日豪プレス・インターン生取材体験リポート「日本研究発表会」

日豪プレス・インターン生取材体験リポート

NSW大学 日本研究発表会

6週間にわたり、日豪プレスでインターンとして職場体験を行った近畿大学・総合社会学部・社会マスメディア系専攻の大学2年生3人が、NSW大学で開催された「日本研究発表会」で取材体験を行った。編集部指導の元、ニュース体裁で書き上げた記事、及び同世代のオーストラリアの学生たちの日本文化発表に対する3人の感想を併せて掲載する。(リポート:糸賀詩織、上田優華、平野友惟)

ベスト発表賞に選ばれた「神衣組」
ベスト発表賞に選ばれた「神衣組」

ニュー・サウス・ウェールズ大学日本研究課程は10月27日、日本研究専攻最終学年コースの学生による日本研究発表会を開催した。日本研究発表会は、ニュー・サウス・ウェールズ大学日本研究専攻の最終学年コースの学生が2011年度より行っているもので、今年度で8回目の開催となる。

日本女子生徒用制服について発表している「神衣組」
日本女子生徒用制服について発表している「神衣組」

学生らは「ヤクザ組」「国際線組」「過労組」「神衣組」「レインボー組」の5つの組に分かれ、それぞれの出身国やオーストラリア在住者としての視点から「ヤクザ」「日系人」「過労死」「制服」「LGBT」についての発表を行った。発表時間終了後にはそれぞれ質問タイムが設けられ、参加者から質問や指摘が飛び交った。

同じ専攻でも大学に入ってから日本語学習を始めた学生から、日本滞在歴のある学生まで、日本語能力のレベルはさまざま。同校のトムソン木下千尋・日本研究教授は「前日のリハーサルでは不安にさせる生徒もいたが、よくできていたと思う」と講評。「この発表会は1つのコミュニティー作りであり、それぞれが役割を果たし、お互いの力を認め合い、仲間を作ることで次の社会につながるものを得られることを目指しています。この経験を生かし、社会に出ていく学生を見る度、この会を開催して良かったと感じる」と続けた。

全発表終了後に行われた審査の結果、ベスト・ポスター賞に「ヤクザ組」、ベスト発表賞に「日本女子生徒用制服と海外の影響」の発表を行った「神衣組」が選ばれた。「神衣組」は中国に住んでいた参加学生の経験やオーストラリアでの高校生活を踏まえながら、日本の女子生徒用制服の変遷や比較を発表し、会場の多くの人の関心を集めていた。

ベスト・ポスター賞を撮った「ヤクザ組」のポスター
ベスト・ポスター賞を撮った「ヤクザ組」のポスター
ベスト発表賞、「神衣組」のポスター
ベスト発表賞、「神衣組」のポスター

日本でも話題となった女子高生同士の友情ドラマ「下妻物語」を見て日本の制服に憧れを持ったという「神衣組」のカシン・トンさんは、日本で学生生活を送れるとしたらどんな制服を着たいかという質問に対し、笑顔で「セーラー服が着たいです」と答えた。「神衣組」のケビン・リさんは発表の中にあった日本の学生が制服を着てディズニーランドへ行く「制服ディズニー」については「理解できない」と述べた。

日本研究の最終コースの学生たちの中には卒業後、日系企業への就職や日本へ渡る者もいるという。

トムソン木下千尋・日本研究教授にインタビューする3人
トムソン木下千尋・日本研究教授にインタビューする3人
「神衣組」の質疑応答で積極的に質問を行った上田さん
「神衣組」の質疑応答で積極的に質問を行った上田さん

取材を終えての感想・考察

糸賀詩織

「神衣組」が発表で述べた「制服は管理主義の象徴である」という言葉は私がシドニーで聞いた一番衝撃的な言葉だった。日本では、同じ学校の生徒は同じ制服を着るのが当たり前である。しかし、今はこの制服というものが「人と違うことはいけないことである」という日本人の性質を顕著に表しているもののように感じてしまった。最もオーストラリアも制服文化ではあるが、日本はオーストラリアより制服に関する規則も厳しい。

更に、「過労組」が発表で見せた日本のCM。「1人はみんなのために」「社員は会社のために身を粉にする」という一見美しく見える日本でよく目にするようなテーマだった。しかし、この日本人の性質そのものが過労死につながっているという「過労組」の発表を聞いて、私はぞっとしてしまったのだ。知らない間に私たち日本人の頭はメディアや周囲によって、過労死につながるような考えを植え付けられているのかもしれないと。

このような事実に気付いたのは、私が日本を初めて客観的に見ることができたからではないかと思う。客観的に自国を見つめるということは、長所を見つけられるのはもちろんのこと、短所を見つけることもできる。実際、今回の研究を通して、学生たちは自分たちの出身国やオーストラリアの長所や短所に気付いただろう。

日本では、そのような客観的に日本を考える機会というのはほとんどないと思う。客観的に日本を見るには、グローバルな視点を持つということが必要不可欠だ。もっと意識を海外に向けて、日本と比べて何が良いのか、何を参考にすべきかを考えなくてはならない。私たちがそうすることによって、日本を向上させる原動力になることができると考えている。

上田優華

日本研究発表会に参加し、学生の日本語の上手さ、日本文化への理解の深さに驚いた。発表後に学生は日本語での質問に対し、日本語で答えていた。私が英語でそれをするのは多分できないだろう。大学から学び始めた学生もいる中、このような完成度の高い発表会を行っていることは本当に尊敬に値する。

同会で、外から見た日本を知ることができ、日本の足りていないところを強く感じた。特にLGBT(ニューハーフと呼ばれる人など)や日系人についての発表では、日本のマイノリティーに対する理解が少ないことを痛感し、少し悲しく思った。

日本のテレビ番組では今、多くのLGBTの人が出演している。しかし、それは、変わった人で面白いからという感覚でキャスティングされている、と発表の中で言われていた。

LGBTの人たちのメディアでの露出が増えたからといって理解が深まっているわけではなく、日本人はまだどこかで否定的な考えを持っているということを思い知った。

学生は発表後、それぞれ同性婚に対する自分の考えを述べていた。日本でこんな風にLGBTに対する自分の考えを持っている人はいるだろうかと考えさせられた。

日本語を学ぶ学生をただ見るだけではなく、外国人の視点から、日本の良い点や日本の足りていない部分を気づかされる貴重な経験となった。

平野友惟

10月27日、ニュー・サウス・ウェールズ大学で開催された日本研究発表会に訪れた。私はこの大学に通う学生の日本語がどのくらいのレベルなのか、またどんな発表をするのかとても楽しみで期待に胸を膨らませていた。日本研究発表会では「LGBT」「ヤクザの未来」「過労死」「女子生徒用制服」「移民」の5つのテーマがあり、それぞれのテーマに沿って5つのグループが発表を行った。

私が一番印象に残っている発表は「過労死」についての発表だ。世界的に日本は働きすぎという印象があり、また過労死の数は世界最多だ。アルバイトですら重要なポジションを与えられ、責任を押し付けられることが珍しくない日本の社会で、私はその事実に対して大きな違和感を持ったことはなかった。そんな当たり前だと思っていた考えが変わったのは日本のCMについての発表の時。

そのCMの内容はチームのために、会社のためにどのくらい頑張れているだろうかというものであった。このCMは潜在的に会社やチームへの忠誠心、責任感を高めるものでこれらが無意識のうちに「過労死」に影響しているものだと知り、この発表は私に良い意味でショックを与えた。

全ての発表を聞き終えた後、私は学生たちの日本語のレベルの高さにとても驚いた。もし私が英語で発表をしなければならないとしたら、こんなにうまくできなかったと思う。そしてこの発表会を通して、多くの観点から物事を見つめることがとても大事なことだと知るなど、とても有意義な時間を過ごすごとができた。

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