【WH日記】シドニーで選手育成の日々 ー 古賀康彦さん

第11回

がんばるワーキング・ホリデー・メーカーにフォーカス

みんなの「ワーホリ・ダイアリー」

オーストラリアでがんばるワーキング・ホリデー・メーカーを毎月紹介。

 

今回登場のワーホリ・メーカーは?

古賀康彦さん

1986年生まれ・兵庫県出身
ニュー・サウス・ウェールズ・プレミア・リーグ、ロックデール・シティ・サンズ育成コーチ。これまで兵庫県、大阪府、東京都の高校やクラブ・チームで指導。バルセロナでの留学・指導、早稲田大学大学院を卒業後、現チームの指導に携わる。

 

シドニーで選手育成の日々

昨シーズンまでAリーグで活躍していた小野伸二選手の存在を筆頭に、オーストラリアで活躍する日本人が増えている。彼らの活躍もあり、オーストラリアのサッカー界は日本人にとって身近で魅力的なものになりつつあるようだ。今回紹介するのはニュー・サウス・ウェールズ・プレミア・リーグ所属、ロックデール・シティ・サンズでコーチとして活躍する古賀康彦さん(28)。オーストラリアの地で選手育成に取り組む古賀さんに興味深い話を伺った。

日本での活動、そしてオーストラリアの地へ

古賀さんは先天性の心疾患のため高校1年生の時に選手からコーチへと転向、兵庫県、大阪府、東京都の高校やクラブ・チームで指導してきた。また、大学在学時はスペインに留学し、バルセロナのクラブ・チームで指導なども行ってきた。大学卒業後は早稲田大学の大学院でコーチング心理学を学ぶなど多彩な活動に取り組んできた。そして、オーストラリアのサッカーについての情報を得るうちに、現地で指導がしてみたいと思うようになり、今年2月に来豪を決意したという。「オーストラリアのサッカー・リーグは近年発展しており、魅力的に見えました。それに、自身の知り合いにオーストラリアでのプレー経験とコネクションを持つ方がいたことが来豪の大きな理由の1つです。また、大学院在籍時から英語力はスポーツ科学研究の中でも必須の能力だと感じましたし、英語を使った指導もできるようになりたいと思っていました。さらに、高校1年生の夏に海外に初めて行ったのですがその行き先がアデレードで、その時のオーストラリアの印象があまりにも素晴らしく、絶対にいつか帰ってきたいと思っていました」

オーストラリアでの活動で学んだこと

「第二言語でプレーヤーを指導するということがいかに難しいか、自分にどれくらいの負荷がかかるのかがよく理解できました。ほんの少しの語や句の誤用によってチームの雰囲気や選手の気持ちを誤った方向へ導いてしまうことが度々起こってしまうので、事前の準備に余念がありません。

また、母国語では反射的に発していた諸々の言葉ですが、英語では自分の感情をすぐに表現できないためタイムラグが生まれます。そのため自分のかけようと思っている言葉、自分の抱いている感情を客観的に見ることができ、それが指導者として良いのか悪いのかが評価できます。また、海外へ行けば自然とあらゆる能力が伸びるというわけではないことがよく理解でき、この地だから学べることを真剣に考えた上で行動することが望ましいと感じました」

このように、日本では経験し難い事柄を通じて、自身の研鑽を続ける古賀さんだが、この地で学びたいことに、スポーツを通じた人間教育を挙げる。

「日々、高校生などの指導にあたっていた時に、自分の指導は良いのか悪いのかを練習後に振り返ります。結局それをどこまでも抽象化していくと、スポーツが教育的にどのような意味を持つのかという側面を無視することはできません。端的にいいプレーヤーを育てたいという気持ち以外に、学校教育の中で教育ツールとして使われてきた体育という日本的な文脈は当然重要ですし、そのような公共性も維持したいです。そんな視点で見てみると、日本の部活動に関して疑問がある側面もあります。

例えば、ミリタリズムや武道の系譜に連なる行動規範は本当に教育的かどうか考える必要があると思います。サッカーの指導者には自分が理解し難い生徒を扱いやすい良い子にしようとする人がいます。これはパターナリズムの一種か指導者の自意識の問題だと感じますし、その結果、選手が大人になった時により重要な価値観を身に着けておらず、単に体裁を気にする人間がサッカー出身者に少なくないと思います。これまで日本の部活動の中でそれら古い規範意識に変わる、新しい価値を作ってこられなかったということが背景にあって、何を教えたらよいのか分からない指導者がますます古い行動規範にすがるというようなことが起きている感じがします」

日本で起きているスポーツと教育に関する今日的な問題に危機感を抱き、オーストラリアにおける同様の側面を古賀さんは必死に学び取ろうとしている。「旧来の行動規範の枠組みでは決して良い子と見なされない子でも、規範にとらわれないがゆえに稀有な経験を積んで将来的にすばらしい人間になるということが、私はあり得ると思っています。ですから、古い規範を1度自分の中で相対化し、ほかの事例を学ぶためにオーストラリアに来ました。現在はさまざまな年代カテゴリーに携わっており、この地において選手の人間性がどのように形成されていくかというのを必死に学んでいます」
 今回、古賀さんに話を伺い、日本ではなかなか学べないことに挑戦する姿がとても印象的であった。

今後もオーストラリアで活躍するワーキング・ホリデー・メーカーを追っていきたい。(編集部U)

 

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