飛べなくなったモモイロインコ

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第25回 飛べなくなったモモイロインコ

沈没船や衝突事故を起こしたタンカーから重油が流出し、海に生息する動物たちが被害に遭うというニュースを聞いたことがある人もいるかと思います。海鳥は水中の魚を食べようとして重油まみれになり、飛べなくなるだけでなく羽毛の防水性を失って体温を保つことができなくなってしまいます。また、油を誤飲して死んでしまう鳥もたくさんいます。幸い、大規模な重油流出事故は2010年を最後に起きていませんが、油による被害は海上だけでなく私たちの身近な所でもたくさん起こっているのです。

病院での治療を経て回復した様子
病院での治療を経て回復した様子
油の被害を受けたモモイロインコ
油の被害を受けたモモイロインコ

ある日、2羽のモモイロインコが保護されカランビン・ワイルドライフ病院で治療を受けました。モモイロインコはオーストラリア全域に生息し、その名の通り鮮やかなピンク色の体に灰色の頭頂部、翼と尾羽を持つ美しい鳥です。都市部では草地でエサを探しながら歩く様子がよく見られます。

全く別の場所で発見された2羽でしたが、ともに羽毛が油まみれになっている状態でした。運悪く車のエンジン・オイルが入った容器に着地してしまい、くちばしを使って羽根をきれいにしようとして逆に油が体全体に広がってしまったようです。

飛べず動けずエサを捕ることもできなかったためか、衰弱して脱水症状も見られました。そこでまず保温と捕液で彼らの状態を安定させてから、油を取り除く作業をスタート。ぬるま湯と食器用中性洗剤で体全体を大まかに洗い流した後、翼などの大きな羽根を1枚1枚スポンジで丁寧に拭いていきます。最後にシャワーで洗剤を流して、温めた保育器で羽毛を乾燥させます。人に慣れていない野生の鳥なので、治療ストレスを軽減するため作業はすべて全身麻酔をかけて行われます。もちろん身体に負担がかかりますので、羽毛のダメージとストレスの程度にもより、状態を見ながら1日おきあるいは毎日、油分がなくなるまで作業を続けます。油がどうしても取り除けない場合、汚れた羽根を抜いて新しい羽が生えてくるのを待つこともあります。

幸いこの2羽は病院での治療後、保護士さんの下でリハビリを続け、羽が生えそろってから野生に戻ることができました。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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