもジャズ・ダンスに挑戦することになった。

鑑賞する側にとっては、それぞれのダンサーの違った一面が見られてとても興味深く感じるものなのだが、踊る側にしてみると、実はとても過酷なことでもある。得意でないダンス・ジャンルの振り付けを、たった1週間で覚えて“自分のもの”にしないといけない場合は特にそうだ。

「異なるジャンルのダンスを踊ることは大きな挑戦です。ジャズ・ダンスの時は、ステップがすごく速かったですし、女性らしく踊らないといけないことに、とても抵抗を感じました。私自身、男っぽいし、いつも男の子っぽいスタイルで踊っているので。どうやったら女性らしく見えるかな、と研究しましたね」

ジャズ・ダンスを踊った時のユキノさんは、真摯な男性に惹かれていく、おちゃめなホテルの係員役で登場。光沢のあるサテン生地の真っ赤な制服にミニスカート、というガーリーな出で立ちで、ユキノさんのスタイルとは正反対のものではあったが、ステージでは彼女自身の“芯の強さ”が感じられるパワフルな踊りを見せ、観客を驚かせた。そのインスピレーションは、「芸者」だった。

「美しく女性らしいのに、女性の強さのような湧き上がるエネルギーを感じられる、日本の芸者をお手本にしていました。日本人のお母さんの背中を見て育って、日本的なものに影響を受けるようになったのかもしれないですね」

普段ヒップホップを踊っている時でも、日本の慣習がユキノさんのはつらつとしたダンス・スタイルに表れているとも言う。

「日本語で『あ!そうだよね、うんうん!』と、生き生きと話す習慣がありますよね。そのエネルギーが、ダンスににじみ出るのだと思います。また、速くてキレのあるステップをこなす時、母から『忍者みたいね』と言われて、『私って日本人なんだな』と改めて思うこともありますね」

 

人を尊敬し自分に誇りを持つ

番組前半のソロ・ダンスで、ユキノさんは多くの観客を圧倒した。テーマは、東日本大震災。震災直後、茨城県に暮らす家族としばらく連絡が取れず、電話がつながった時には、不安を隠しきれない姉からの言葉を聞いたユキノさんは、その当時の気持ちをダンスで表した。幼少時代に過ごした懐かしい日本を「テディ・ベア」に例え、それを握り締めながら気持ちと体が動くまま、踊った。

「この番組では、メッセージ性のあるダンスを披露します。多くのダンサーは、彼氏と別れて悲しくなった話など、『自分はこんなに悲しかったんだ』というストーリーにしていますが、自分の体験した悲しい話で人を泣かせて、それを自分の利益にするのは、自己中心的な行為だと感じています。私は今回の踊りで、自分のちっぽけな悲しみよりも、世界ではもっと大変なことが起こっていること、今も困っている人がたくさんいて、助けを必要としていることを伝えようと思いました」

最後にオーストラリアの日系コミュニティーにメッセージをいただいた。「日本人には、人を尊敬して常に向上を目指す心がありますよね。でもこの大会を通して、武士のように、自分を誇りに思うことも大切だと学びました。私が日本人だからこそ、そう気付けたのかもしれません。日本文化を背景に持って生まれて本当によかったです」

素晴らしい技術を持つダンサーはこの世に五万といるが、ユキノさんのように、心に響く踊りができる人間はなかなかいない。豪州だけでなく、世界で活躍するダンサーになる日もそう遠くはないはずだ。

ユキノさんを応援しよう!

「So You Think You Can Dance Australia」は毎週木曜日午後7時半からネットワーク10で放送。ユキノさんに投票する際は、電話(1902-555-509)をかけるか、携帯電話のテキスト・メッセージに「Yukino」と打ち込み受付番号(1977-10-10)に送信すること。

■So You Think You Can Dance Australia
日時:毎週の木曜7:30PM
Web: tenplay.com.au/channel-ten/so-you-think-you-can-dance-australia

 

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