【新年恒例企画】回顧と展望2018/会計・税務(菊井隆正)

会計・税務

パートナー/ジャパン・ビジネス・サービス
オセアニア・アジア太平洋地域統括

菊井隆正

プロフィル◎豪州国内で約20人の日本人スタッフを抱える世界4大会計事務所の1つEYのアジア・パシフィック及びオセアニア地域日系企業担当部門代表。在豪20年を超える。常に監査、会計、税務から投資まで広範囲にわたる最新情報を提供することで、オセアニアで活躍する日系企業に貢献できるよう努めている

コンプライアンス意識の浸透を図る取り組み

メルボルン・カップが開催された2017年11月7日にオーストラリア株式市場の動向を示す代表的な株価指数であるS&P/ASX200指数が08年以来、約10年ぶりに6,000ポイントを超えた。株高の背景には好調な企業業績、良好な展開を示している世界経済と資源価格の上昇があり、EYが17年10月に実施したグローバル調査の結果でも大半のエグゼクティブが、企業のビジネス環境は金融危機以来では最もポジティブになったと回答した。

オーストラリアにおいて一番大きなニュースの1つとして挙げられるのは457ビザの改定である。17年4月に政府は特定のスキルや経験を持った人材(駐在員など)を海外から派遣する際のビザの条件を厳格化することを発表した。17年7月に発表された2度目の改正で揺り戻しという形で概ね要件が緩和されたが、移民局は半年ごとに労働市場のニーズに合わせて職業リストやその他要件を見直すと発表しており、今後の動向が引き続き注目される。

一方、税務面では他国と同様、オーストラリアでも「多国籍企業は課税逃れで十分な税金を払っていない」というイメージが国民に浸透しており、豪州税務当局(ATO)は質・量共にコンプライアンス意識を浸透させるための取組みを強化した。「質」としては、租税回避行為を防止する新しい法律とそのコンプライアンス実務指針(Practical Compliance Guidelines)の導入や、税務リスクが高いとされる企業に対し、法人所得税の申告と併せて税務上の取り扱いが不明確な取引や重要な取引に関わる情報(Reportable Tax Position)提出の義務化を提案した。「量」の面からはトップ1,000企業を対象にしたレビュー・プログラムで、売上げが2億5,000万豪ドル以上の多国籍企業に対する税務レビューが行われることを発表した。更に、そのレビューの過程でこれまで低リスクとしてATOがサイン・オフしていた税務ポジションを見直すとしている。

ATOが導入した国別報告書に関する規定により、ローカル・ファイルという移転価格に関連する書類の作成及び提出が今年から必要になった(決算期によっては18年初めから開始の会社もあり)。オーストラリアの規定はOECDの規定より広範囲であるため、通常全ての関係会社間の契約書も一緒に提出することが求められるので注意が必要である。更に、日系企業など該当する会社はローカル・ファイルと共に一般目的財務諸表(GPFS)もATOに提出することになったが、未だ不明瞭な点が残っておりATOの迅速な対応が待たれる。

オーストラリアの税制改正の目玉の1つとして法人税減税が挙げられる。30%の税率を段階的に27.5%に引き下げ最終的には25%まで下げるという方針だ。ただし、実際に減税が法制化されているのは売上げが5,000万豪ドル未満の企業に限られている。ここ最近の政治家の市民権問題をめぐる議論で政治は宙に浮いたままで、全企業に減税の恩恵が行きわたるのは先の話であろう。米国を含む世界的な法人税減税のトレンドに乗り遅れることになる。

一方、昨年は年々高騰している国内のガス料金や電気料金が注目を浴びた。混沌としているオーストラリアのエネルギー・温暖化政策をめぐる動きの中、16年に起きた南オーストラリアでの大規模な停電により同州の再生可能エネルギーへの過剰な依存というリスクが顕在化した。政府から安定供給と低コストが両立する電力市場整備に向けた調査と提案を委託されたチーフ・サイエンティストであるアラン・フィンケル氏は、現行の再生可能エネルギー目標(Renewable Energy Target)に取って代わるクリーン・エネルギー目標(Clean Energy Target)を推奨したが、政府は再生可能エネルギーへの補助金を撤廃し、その代替案として電力供給の安定化と温暖化ガス排出量の目標設定をうたう国内エネルギー保証政策(National Energy Guarantee)を導入する方針だ。これは、電気小売事業者に対し、石炭、ガス、蓄電システムなどの安定した発電源による電力調達を強制しつつ、低排出の再生可能エネルギーを組み合わせることで一定の平均排出目標レベルを達成するよう保証させるようだが、労働党や各州政府からの同意は得ておらず詳細もこれからだ。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る