第8回 6月14日はクイーンズ・バースデー 英国のエリザベス女王誕生日がなぜ祝日 ?

サマンサのとっておきシドニーライフ

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第8回
6月14日はクイーンズ・バースデー
英国のエリザベス女王誕生日がなぜ祝日 ?



 英国エリザベス女王が生誕したのは1926年4月21日。でも、イギリス連邦諸国の誠実な臣民たち全員が、ささやかなプレゼントを贈ったりサプライズ・パーティーを開いたりするわけにはいかないから、お休みを1日取って、みんなで祝福するわけね。英連邦諸国によって祝日の日は異なっていて、ここオーストラリアではWA州を除いて6月の第2月曜日がその祝日。そう、祝福という名の下に、みんな学校や仕事をお休みして、後ろめたさを感じることなく休日の1日を楽しむのよ。

 この日は、多くのオーストラリア人にとって、オーストラリアとイギリスとの結びつきによって受けられる、実質的な恩恵の1つでもあるわ。今のオーストラリアは、立憲君主国。つまり、イギリス女王がオーストラリアの国家元首としての機能を果たすわけね。女王はオーストラリアでの代理人として、連邦総督と各州総督を任命するの。でもその人たちはオーストラリアの首相や各州の首相によって選ばれた人たちなのよ。現在の連邦総督はクエンティン・ブライスというQLD州出身の女性ね。
 もしオーストラリアがイギリス連邦を離れて共和国になるとしたら、どうなるのかしら ? 皆さんはどうか分からないけど、私自身は「共和制」という言葉を聞くと、何だか退屈になってきて、頭も働かなくなるのよね。女王と総督の役割はプレジデント、つまり、大統領に取って代わられる。それによって憲法をはじめ、議会や裁判所、軍隊など、今は総督によって統括されている分野の変化が起こるだろうし、国の象徴も変わると思うわ。
 私の周囲と友人たちとの会話では、数多くの若いオーストラリア人が共和制移行に賛成のようだけど、それが実際にどう機能するのかということについては、ほとんど理解されていないと思うわ(少なくとも、私はそう感じるの)。

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4月21日で84歳になったエリザベス英連邦王国女王
(Photo: NASA/Bill Ingalls)

 1999年には、オーストラリアが共和制に移行すべきかが国民投票で問われたけれど、約55%が「いいえ」と答えて終わったのよね。この時はかなりの接戦で盛り上がったみたいで、結局は、当時のジョン・ハワード首相が主唱するモナキー(立憲君主制)派が今は議員で当時はビジネスマンのマルコム・ターンブルが主唱するリパブリック(共和制)派を制した感じだった。
 共和制についての議論になると、よく「壊れていないなら直すな(if it ain’t broke, don’t fix it)」っていうフレーズを耳にしたわ。このことわざ、文法的にもちょっと足りなくて、オーストラリア人は(政治にも言い回しにも)無関心っていうステレオタイプを助長するだけだと思うけど、現状維持でいいっていう人も結構多いのよね。
 退屈していない !? 私の友達にも、この辺りまでで退屈しちゃう子が多いのよ(ただ、公平を期して言うと、この議論に熱心な人もそれなりにたくさんいるわ)。でも、「共和制」議論そのものはちょっと疲れるって思われがちだけど、関連する話題には数多くのオーストラリア人(老いも若きも)が熱くなるものが結構あるのよ。
 それって本当に、割と当たり前のことなの。私の知る人のほとんどが、共和制論争の中でも、自身の日常生活に影響することや愛国心を刺激されるもの、オーストラリア人としてのアイデンティティーについて長く信じられてきたことが脅かされるような事態については、関心を寄せているわ。
 でも、今でも覚えているけど、共和制移行の動きで残念だって思ったことの1つは、大事なクイーンズ・バースデーのお休みがなくなってしまうことだったわ ! 楽しみがまた1つ消えてしまう ! ってね。当時の幼かった私たちは、共和制になればその代わりに「共和制の日」とかの祝日になるだろうということには気付かなかっただけなんだけど、もし本当にオーストラリア人の愛する休日をもぎ取ることになったら、大騒動になるわよ !
 もう1つは国旗ね。今の国旗はユニオン・ジャックを基にして、南十字星が描かれているわ。ユニオン・ジャックはイギリスの旗で、オーストラリアの「植民地化」(「侵略」と呼ぶ人もいるわね)を表現している。ユニオン・ジャックを含めた立憲君主国のシンボルを、大英帝国主義の象徴と見る人も多いわ。
 確かにオーストラリアの歴史の一面を表しているけれど、私の考えでは、些細なことに過ぎないと思うのよね。一方で、国旗を変えることは、過去にガリポリやトブルクでの戦争で「国旗の下」に戦ったすべてのオーストラリア人軍人に対する侮辱だ、という議論もあるわ。
 もしオーストラリアが共和制になってもユニオン・ジャックの国旗があるとすると、現代オーストラリア人のアイデンティティーの議論がさらに激しくなるだけなのでは、と考える人もいるでしょうね。
 自国の旗に他国の旗を割り込ませることがいいことだとは思えないけど。私は正直言って、国旗とともに今の通貨も含めて女王のシンボルがついている数々を変えてほしいと願っているの。そのついでに、あのとんでもない国歌「アドヴァンス・オーストラリア」も変えてほしいわ(すごく退屈だし、歌うのが難しいのよ)。
「近いうちに次の国民投票を」という話は出ていないわ。イギリス連邦諸国でのエリザベス女王の人気こそが君主制をこれほど長く存続させているとも言われているけど、だからと言って、毎年6月第2週に女王のために念入りに準備したパーティーを開こうとするかしら ? そんな人いるのかしら ? それとも、ただお休みの日が好きなだけ ? とにかく私はこの記念日を目一杯楽しむつもり!
今月の気になるフレーズ
Give me a fair go!
フェアにいきましょう !

 このフレーズ、オーストラリアではとってもよく使われるの。皆さんもきっと、あちこちで耳にすると思うわ。「Fair」という単語をよく聞いたり、見たりするでしょう ? 特に政治の場とか職場とかで。
 これは、オーストラリアが“ラッキー・カントリー(幸運な国)”であるという認識に基づいたものなの。この「ラッキー・カントリー」は“明るい気候と天然資源に恵まれた国”という意味で使われることが多いけど、本来は、“誰もが皆、人種や性別、年齢などにかかわらず、平等に機会を得られる国”ということね。もちろん現実には常にその通りにいかないこともあるけれど、オーストラリアの最も大切な価値観の1つと考えられているのよ。
 中傷や侮辱、不公平な扱いなどに対する返事として、「フェアにいこうぜ(Fair go, mate)」というフレーズを聞くこともあると思うわ。つまり、「人の言うこともちゃんと聞いて判断してくれよ」と、誰もが考慮してもらう権利がある、ということね。そう言われたら、back off(引き下がって)ね。


プロフィル
Samantha Holland

シドニー大学ではジャーナリズムとコミュニケーション学を専攻。「シドニー・モーニング・ヘラルド」紙の書評コーナーに記事を寄稿するほか、本紙別冊の英字誌「jstyle(ジェイスタイル)」では編集長という大役も務める23歳。

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