【WH日記】道行く人を魅了する書道アート – 岩見敏樹さん

みんなの「ワーホリ・ダイアリー」

道行く人を魅了する書道アート

第56回 今回登場のワーホリ・メーカーは?

岩見敏樹さん


1995年生まれ・大阪府出身
立命館大学在学。3年次終了後に休学、ワーキング・ホリデー制度を利用し2016年7月に来豪。ファーム・ジョブを経て2年目の滞在となった18年3月より書道の路上パフォーマンスを開始。現在はシドニーCBDを中心に市内の複数の場所で活動中(Web: www.instagram.com/toshi_bsk51


ある週末の昼下がり、シドニー市内中心部のショッピング通り「ピット・ストリート・モール」で書道のバスキング(路上パフォーマンス)を行う岩見敏樹さんの周りには、大きな人だかりができていた。

「あなたの名前をそこに」、その言葉と共に手渡されたノートに名前を書くと、躍動感溢れる書道のアート作品が瞬く間に完成する。かけがえのない宝物を受け取った――。作品を手にした人は皆、そんな幸せそうな表情を浮かべていた。

現在、2年目のワーキング・ホリデー生活を送る岩見さんは元々、将来への足掛かりを得ようと大学を休学しオーストラリアの地にやって来た。

「大学入学の年に東京五輪の開催が決まり、就職のころには英語力が必要になると考えたことや、海外生活で日本ではできないような経験を積みたいと思い来豪しました。特別なビジョンがあったわけではなかったんです」

2016年7月に来豪したが、日本での就職活動のスケジュールを考えると1年に及ぶ長期滞在のプランはなかった。半年か7カ月、年が明ければ帰国し復学する予定だった。しかし、帰国が目前に迫ったタイミングで岩見さんはバスキングについて知り大きな感銘を受けた。

「街中で見掛けていたので何となく存在には気付いていましたが、日本人の知り合いを通じて詳しく知りました。彼も書道のパフォーマンスをしていて、話を聞けば聞くほど『面白そうだ。自分もしてみたい』と感じました。その活動をするのであれば休学期間を延ばし、更に長く滞在しても良いと思えたんです」

ファーム・ジョブを終え、セカンド・ビザでの2年目の滞在となった今年3月中旬、書道のバスキングを当時滞在していたQLD州で開始した。自身も書道を選んだ理由を「他のパフォーマーに埋もれないよう、日本人であることを生かし差別化を図りました」と語る。路上での活動の大変さは周りのパフォーマーから聞いていたというが、それでも滞在の延長を決心させたほどの強い好奇心が岩見さんの背中を押した。

人の善意という財産

作品は基本的に無料で、好意でチップを受け取る形で行われている岩見さんのバスキング。現在はチップの収入だけで生計を立てられるほど安定した活動を行えているそうだが、活動開始当初に得られた成果を、岩見さん曰く「惨憺(さんたん)たるものだった」と振り返る。

ピット・ストリート・モールでの書道のバスキングの様子
ピット・ストリート・モールでの書道のバスキングの様子

「4時間パフォーマンスをしても、たったの3ドルしか稼げませんでした。1時間で1人からしか声を掛けてもらえず、活動を全く認知してもらえていない状況だったんです」

また、本格的な書道の経験がほとんどなかったため、「人には決して見せられない下手さ」と語るほどだった腕前を磨くことにも苦労したという。

「最初は練習も兼ねて1日最高200枚ほど書いていました。それを毎日続け、1カ月が経ったころには自分なりのスタイルを確立でき、チップをもらえるほど作品のクオリティーが向上しました」

そうした努力に加え、通行人に見慣れてしまうことがないよう、冒頭の場所以外にビーチやショッピング・センターなど活動場所を複数ローテーションさせる工夫により、現在の成果を手にできるようになった。ただ、岩見さんにとって活動を通して得た最大の成果は、経済的な部分とはまた違うところにあった。

「バスキングをする中で、作品を蹴られるなど理不尽なこともありましたが、人の善意の方をより多く感じてきました。人の優しさをしっかりと受け止められる自分に成長を感じられた気がします。それがバスキングで得た一番大きなことだったと実感しています」

残り限られたワーキング・ホリデー生活を終え帰国すると、社会人として羽ばたくための新たなステージが始まる。その先の未来は、来豪前とは違い確かな自信と共に思い描かれている。

「自分の努力次第で収入や人の喜びを得られる活動をしたことで、自信が付きましたし、心から楽しむこともできました。最初はどこかの企業に就職すると思いますが、ある程度の経験を積んだら、今回の経験を思い出しビジネスなど、何かを一から自分の力で始めたいと考えています」

シドニーの路上から踏み出そうとしているその1歩は、力強い。

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