釣り針によるけが

第54回
釣り針によるけが

東海岸沿いに位置するゴールドコーストでは、川や海での釣りを楽しむことができます。魚がたくさんいる場所には当然ながら、魚を餌とする鳥たちもたくさん生息しています。そのため、釣りの活き餌や魚の形をしたルアー(疑似餌)を釣り針ごと飲み込んでしまうこともあるのです。

昨年1年間で釣り針や釣り糸によるけがで治療を受けた動物は121匹、週に2件以上の被害が起きている計算になりますが、そのほとんどが水辺に住む鳥たちです。

水鳥が保護されたら、明らかな外傷が見られなくても、レントゲン撮影をします。外からは見えなくても、釣り針が食道や胃の中に引っ掛かっていたりすることがあるからです。

くちばしから釣り糸が垂れている場合でも、レントゲン撮影で釣り針の位置や大きさ、向きなどを確認してから処置に当たります。そのまま引っ張ってしまうと、釣り針の先についている「返し」によって内臓を傷つけてしまう可能性があります。

釣り針を取り除く方法は、その位置や鳥の大きさによって決まります。口の中に見えている場合は、そのままピンセットなどを使って取り除くことができますが、食道に引っ掛かっている場合は首の皮膚と食道を切開する手術となります。

胃袋まで釣り針を飲み込んでしまったペリカンの口から手を入れて釣り針を取り除く著者
胃袋まで釣り針を飲み込んでしまったペリカンの口から手を入れて釣り針を取り除く著者

胃に入ってしまっている場合は、ほとんどが内視鏡による除去か開腹手術となりますが、水鳥の中で一番大きいペリカンにおいては、もう1つ手段があります。

口から胃まで手を入れて直接釣り針をつかみ取る方法です。人間の腕よりも大きな魚を丸ごと飲み込むこともあるペリカンだからこそできることなのですが、気道や血管を圧迫しないよう素早く終わらせなければなりませんし、手探りで釣り針を探すためうっかり手にけがなどしないように十分な注意が必要です。

手術ですと抜糸まで最低でも1週間の入院が必要ですが、この方法なら内臓を傷つける危険もほぼなく、処置の翌日には退院することができます。

使った釣り道具はしっかり片付けて持ち帰ること、もし釣り餌や道具が放置されているのを見つけたら付近のゴミ箱に捨てるなどして、釣り道具による被害を減らすための協力をお願いします。


床次史江(とこなみ ふみえ)
クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

新着記事

新着記事をもっと見る

NICHIGO CHANNEL

新着イベント情報

新着イベントをもっと見る