春を迎えた亀たち

オージー・ワイルドライフ 診療日記

第49回 春を迎えた亀たち

冬服の出番がほとんどなかった暖かい冬が終わり、春がやって来ました。巣立ちの前に親鳥からはぐれてしまったひな鳥や、繁殖期を迎え活発に行動する中でけがをしてしまった野生動物たちが毎日たくさん保護されています。

カランビン・ワイルドライフ病院には、春の訪れを心待ちにしていた長期入院患者がいます。それは、3月末の大雨洪水により住み家から流され、甲羅にけがを負った亀たちです。けがの程度はさまざまですが、どれも最短2カ月の入院を要するものでした。通常なら治療やリハビリを終えた時点ですぐに野生に返しますが、そのころには外は一段と冷え込み、河川の水温もすっかり下がっていました。

野生の亀は、日中の気温が20度以下になると活動が鈍くなり、食欲も減ります。気温の低下と共に代謝も悪くなり、15度以下になると土や落ち葉に潜って冬眠します。消化されていない餌が体内に残ったまま冬眠してしまった場合、胃腸の内容物が腐って病気になったり死んでしまうこともあります。

病院で冬を過ごし、元気になって野生に返すことができた亀たち
病院で冬を過ごし、元気になって野生に返すことができた亀たち

病院の水槽は、QLD州南東部で保護される亀の治療に最適な水温である26度で保たれています。そのため、リハビリを終えたばかりの亀をいきなり冷たい水に放すことはできません。結果、今年は20匹の亀たちが病院で冬を過ごすこととなりました。長期入院中は、体重や食欲の変化、水槽をシェアする亀同士の争いなどに注意しながら、亀たちができるだけ快適に過ごせるように心掛けました。

特に8月に入ってからは毎日、周辺の河川の水温をチェックして、気温・水温が順調に上昇し、野生の亀が冬眠から起きて活動を始めたことを確認してから、亀たちの退院の準備に入りました。水槽の水温を徐々に下げ、餌やりの頻度を減らし、ついに野生に返すことができました。

これからもっと暖かくなると、亀の行動範囲が広がり、道路を渡ろうとすることもよくあります。河川の近くを運転する時は気を付けてあげてくださいね。


■床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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