【新年恒例企画】回顧と展望2016/菊井隆正(会計・税務)

新年恒例企画 回顧と展望2016
各分野をクリック▶▶▶ 連邦政局
ナオキ・マツモト・コンサルタンシー
松本直樹
日豪ビジネス
日本貿易振興機構(ジェトロ)
シドニー事務所長 平野修一
豪州経済
時事通信社シドニー特派員
新井佳文
為替
三菱東京UFJ銀行
オセアニア総支配人兼シドニー支店長
桝谷亨
会計・税務
EY ビジネス・サービス
アジア太平洋地域統括/パートナー
菊井隆正

会計・税務

EYジャパン・ビジネス・サービスアジア太平洋地域統括/パートナー 菊井隆正

EY ジャパン・ビジネス・サービス
アジア太平洋地域統括/パートナー

菊井隆正

プロフィル◎豪州国内で約20人の日本人スタッフを抱える世界4大会計事務所の1つEYのアジア・パシフィックおよびオセアニア地域日系企業担当部門代表。今年で在豪20年余り。常に監査、会計、税務から投資まで広範囲にわたる最新情報を提供することで、オセアニアで活躍する日系企業に貢献できるよう努めている。

引き続き税制改革が注目を集める年に

2015年はオーストラリアの経済改革の議論が本格化し、改革の必要性を強く認識させられた年といえる。下落し続ける資源価格に伴う景気減速と減少する国民所得、恒常的な財政赤字、高コスト体質による競争力低下など多くの課題を抱えているにもかかわらず、これまで踏み入った改革議論が先送りされていた。昨年9月のターンブル新首相就任で変化の兆しが現れ始め、生産性向上に向けた構造改革や国際競争力を取り戻すための議論が真剣に行われるようになった。そういった動きがオーストラリア経済の資源から非資源分野へのシフトを後押しし、今後政府が経済の再生を成し遂げられるかが課題である。以下日系企業に影響を与えた15年の法規制の変更を幾つか紹介し今年の見通しについて簡単にコメントしたい。

税制改革は構造改革の中心的な政策手段となる。個人や企業に課される高税率や非効率な税制は生産性向上の妨げとなっており、政府は税制改革のディスカッション・ペーパー(討議資料)を15年3月に発表し、広聴した意見の内容を吟味している。16年には税制改革の選択肢が含まれているホワイト・ペーパーの発表も予定され政府の審議にかけられる。今後どのような税制改革の選択肢が提案されるか、またオーストラリア政府が提案に対してどのように対応していくのかは現在のところ未定である。一方、15年に既に導入した主要な税制改革の一つは、過少資本税制のセーフ・ハーバー算定時の調整後資産に乗ずる割合が75%から60%へ引き下げられたことである。また、企業が支払っている税金の透明性を高めるため15年12月にはオーストラリア国税庁(Australia Taxation Office)は、売上高が1億ドル以上のオーストラリアの企業の課税所得と納税額を初めて開示する予定である(11月末執筆現在)。各国の税収の減少と財政赤字が拡大する中、多国籍企業の国境を越えた過度の節税策に対応するため、OECD(経済協力開発機構)はその問題解決に向けた15の提案書を15年10月に発表した。オーストラリアは既にOECDへの提案書から得たアイデアをいくつか採用しているが、16年内に16年と17年の会計年度に影響を及ぼすと思われるBEPS(税源侵食と利益移転)変更点を更に発表すると予想される。

気候変動政策でも動きがあった。「直接行動」政策の柱の一つであるセーフガード措置の詳細が15年に発表され16年7月1日から適用されることも決まった。年10万トンCO2-e以上を排出する施設が対象で、各施設には独自の排出ベースラインが設定される。ベースラインは原則的に09/10~13/14年度の間で最も高いスコープ1(直接)排出量で設定される。与えられたベースラインを超えた対象施設にはペナルティが課せられる。ただしベースラインは施設の活動内容による変更や、排出削減プロジェクトで政府から取得した炭素クレジットなどで調整することも可能となっている。

投資動向はどうか。15年は大型案件が目立つ年だった。日本郵便による物流大手トール社の買収や日本生命によるナショナル・オーストラリア銀行傘下の生保事業の買収もニュースとなった。EYが昨年後半に実施した調査によると53%のオーストラリア企業は今後12カ月以内に買収を検討していると回答した。投資先として農業や食品業界に対する興味が高くアジアの食料需要を見込んだM&Aが今後も増えるとみられる。一方、外国企業では石油・ガスおよび鉱業・金属業界における投資意欲が最も高く、豪ドルの下落や資産価格の落ち込みの影響でオーストラリアへの投資に関心が高いと回答している。16年はインフラ関連の投資増加も期待される。政府の資産リサイクル・イニシアチブの導入により、州政府が非中核的また老朽化した州資産を売却し、その売却収入を新たな生産性の高い道路・鉄道、空港、港湾など経済インフラに再投資を始めている。そういった資金が今後シドニーのWestConnex、西ハーバー・トンネルなど大型のプロジェクトや学校、病院などに振り向けられる。昨年後半に落札したNSW州の送配電網を保有するトランスグリッド社の売却額が市場関係者の予想を大きく上回り、今後、他州の資産売却を加速させる可能性が高い。

各分野をクリック▶▶▶ 連邦政局
ナオキ・マツモト・コンサルタンシー
松本直樹
日豪ビジネス
日本貿易振興機構(ジェトロ)
シドニー事務所長 平野修一
豪州経済
時事通信社シドニー特派員
新井佳文
為替
三菱東京UFJ銀行
オセアニア総支配人兼シドニー支店長
桝谷亨
会計・税務
EY ビジネス・サービス
アジア太平洋地域統括/パートナー
菊井隆正

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る