愛犬ペットの毎月フィラリアの予防薬、本当に必要?

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Q 4歳の犬(マルチーズ、雄、去勢済み)を飼っています。毎月フィラリアの予防薬を飲ませているのですが、これは本当に必要なのでしょうか?
(32歳主婦=女性)

A フィラリア(Dirofilaria immitus)は蚊によって媒介される寄生虫で、英語ではハートワーム(Heartworm)と呼ばれます。犬に寄生したフィラリアは、心臓と肺をつなぐ肺動脈内に住み着き、次第に心臓内部にも侵入していきます。成虫は30センチもの長さにもなるため、虫の数が多いと血管内が詰まって循環不全を起こし、死に至る危険のある深刻な感染症です。治療自体も難しくリスクを伴うので、予防するに越したことはありません。

原因:
 フィラリアは、蚊を介して犬から犬へと感染していきます。犬に寄生したフィラリアは成虫になると犬の血液中に大量の幼虫(ミクロフィラリア)を生みます。この血液を蚊が吸うと、幼虫も一緒に取り込まれ、別の犬を吸血するときに今度は蚊の唾液とともに吐き出されて犬の体内に侵入します。幼虫は最初の数カ月は皮下で生息し、その間は何の症状も見られません。成長すると共に血管内へ移動し心臓へと向かい、寄生から6カ月後には成虫になります。成虫の数が少ない場合、無症状のこともありますが、フィラリアの寿命は3~5年もあるので、年月をかけて成虫の数も増えていき、次第に心臓の右心室を占拠してしまいます。

症状:
 フィラリアが長期間心臓や肺動脈に寄生していることから、慢性的に心肺機能への支障が出てきます。咳、運動や散歩を嫌がる、疲れやすい、といった心不全/呼吸器不全の症状が現れ、次第にむくみや腹水なども見られます。
 フィラリアの数が増えると、大静脈内にも大量の虫が詰まって大静脈症と言う急性の症状が起こります。これは急性貧血を伴う緊急事態で、早急に治療を施さないと助かる見込みはありません。

治療:
 フィラリアの成虫は血管内にいるため、いっぺんに駆除してしまうと死んだ虫で血管が詰まってしまう恐れがあります。そのため駆除薬は2~3段階に分けて与える必要があります。
 また、治療を受ける犬にある程度体力がないと虫の駆除自体に耐えられないため、慢性症状が重い場合はまず容態が安定するように支持療法をしてからでないと駆除薬は使えません。急性の大静脈症の場合は、外科的に成虫を取り出します。

予防:
 予防薬は蚊から感染した幼虫を殺すことで、フィラリアが成虫になって心臓に寄生するのを防ぎます。
 シドニーは気候が温暖なため、1年中蚊がいます。そのためフィラリアの予防も年間を通してする必要があります。
 月に一度使用するタイプと、年に一度注射するものがあります。毎月投与するものは、フィラリアだけでなく腸内の寄生虫にも有効なので、子犬などには便利な薬です。成犬は年に一度の注射が、効果的です。予防接種と同時に打つようにすると、投与を忘れる心配もないでしょう。


戸塚 遊喜(とつか ゆき)
Chatswood Veterinary Clinic

シドニーの現地校を卒業後、シドニー大学の獣医学部を卒業。現在、シドニーのノースショアにある小動物専門病院「チャッツウッド・ベタリナリー・クリニック」に勤務。動物の鍼灸師の資格を保持している。

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