2016年10月 ニュース/総合

スコット・モリソン連邦財務相
スコット・モリソン連邦財務相

景気後退なき成長、25年間続く

6月期GDP、前年同期比3. 3%増

オーストラリア経済は1991年4月〜6月期以来100四半期にわたり、リセッション(景気後退=2期連続のマイナス成長)を経験しないまま成長を続けている。オーストラリア統計局(ABS)が9月7日に発表した4月〜6月期の国内総生産(GDP)統計で明らかになった。

実質国内総生産(季節調整済み)は前期比で0.5%と1月〜3月期の1.0%から鈍化したものの、堅調な成長を維持した。前年同期比では3.3%増となり、連邦財務省やオーストラリア準備銀(RBA=中央銀行)が適度な水準と想定している「3%台半ば」をほぼ回復した。15/16年度の成長率は2.9%となり、連邦政府が16/17年度予算案(5月発表)の経済見通しで予想した2.5%を上回った。

オーストラリアのGDPはこの25年間、ITバブル崩壊後の2000年9月〜12月期、世界金融危機後の2008年9月〜12月期、2011年3月期の3回、前期比でマイナス成長を記録したが、いずれも2期連続のマイナス成長は回避した。

このまま17年4月〜6月期までリセッションに陥らなければ、オランダが1982年〜2008年に達成した103四半期連続の最長記録を更新する。

公共投資が成長下支え

最終消費支出は前期比で0.6%増加した。内訳は政府部門が1.9%増、家計部門が0.4%増とともに堅調だった。引き続き低調な資源投資を背景に、民間部門の投資は3.4%減となったが、政府部門の投資は15.5%と高い伸びを示した。

政府支出の大幅な増加について、7日付の公共放送ABC(電子版)は「政府部門の支出は成長率を前期比で1.0ポイント、前年同期比で1.2ポイント押し上げた。この影の景気刺激策がなければ、より弱い結果になっていた可能性がある」とのエコノミストの声を伝えた。

スコット・モリソン連邦財務相は会見で「インフラ支出は、雇用の促進と経済成長を図る我々の経済政策の中核を成し、経済の生産余力を拡大させるものだ」と述べ、インフラ整備の公共投資を成長の原動力とする考えを強調した。

リセッションの懸念遠のく

ちょうど1年前、中国発の世界同時株安「チャイナ・ショック」が発生し、オーストラリアが四半世紀ぶりにリセッションに突入するとの見方も出た。ところが、英国の欧州連合(EU)離脱などを背景に世界経済の先行きに不透明感が増しているにもかかわらず、足元ではリセッションの懸念は後退している。

金融緩和と財政出動の両輪がうまく奏功している可能性がある。RBAが政策金利を史上最低の1.5%まで引き下げて強力な金融緩和を持続。政府も実質的な景気刺激策と言える財政出動を行っている。豪ドル安が資源価格の下落による打撃をある程度相殺し、鉄鉱石などの輸出数量も堅調に推移している。

直近の主な経済指標(表)を見ると、低金利が内需を刺激していることがうかがえる。小売売上高や新車販売台数など消費は堅調に推移。建築許可件数は前年同月比で2ケタ増と、住宅建設は依然として活発だ。昨年までおおむね6%台で高止まりしていた失業率は5.7%まで下落してきた。

ただ、資源投資の縮小を背景に、設備投資の落ち込みに歯止めはかかっておらず、企業の収益も改善していない。インフレ率もRBAのターゲット(2〜3%)を下回っている。

ここ数年足踏みしていた景気が上向いていることは確かだが、他の主要先進国と同じようにオーストラリアが「緩和中毒」(金融緩和から抜け出せない状況)に陥りつつあることは否めない。

主な経済指標の伸び率

国内総生産 2016年3〜6月 0.5%(前期比) 3.3%(前年同期比)
2015/16年度 2.9%(前年度比)
小売売上高 2016年7月 0.1%(前月比) 2.7%(前年同月比)
建築許可件数 2016年7月 1.9%(前月比) 10.1%(前年同月比)
新車販売台数 2016年8月 0.1%(前月比) 0.9%(前年同月比)
消費者物価指数 2016年3〜6月 0.4%(前期比) 1.0%(前年同期比)
失業率 2016年8月 5.7%(前月と同じ。前年同月比0.4ポイント下落)
設備投資 2016年3〜6月 -3.8%(前期比) -15.2%(前年同期比)
企業の経常利益 2016年6月 0.0%(前月比) -4.3%(前年同月比)

(出典:オーストラリア統計局)


自称「イスラム国」(IS)に対する米国主導の空爆に参加しているオーストラリア空軍の戦闘攻撃機「F/A18Aホーネット」(Photo: Australian Defence Force)
自称「イスラム国」(IS)に対する米国主導の空爆に参加しているオーストラリア空軍の戦闘攻撃機「F/A18Aホーネット」(Photo: Australian Defence Force)

対シリア政府軍「誤爆」、豪軍も関与

国防省が作戦参加認める

米軍主導の有志連合が9月17日にシリア東部デリゾールで同国のアサド政府軍を誤って攻撃した作戦に、豪州国防軍も参加していたことが明らかになった。国防省が18日、作戦に参加していたことを認めた。有志連合は標的を自称「イスラム国」(IS)の部隊と誤認して空爆、公共放送ABCは最大83人のアサド政府軍兵士が死亡したとしている。

国防省は声明で、作戦に参加した航空機の中に豪軍の航空機も含まれていたと言明。「オーストラリアが意図的にシリア政府軍部隊を標的にしたことは絶対にない」と弁明した上で、「死亡または負傷したシリア政府軍兵士の家族に追悼の意を表したい」と表明した。

同省は、現時点では同作戦に関する詳細を一切公表していない。作戦に参加した豪州兵の数や豪軍機がどのように誤爆に関与したは不明。

ABCによると、アサド政府軍の後ろ盾になっているロシアは、アサド政府軍と戦っているISを利するものだとして、有志連合の誤爆に強く反発している。アサド政府軍は19日、反体制派への攻撃を再開しており、先の米ロの話し合いで実現した停戦合意は誤爆を機に崩壊している。

豪州は、戦闘攻撃機と空中給油機、早期警戒機を中東に派遣して有志連合の空爆に参加している。2014年10月にイラク領内のISの拠点に対して空からの攻撃を開始し、15年10月には攻撃対象をシリア領内に拡大した。現在、空爆要員約400人を含む兵士780人を対IS戦に投入している。


オーストラリア準備銀行の新総裁に就任したフィリップ・ロウ氏
オーストラリア準備銀行の新総裁に就任したフィリップ・ロウ氏

ロウ新総裁が就任

豪準備銀トップ、10年ぶりに交代

金融政策をつかさどるオーストラリア準備銀行(中央銀行=RBA)の新しい総裁に、前副総裁のフィリップ・ロウ氏が昇格した。2006年から2期10年間(2期目は3年間)総裁を勤めたグレン・スティーブンス氏の後任として、9月18日に正式に就任した。

ロウ氏の任期は23年までの7年間。通貨の安定と雇用の維持を図るため政府から独立した権限を持つ「通貨の番人」として、金融政策の舵を取る。08年以降の世界金融危機を乗り切り、資源輸出ブーム後の景気を下支えしたスティーブンス氏の金融緩和路線を基本的に引き継ぐ。

ただ、公共放送ABCテレビの経済番組「ザ・ビジネス」(9月22日放映)によると、「景気の現状に悲観的だったスティーブンス氏と比較すると、ロウ氏はどちらかと言えば個人消費や住宅市場、国内総生産(GDP)の現状に対して楽観的」(証券会社IGマーケッツのエバン・ルーカス氏)との見方が出ている。今後の景気次第では、緩和の踏み込み具合が微妙に変化する可能性もありそうだ。

なお、RBAは20日、新総裁の就任にともない、これまで金融市場担当の総裁補を勤めてきたガイ・デベル氏を副総裁に昇格させるなどの新体制を発表した。

トランプ米大統領就任の可能性に言及

シドニー市内マーティン・プレイスにあるRBA本店
シドニー市内マーティン・プレイスにあるRBA本店

ロウ氏は22日、シドニーで開かれた連邦下院経済委員会に証人として出席し、就任後初めて公の場でスピーチを行った。この中でロウ氏は、金融政策の枠組みについて、雇用の維持と金融市場の安定を図りつつ2〜3%のインフレ目標を達成する方針を踏襲する考えを表明した。景気の現状については、「6月四半期のGDPは前年同期比3.3%増と、1年前に多くの人が予想していたより良い状態にある。事業環境は改善し、雇用は拡大した。民間投資にもやや回復の兆しが見られる」と強調した。

一方、人件費が高騰した資源ブームの反動で、賃金の伸びは過去約20年間で最低の水準にあるとしている。商品価格の下落も手伝って、インフレ圧力は弱い状態が継続している。このため、金融政策による需要の下支えが引き続き必要だとして、追加利下げの可能性を排除しなかった。

今後は、引き続き低金利と豪ドル安の好影響を受けるとともに、資源投資の落ち込みは次第に下げ止まるとの見通しを示した。

質疑応答では、ドナルド・トランプ氏が米大統領選に勝利した場合の金融市場への影響について聞かれた。これに対してロウ氏は「世界の金融システムは金融危機後に非常に強くなり、英国の欧州連合(EU)離脱決定の際も回復力を見せた。同じように、トランプ大統領が誕生したとしても対応できるだろうが、なりゆきを注視していく」と答えた。オーストラリアの中央銀行のトップが他国の大統領候補について言及するのは異例と言える。

MITでクルーグマン教授に師事

ロウ氏はNSW州西部ワガ・ワガ出身の55歳。高校卒業後、1980年RBA入行。事務職として勤務しながら、ニュー・サウス・ウェールズ大学の夜間コースに通い、85年学士号(経済学)取得。後に、リフレ政策の提唱者として知られる米経済学者のポール・クルーグマン教授(ノーベル経済学賞受賞)に師事し、米マサチューセッツ工科大(MIT)で91年博士号(経済学)取得。国内市場部長、経済分析部長、総裁補佐などを経て2012年から副総裁。今年5月、スコット・モリソン連邦財務相に新総裁に任命された。


炎上事故が頻発したためサムスン電子がリコールを行っている「ギャラクシー・ノート7」
炎上事故が頻発したためサムスン電子がリコールを行っている「ギャラクシー・ノート7」

真夜中にスマホ炎上ーサムスン電子の「ギャラクシーS6」

QLD州でスマートフォン(スマホ)が就寝中に炎上する事故があった。公共放送ABC(電子版)が9月7日、報じた。

QLD州でスマートフォン(スマホ)が就寝同州南東部サンシャイン・コーストに住むシャーリーン・オーチャードさんは韓国サムスン電子のスマホ「ギャラクシーS6」を充電して眠りについたが、午前2時ごろに部屋に煙が充満しているのに気付いて飛び起きると、スマホは真っ赤な火を吹いて炎上していた。オーチャードさんは燃える端末を外に放り投げ、延焼を防いだ。部屋には4歳の娘とペットの犬も一緒に寝ていたが、幸い誰にもけがはなかったという。

QLD州でスマートフォン(スマホ)が就寝オーチャードさんは「電話自体の問題ではなくて、電池や充電の問題だとすれば、(どの機種であっても)時限爆弾を抱えて歩いていることになる」とABCに述べた。「ギャラクシーS6」よりも新しい機種「ギャラクシー・ノート7」は、世界各地で炎上事故が相次いでいる。現地法人のサムスン電子オーストラリアは同月5日、国内でこれまでに販売した同機種5万1,060台のリコールを発表した。未回収の端末については、ソフトウエアを更新して電池の充電容量を60%以下に制限する措置を採った。同機種を使用している人には、購入店で交換または補償を受けるよう呼びかけている。


日系損保の旅行保険に最高評価
東京海上日動の「World2Cover」(ワールド2カバー)

金融商品の比較サイトを運営するブリスベン拠点の「キャンスター」(CANSTAR)は8月18日、最も費用対効果が高い旅行保険に与える2016年の「アウトスタンディング・バリュー・トラベル・インシュランス賞」の選考結果を明らかにした。同賞では、4部門のうち海外と国内の旅行保険の2部門で、日本の損保大手、東京海上日動の旅行保険「World2Cover」が最優秀賞を受賞した。

審査対象は、オーストラリア国内で75社が販売している87の国内旅行保険と225の海外旅行保険。独身者、カップル、子ども2人の家族の3つのケースについて、緊急時のサポート体制、海外旅行中の契約期間延長の可否、海外旅行中の治療・入院費の補償上限額などさまざまなカテゴリーごとに、サービスの充実度を精査した。

その結果、World2Coverは海外旅行保険部門で「ほぼすべての状況で補償が受けられる、包括的に充実した商品を提供している」とした。国内旅行保険部門でも「25歳まで扶養家族の追加料金がかからないこと」などを高く評価した。

東京海上日動の在豪法人で副最高経営責任者を務めるクローディア・サイタ氏は、保険業界のニュース・サイト「インシュランス・ビジネス」(8月25日付)で「リーズナブルな価格であるだけでなく、当社の理念である、『全ての人や社会から信頼される良い会社であること –To Be a Good Company』と日本の『おもてなし』の心を反映した安心いただけるサービスを提供いたします」とコメントした。

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