ワイルドライフ診療日記・オオコウモリのマギー

 オージー・ワイルドライフ 診療日記

 第3回 オオコウモリのマギー

夕方、空が暗くなってくると、大きな黒い影が空を飛んでいるのを見かけます。オーストラリアには100種を超えるコウモリがいますが、そのうち13種あるオオコウモリは空を飛べる一番大きい哺乳類で、果実を好んで食べ、花粉の媒介をする大切な役割を担っています。ですが、家庭にある果物の木や果樹園などに住み繁殖を行うため、害獣とされ駆除の対象になったりもしています。


経過が良好であれば野生に返します

写真のハイガシラオオコウモリ(Grey headed flying fox)は有刺鉄線に引っかかっているところを救助されました。マギーと名付けられたこの若いメスのコウモリは、有刺鉄線のトゲに翼が引っかかってしまった際に飛膜に大きな穴が開いてしまいました。その上、鉄線から逃れようとして歯で鉄線を噛んだと思われる傷が口の中にもたくさんあり、前歯の何本かは折れてしまっていました。マギーの傷は幸い軽症で、レントゲンで骨折などの異常がみられないと確認された後、折れた前歯は抜歯され、痛み止めと抗生物質が処方され、保護士さんの元へ送られました。

飛膜に開いてしまった大きな穴は、これ以上広がらなければ飛行に影響はありませんが、ケガによっては時間の経過とともに穴が大きくなってしまい骨や関節が露出し感染症を引き起こしたり、うまく飛べなくなったりすることがあります。マギーは2週間おきに病院で傷のチェックを受け、経過が良好であれば野生に返すことになります。

ここ1年で、マギーのように有刺鉄線によりケガをして当院で治療を行ったコウモリの数は20匹にも及びます。中には、自分の歯で鉄線から逃れようとした際に顎を骨折してしまい、治療の施しようのない状態で運ばれてくるコウモリもいます。

もし有刺鉄線や防鳥網などに引っかかり動けなくなっているコウモリを見つけたら、Wildcare AustralliaやBats Queenslandなどの保護団体に連絡してください。コウモリはヘンドラ・ウイルスやリッサ・ウイルスという感染症ウイルスを所持している可能性があるため、予防接種や訓練を受けていない人が直接触れることはたいへん危険です。

 
 
■床次史江(とこなみ ふみえ)

クイーンズランド大学獣医学部卒業。カランビン・ワイルドライフ病院で年間7,000以上の野生動物の診察、治療に携わっているほか、アニマル・ウェルフェア・リーグで小動物獣医として勤務。

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