コアラのキンディー(幼稚園)

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第31回 コアラのキンディー(幼稚園)

例年になく雨が少なかった夏が終わりを告げ、ゴールドコーストの秋の始まりは雨ばかりが続いています。動物たちもあまり活発に動き回らないためか、カランビン・ワイルドライフ病院で治療を受ける野生動物の数も減ってきました。そんな中、4頭のコアラたちが、リリース前の健康チェックに連れて来られました。

この4頭は全て、昨年春頃にNSW州で保護されました。まだ体重が1キロにも満たないうちにお母さんコアラを亡くしてしまい、半年以上もの間、コアラのレスキュー・リハビリ団体である「Friends of the Koala Inc.」に所属する保護士さんの元で育てられました。

コアラは重度の病気を抱えていてもそれをなかなか表に出さないため、何十年もコアラの人工保育を手がけてきたベテランの保護士さんであっても、育てることはとても難しいのです。この4頭も人工保育を始めてすぐの頃は、肺炎や腸炎にかかったり、思うように体重が増えなかったりで何度も通院し、保護士さんだけでなく私たち病院スタッフもハラハラしながらその成長を見守ってきました。最初の数カ月を過ぎてからは順調にすくすくと育ち、ついに体重が3キロを超えたということで、保護士さんの手を離れる時がとうとうやって来ました。

健康チェックにやって来たコアラ
健康チェックにやって来たコアラ

とはいえ、野生での暮らし方を何1つ知らない未熟なコアラたちですので、いきなり森に放り出すわけにはいきません。幸い「Friends of the Koala Inc.」には、ユーカリの木を何本かフェンスで囲ってある施設がありますので、まずはそこに移されることになりました。エサとなるユーカリの枝を人間からもらっていたこれまでと違い、ここでは自分たちで木に登ってユーカリの葉を見つけなければなりません。私たちはこのような施設のことをキンディー(幼稚園)と呼んでいます。

こうして人間との接触はほとんど無くなりますが、時折ボランティア・スタッフが様子を見に行き、順調に樹上での暮らしに慣れていっていることを確認します。

キンディーに送られる前に、病院でひと通りの健康診断が行われます。病気やケガの治療ばかりしているスタッフにとって、健康になり野生に返る動物を見られるのは、とても幸せなことです。4頭とも健康そのもの。個体識別のために耳に赤いタグが付けられ、キンディーに行く準備は完了です。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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