教育特集2017・オーストラリアの「子育て・習い事」最新事情

2017年 オーストラリアの「子育て・習い事」最新事情

異なる文化・言語を持つ多数の人びとが暮らすオーストラリアでは、個性や自主性を尊重する教育が主流で、教育制度の面でも選択肢が多い。子どもが最適な「学び」を得るために、本特集では就学前から大学入学前までのオーストラリア(NSW州)の教育事情と習い事の情報を、実際にシドニーで子育て中の家族の体験談と共に紹介する。

記事(教育制度)監修=内野尚子(うちのなおこ/Universal Kids)
※当記事の掲載情報は2017年2月時点のもの

NSW州での子育てと教育制度の概要

教育制度の概要

連邦国家であるオーストラリアでは、教育制度は州ごとに異なっている。NSW州の大学入学までの教育制度は、就学前教育、準備教育(キンダーガーテン。通称キンディー)、初等教育(プライマリー・スクール)、中等教育(ハイ・スクール)に分かれる(下記図)。就学前教育は日本の幼稚園や保育園に、プライマリー・スクールは日本の小学校に、ハイ・スクールは日本の中学校及び高等学校に相当する。オーストラリアでは日本のように学年が小学校、中学校、高等学校で区切られておらず、初等教育のイヤー(Year)1から中等教育のイヤー12までの12年間を通して「イヤー○」という呼び方をしている。義務教育期間はイヤー1からイヤー10までだ。

学期はタームと呼ばれ、4学期制であり、新学期は1月末から始まる。

基本的にプライマリー・スクールの就学年齢は、その年の7月31日までに6歳になる子どもが、同年に始まるイヤー1に入学することになっている。またその1年前に、プライマリー・スクールに併設されたキンディーに、義務ではないが、ほとんどの子どもが通う。

もっとも、オーストラリアでは保護者が入学時期を決めることも可能で、子どもの状態によって、早めたり遅らせたりすることができることも覚えておくと良いだろう。

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NSW州と日本の教育制度比較
※日本では4月1日時点で満6歳の子どもが小学校に4月に入学する。オーストラリアでは、その年の7月31日までに6歳になる子どもが小学校に1月に入学する。


学校の種類


学校は公立校(パブリック・スクール)と私立校(プライベート・スクール)に大きく分かれる。公立校は基本的には、住所によって通う学校が決まる学区制を採用している。私立校には、男子校、女子校、宗教に基づく学校(カトリック、アングリカンなど)、バイリンガル教育を実施する学校(日本人学校など)、モンテッソーリ・メソッドやシュタイナー教育といった著名な教育を取り入れた学校など、さまざまな種類がある。人気の私立校の場合、子どもが生まれた時点で入学のウェイティング・リストに名前を載せることも珍しくない。

入学する学校を決める前に実際にその学校の雰囲気を知りたい場合は、オープン・デーと呼ばれる学校見学説明会に参加することが可能だ。公立校、私立校問わず、1年間に複数回開催されるので、校風などを知るのに役に立つ。スケジュールは各学校によって異なるため、直接問い合わせて確認しよう。

就学前教育

NSW州では、3~4歳から就学前の教育を受けることが奨励されている。

就学前の教育には大きく分けてデイ・ケア・センター(Day Care Centre)、オケージョナル・ケア・センター(Occasional Care Centre)、プレスクール(Pre-School)の3つの種類がある。必ずしも日本の保育所や幼稚園などと内容がぴったり重なるわけではないので、英語で理解するのが良いだろう。

それぞれの施設では、先生と子どもの割合が決まっている。2~3歳未満の場合には、子ども5人につきエデュケイター(Educator)と呼ばれる先生または保育士が1人、3歳以上の場合には子ども11人につきエデュケイターが1人と決められている。

週に2~3日程度通うのが一般的で、定員20~60人くらいの小規模な所が多いが、中には60人以上という大規模な所もある。

●デイ・ケア・センター

対象は新生児から就学前までではあるが、センターによって受け入れ年齢の設定が異なる。預けられる時間帯はおおむね朝8時~夕方6時が多い。年末年始を除いて、年間48週以上オープンしている。

●オケージョナル・ケア・センター

対象は新生児から就学前までだが、これもセンターによって異なる。利用料金は1時間単位で決められている。

●プレスクール

対象は3歳から就学前まで。預けられる時間帯は朝9時~午後3時。学校と同じように4学期制で、夏休みなどのスクール・ホリデーがある。時間的に余裕のある保護者の子どもが多い。

※住んでいる地域にある施設の空き状況やサービスの種類など政府が運営するウェブサイト「MyChild」(Web: www.mychild.gov.au)で検索可能。

キンディー(キンダーガーテン)

5歳前後からは、義務ではないが、キンディーに通う。キンディーでは楽しい時間を過ごしつつ読み書きや算数が学べるような工夫がなされている。

また、インファント・スクール(Infant School)と呼ばれる学校もある。インファント・スクールはキンディーからプライマリー・スクールのイヤー2までをカバーし、このスクールが終わるとイヤー3から他のプライマリー・スクールに通うことになる。

プライマリー・スクール


プライマリー・スクールはイヤー1からイヤー6の6年間。プライマリー・スクールで学ぶ主要な教科は、英語(English)、算数(Mathematics)、理科と技術(Science and Technology)、創造芸術(Creative Arts)、社会と環境(Human Society and its Environment、略称HSIE)、心身発育と保健体育(Personal Development, Health and Physical Education、略称PDHPE)の6つだ。各教科で学ぶ具体的な内容については、NSW州政府が運営するBOSTESのウェブサイトで確認できる(Web: www.boardofstudies.nsw.edu.au)。

なお、キンディーを含むプライマリー・スクールからハイ・スクール(イヤー1~12)までの一貫校もある。

日本人学校と補習校

●日本人学校

日本国外に住む日本人の子どもを対象に、日本国内の小・中学校と同等の教育を行う全日制の学校。日本の文部科学省から義務教育課程と同等の教育を行う在外教育施設として認可されている学校でもある。

NSW州の教育・地域社会省の認可を受けた私立校として「シドニー日本人学校」がある。将来日本に帰国する予定がある人や、日本の学校と同レベルの日本語を維持したい場合などに、こうした日本人学校に通うという選択肢がある。シドニー日本人学校の特徴として、オーストラリアのカリキュラムで運営される「国際学級(キンディー~イヤー6)」を併設していることも挙げられ、日本人学級と国際学級との交流も行われている。

●日本語補習授業校

週末に開講している補習授業校(略称:補習校)では、日本の教科書やその他の教材を使用して日本語を教えている。日本語環境が少ないオーストラリアで日本語の維持・向上を図り、日本や日本文化の窓口としての重要な役割も果たしている。日本をバックグラウンドに持つ同世代の子どもと一緒に日本の伝統行事や生活習慣を楽しく学ぶ機会にもなる。

ハイ・スクール


ハイ・スクールは、日本の中学校・高校に相当するイヤー7~12。イヤー10の修了時には義務教育修了証明書(RoSA)が交付されるが、そのためにはイヤー7から、英語(English)、数学(Mathematics)、科学(Science)、歴史(History)など10の科目を取らなければならない。加えて選択科目もあり、農業技術(Agricultural Technology)、商学(Commerce)などがある。イヤー9ではラップトップ・パソコンが配布されるのも特徴だ。

私立校ではもちろんのこと、公立校でも生徒のニーズや関心に合わせた学校があり、例えば、芸術系(Creative and Performing Arts High School)、技術系(Technology High School)、スポーツ系(Sports High School)などが挙げられる。NSW Educationのウェブサイト内(Web: www.dec.nsw.gov.au)にある「Services locator」からこうした学校を探すことが可能だ。

またハイ・スクールの選択肢には、セレクティブ・スクールと呼ばれる公立の進学校もある。セレクティブ・スクールに入学するためには選考試験に合格することが必要となる(後述)。

プライマリー・スクールもハイ・スクールも公立校の場合、オーストラリア国籍や永住権の保持者は学費が無料。ビザのカテゴリーにもよるが、テンポラリー・ビザ保持者の場合年間約5,000~6,000ドルかかる。一般的に、私立校は公立校よりも学費が高い。

学校生活

●規模/授業時間/スクール・ホリデー

学校の規模は、1学年が4クラス以上の大規模な学校から、1~2クラスしかない小規模な学校までさまざまだ。1クラスは25人前後。授業時間は学校によって異なるが、おおむね朝9時~午後3時までとなっている。授業は40~60分単位で、授業時間単位はピリオド(Period)と呼ばれる。また、秋休み、春休み、夏休み、冬休みというスクール・ホリデーがある。

NSW州2017年の各タームの日程

Term 区域 日程
ターム1 東部 1月30日(月)〜4月7日(金)
西部 2月6日(月)〜4月7日(金)
ターム2 東部/西部 4月26日(水)〜6月30日(金)
ターム3 東部/西部 7月18日(火)〜9月22日(金)
ターム4 東部/西部 10月9日(月)〜12月15日(金)

NSW州2017年のスクール・ホリデー

日程
秋休み(東部/西部) 2016年4月10日(月)〜4月21日(金)
冬休み(東部/西部) 2016年7月3日(月)〜7月14日(金)
春休み(東部/西部) 2016年9月25日(月)〜10月6日(金)
夏休み(東部) 2017年12月20日(水)〜2018年1月26日(金)
夏休み(西部) 2016年12月20日(水)〜2018年2月2日(金)

出展:NSW州教育省ウェブサイト(Web: education.nsw.gov.au/going-to-a-public-school/calendars

●制服

公立校には制服があるが、私立校には制服がない学校もある。制服には夏服と冬服があり、帽子、カバン、ズボン、スカートなどが含まれる。靴はひもがついた黒がベースのものを薦められるが、自分で靴ひもを結べない場合は、マジック・テープを使ったものでも可。また体操着と運動靴も用意する必要がある。

制服はローカルの販売店で購入、あるいは販売所が学校内にある場合も多い。新品の販売だけでなく、多くの学校では寄付されたセカンド・ハンドの制服も販売される。カバンは、私立校では学校指定品を用意するのが基本だが、公立校はその限りではない。

●「No Hat, No Play Policy」

オーストラリアは1年を通じて紫外線量が多い。そのため紫外線対策の1つとして「ノー・ハット、ノー・プレイ」を基本方針とし、帽子を着用しない子どもは日陰の無い場所での外遊びをさせないようになっている。帽子が制服の一部となっているのもこのためだ。太陽の光から目を守るためのサングラスの着用や、毎朝登校前に日焼け止めを塗ることも推奨されている。

●アセンブリー(Assembly)

各学校によっても異なるが、プライマリー・スクールでは週に1度、ハイ・スクールでは2週に1度ぐらいの割合で集会が行われる。校長先生の話、教師からの伝達事項に続いて、勉強やスポーツで活躍した生徒への賞の授与、生徒たちによる歌やダンスなどのパフォーマンスなどが行われ、これをアセンブリーと呼ぶ。アセンブリーには保護者が招待されることもある。

●アスレチック・カーニバル、スイミング・カーニバル

アスレチック・カーニバルは日本語で言う運動会、スイミング・カーニバルは水泳大会。しかし趣は日本とかなり異なる。公立校の場合を例に挙げると、アスレチック・カーニバルは平日に行われ、イベントというより運動能力を測定するようなイメージである。スイミング・カーニバルは、公共のプール施設で行われる。オーストラリアではほとんどの学校にプールが無く、水泳の授業は公共のプール施設で毎年2週間ほど行われる。

●保護者による送迎

初等教育では保護者が子どもの送迎をする。また、学校もしくは学校付近のコミュニティー・ホールなどで学校の就業時間外に有料で子どもを預かる、日本の「学童」のようなサービス(Outside School Hours Care)もあり、前述の「MyChild」サイトで検索できる。

●スクール・カウンセラーの配備

 多くの学校にはスクール・カウンセラーがいる。学校や家庭で問題を抱える生徒たちの相談に乗ったり援助を行う。

●成績表

成績表はスクール・レポートと呼ばれ、通常ターム2と4の終わりに保護者宛に送られる。同じ頃、ほとんどの学校で、保護者と教師が子どもの学習状況について話し合う面接が夕方から夜にかけて開かれる。

学力評価、特別授業

オーストラリアでは、子どもたちの学年などに応じて、さまざまな目的を持った学力評価試験が定期的に行われている(試験の名称は州により異なる)。また、スキルアップやフォロー・アップのための実習や補習も用意されている。


●Best Start Kindergarten Assessment

キンディーでは新入生に対して「Best Start Kindergarten Assessment」と呼ばれる能力評価が実施される。教師は子どもたちの初歩的な読み書き能力や他人とのコミュニケーション能力、数字や図形に対する認識力などを把握する。これは決して子どもの能力の優劣を測るためのものではなく、教師が子どもの指導をする上で個々に合った有効な計画を立てるためのものである。キンディー入学までに、読み書きや算数のスキルを身に付けておく必要はない。

●NAPLAN

「National Assessment Program–Literacy and Numeracy(NAPLAN/全国評価プログラムー読み書き能力と計算能力)」と呼ばれるテストが、公立校、私立校問わず、イヤー3、イヤー5、イヤー7、イヤー9の生徒を対象に毎年5月に実施される。これは主に教師が生徒の基礎学力を測り、授業の計画を立てたり、カリキュラムの見直しをするために行うものだ。

●Opportunity Class Placement Test

「Opportunity Class(OC)」とは、イヤー5及びイヤー6の学力が優秀な生徒のために、知的欲求を満たす教育の場を提供するクラス。OCに入るための試験は「Opportunity Class Placement Test」と呼ばれる。このテストに合格した場合、OCは全ての公立小学校に設置されているわけではないため、自分が通う小学校にない場合は、設置されている学校に転校することになる。永住権または市民権保持者であることが受験資格となる。

●Selective High School Test

「Selective High School(通称:セレクティブ・スクール)」は、OCと同様に学力が優秀な生徒を対象に教育の場を提供する公立校である。進学志望者は、イヤー5の10月ごろ願書を入手し、11月半ばに提出。翌3月半ばにテストが行われ、7月に結果発表となる。OC同様、通っている私立校・公立校に関係なく受験できるが、永住権または市民権保持者であることが受験資格となる。

●ESSA

イヤー8では、「Essential Secondary Science Assessment(ESSA)」という学力テストが毎年11月末に行われる。生徒が科学の知識をどれだけ理解し、応用できるかを評価するもの。

●School Certificate Test

イヤー10修了時には、成績証明・義務教育修了証明書(RoSA)が授与されるが、このためには必ず州統一の試験である「School Certificate Test」を受ける必要がある。

●Higher School Certificate Examination(HSC)

イヤー12終了時に行われるNSW州の高等学校卒業認定試験(州により名称が異なる)。次ページ、「もっと知りたいHSC」で詳述。

●International Competitions and Assessments for Schools(ICAS)

希望者のみが参加するテスト。世界20カ国以上の国で行われている国際教育到達度比較調査で、NSW州立大学(UNSW)が主催している。近年では、生徒全員の参加を奨励している学校も増えている。

●Work Studies/Work Experience/Work Placement

イヤー9またはイヤー10で行われる職場実習である。学校によってはイヤー11またはイヤー12で行う場合もある。興味関心がある職場や会社にアポイントメントを取ることから始め、通常1週間、授業に出席する代わりに職場に出勤し職場体験をする。

●English as a Second Language(ESL)

NSW州の公立校では、英語を母国語としない生徒のために、「ESL(English as a Second Language)」クラスを設けている。一般的に「取り出し授業」と呼ばれる形式で行われることが多い。クラスの規模や実施頻度は、該当する生徒の数や対応できる教師の数により学校ごとに異なる。

●International Baccalaureate(IB)

スイスのジュネーブに本部を置くI BO(International Baccalaureate Organization/国際バカロレア機構)が提供しているプログラムで、この専用カリキュラムを履修し、最終試験を受けて一定レベル以上の成績を収めると、国際的に認められた大学入学資格(国際バカロレア資格)を取得することができる。これは、日本を含む世界125カ国以上の大学が認める入学資格で、オックスフォード大学やハーバード大学など世界の名門大学でも利用が認められている。

IBは生徒の年齢に応じて、3~12歳までのプライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)、11~16歳までのミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)、そして16~19歳を対象としたディプロマ・プログラム(DP)があり、現在NSW州では約15校がこのディプロマ・プログラムを提供している。日本でもIBを受け入れる大学が増えている。

■国際バカロレア機構Web: www.ibo.org(英語)
■文部科学省/国際バカロレアWeb: www.mext.go.jp/a_menu/kokusai/ib/index.htm(日本語)


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