【新年恒例特集】回顧と展望2017/連邦政局(松本直樹)

新年恒例企画 回顧と展望2017
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ナオキ・マツモト・コンサルタンシー
松本直樹
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日本貿易振興機構(ジェトロ)
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連邦政局

ナオキ・マツモト・コンサルタンシー 松本直樹

ナオキ・マツモト・コンサルタンシー

松本直樹

プロフィル◎慶応義塾大学商学部卒業後、会社勤務を経て、1987年オーストラリア国立大学国際関係学科修士課程修了。同大学豪日研究センター博士課程中退。92年5月から95年7月まで、在豪日本国大使館専門調査員(豪州内政を担当)。95年8月から97年1月まで、オーストラリア防衛大学国防研究センター客員研究員。96年8月より政治コンサルタント業務を開始。専門領域は豪州政治、日豪関係、安全保障問題など。2014年日本国外務大臣賞受賞

両院解散選挙後の「課題」

2016年は連邦選挙の年であった。しかも同年7月に実施された選挙は、1987年選挙以降では初めてという、歴史的にもまれな両院解散選挙であった。この両院解散選挙とは、特定法案を巡って上院が膠着(こうちゃく)状態に陥った場合に、それを打開するために政府が用いる最終手段である。そして同選挙実施の要件、すなわち「トリガー法案」となった特定法案が、労使関連2法案、具体的には、登録団体監督委員会(ROC)の設置法案と豪州建築・建設委員会(ABCC)の再設置法案であった。

またターンブル保守連合政府が両院解散選挙を選択した背景には、実は他にも重要な動機、目的が存在していた。それは両院解散選挙を通じて、政府の活動をしばしば妨害してきた「その他」上院議員をほぼ一掃することにあった。確かに、通常の上院半数改選選挙に比べ、いわゆる「当選基数」がほぼ半減する上院の全数改選選挙は、少なくとも理論的には「その他」議員を逆に増加させる可能性もあった。そこでターンブル政府は、小政党/泡沫候補の当選をより困難にする上院投票制度の変更を実施した上で、両院解散選挙に訴えたのである。

ところが、予想通り保守政府は再選を果たしたものの、ショーテン野党労働党の秀逸なメディケア・スケアー・キャンペーンが大きな効果を上げた結果、与党は予想を大幅に上回る苦戦を強いられている。まず定数150の下院の政党勢力分布だが、与党は76というぎりぎりの過半数を確保しただけで(注:選挙前は90)、野党は69(同55)、そして「その他」が5(同5)となった。

一方、定数が76の上院の勢力分布は、与党が30(注:選挙前は33)、労働党は26(同25)、グリーンズ党9(同10)、そして「その他」が11(同8)と、与党が議席数を減らしたばかりか、「その他」議員は逆に3も増加することとなった。そのため、ただでさえ評価が低迷気味であったターンブルの権威は大きく失墜し、8月30日からスタートした第45回議会は、混迷の度を一層深めたのである。

ただターンブル政府は、議会が長期の夏季休暇で閉会となる間際の11月末に、野党労働党並びにグリーンズ党が徹底的に反対してきた上記労使関連2法案を、「その他」議員の支持を得て上院で可決させ、成立させることに成功している。歴史的にも稀な両院解散選挙実施の「大義名分」であった法案が成立したことにより、ターンブル政府は安堵に胸をなで下ろしていたし、また同法案の重要さに鑑み、2法案の成立は、15年9月に誕生したターンブル政権の実績の中でも間違いなく最大級のものであった。

さて、こうして迎える17年だが、2月初旬から再開される議会での政府の当面の課題は、16年連邦予算案の「目玉」であった法人税の減税計画を、どの程度まで実現できるかであろう。周知の通り、アボット政府の15年予算案は、14年予算案のような国民の反発を惹起した厳しい歳出削減策は避け、肝心の財政再建に関しては、経済成長を通じた税収入の自然増収、とりわけブラケット・クリープ効果による増収を財政再建のビークルとして位置付けるという、極めて「他力本願」的なものであった。

これには重大な疑義が呈され、その結果、15年予算案全体の信頼性が毀損されたのである。そこでターンブル16年予算案には、アボット15年予算案を巡る経緯を教訓にして、経済の「パイ」を大きくするための具体的な方策、長期経済計画が盛り込まれていた。それが、法人税の長期減税計画を通じた雇用創出と経済成長策であった。保守政府の長期計画では、10年後には中小事業体どころか、大事業体を含む全法人企業の税率が、一律25%にまで低減されることになる。もちろん、法人減税策がそのままの形で施行される可能性は皆無である。

ただ政府としては、16年予算案全体の信頼性を高めるためにも、できるだけオリジナルな政策に近づけることが肝要となる。一方、法人税減税策が当面の課題としても、実はターンブル政府の直面する17年の問題点とは、現在のところ、労使関係2法案のような、経済政策の観点からも極めて重要な政策テーマを政府が見出していないことにある。

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