2018年5月 ニュース/総合

資源大手BHPのWA州ニューマン鉄鉱石鉱山。資源輸出が豪州経済の成長を支えてきた(Photo: BHP)
資源大手BHPのWA州ニューマン鉄鉱石鉱山。資源輸出が豪州経済の成長を支えてきた(Photo: BHP)

資源・エネルギー輸出、過去最高へ

2017/18年度――連邦政府見通し

ブームの終わりが叫ばれて久しい豪州の資源輸出が、ここにきて持ち直してきた。連邦産業・イノベーション・科学省が4月6日に発表した四半期報告書によると、2017/18年度(17年7月~18年6月)の資源・エネルギー輸出額(予測)は、物価変動を考慮した実質値で2,295億9,300万ドルと前年度比で10.3%増え、過去最大となる見通しだ。

生産が本格化してきた液化天然ガス(LNG)の伸びが全体をけん引する。石炭価格の上昇や鉄鉱石輸出量の増加、原油価格の回復などの要因も増加に寄与する。

主な商品別の輸出額は、最大の鉄鉱石が約653億ドル(2%増)、製鉄用の原料炭が約399億ドル(11%増)、LNGが304億ドル(34%増)、主に発電用の一般炭が229億ドル(19%増)などとなっている。5年後の22/23年度には、LNGの輸出額は388億ドルに達し、原料炭(336億ドル)を抜き、鉄鉱石に次ぐ規模に拡大する。

16/17年度の実績で見ると、豪州のモノとサービスの輸出額全体の約53%、モノの輸出額の約68%をそれぞれ占めた。輸出市場別では中国が約780億ドルと最大で、次いで日本(360億ドル)、韓国(160億ドル)、インド、欧州連合(EU)28カ国(共に110億ドル)の順に多かった。

資源産業の成長は20年に終了!?

豪州の資源・エネルギー輸出額は資源価格の低迷を背景に14/15年度、15/16年度と2年連続で前年度を下回った後、16/17年度に増加に転じた。増産が著しいLNGが主導する形で17/18年度も回復傾向が鮮明になったが、今後は頭打ちとなりそうだ。

産業・エネルギー・科学省のマーク・カリー主席エコノミストは報告書の中で「輸出額は現在の水準からやや減少した後、19/20年度以降はおおむね2,120億ドル~2,160億ドルで水平飛行するだろう」と展望した。

中国などの新興国の経済発展を背景に、資源・エネルギーの国際価格は00年代前半から急激に上昇した。豪州は資源輸出と投資の両面で大きな恩恵を受け、先進国の平均を上回る息の長い経済成長を達成した。

しかし、その後の中国経済の減速などを背景に、世界市場の商品価格は11年ごろをピークに下落に転じた。豪州の資源プロジェクトへの投資額も12年に天井を打ち、18年の時点でほぼ5分の1(同省)の水準まで縮小した。

カリー主席エコノミストは「11年のピークを過ぎても、資源ブームの果実を長年にわたって享受し続けている」と主張した。その上で、◇主なLNGプロジェクトが今年後半に完成すること、◇18/19年度以降に鉄鉱石の輸出量拡大にブレーキが掛かると見られること、◇石炭、金、他の金属の輸出も減速が予想されることから、同氏は「豪州の資源・エネルギー産業の目覚しい成長は20年に終わる」と指摘した。


首相、EUとFTA締結に意欲
保護主義の動きけん制

欧州を歴訪したマルコム・ターンブル首相は4月24日、ベルリンでドイツのメルケル首相と首脳会談を行った。メルケル首相は豪州と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)を支持すると表明し、ターンブル首相がこれに謝意を示した。連邦首相府が同日、発表した。

ターンブル首相は会談に先立ってベルリン市内で講演し、豪EU・FTAに強い意欲を示した。首相は「中国の統制経済下の国家資本主義と、米国の保護主義への傾斜という2つの大国の緊張が、国際法と判例に基づいた世界貿易機関(WTO)に試練を与えかねない」と述べ、世界的な保護主義の動きをけん制した。

その上で、首相は「(豪州とEUの)FTAは、市場アクセスの拡大にとどまらず、公平で開かれた透明な競争をもたらす強固なルールに基づいた市場統合を目指す」と主張した。

豪州とEUは2015年11月、FTA締結に向けた準備を始めることで合意。これまでに共同研究を終了したが、交渉開始には至っていない。


高層マンションの建設ラッシュが続くシドニー南郊ウォーライ・クリーク
高層マンションの建設ラッシュが続くシドニー南郊ウォーライ・クリーク

住宅ブームに一服感も底堅さ

シドニーの下落幅は縮小傾向

豪大都市圏を中心とした不動産高騰が、ここにきて沈静化の兆しを見せている。不動産情報大手コアロジックによると、全国平均の住宅価格指数は2017年9月のピークを境に、下落に転じた。ただ、最大都市シドニーでは下落幅が縮小傾向にあり、底堅い需要を背景に市況は堅調に推移しそうだ。

コアロジックが4月3日に発表した3月のシドニーの住宅価格指数は前月比で0.3%下落した。1~3月の3カ月では前期比で1.7%、前年同月比では2.1%、それぞれ低下した。だが、前月比の下落幅は1月0.9%、2月0.6%、3月0.3%と縮小傾向が続いている。

00年代から高騰してきたシドニーの住宅価格の中央値は、87万8,325ドル(3月)と依然として史上最高値圏内にある。住居のタイプ別では、戸建て(中央値103万3,892ドル)の指数が前月比0.5%下落したものの、集合住宅(マンション=同75万6,557ドル)の指数は前月比0.1%の上昇に転じた。

コアロジックによると、シドニーとメルボルンでは、マンション価格の上昇幅が戸建てを上回る傾向が17年中頃から際立っているという。3月のシドニーの戸建て価格は前年同月比で3.8%下落した一方で、マンション価格は前年同月比で1.9%上昇。同社は「シドニーとメルボルンでは、他都市と比較して、住宅購入が著しく困難になっている」と分析した。

遠のくマイホームの夢

若いうちにローンで小さなマンションを買い、収入と家族が増えるにしたがって広い家に買い替えていく――。そうした一般的な豪州人の資産形成のシナリオが、少なくとも大都市圏では崩壊しつつある。

シドニー中心部から南東へ車で約20分。東部郊外にある海沿いの町、マルーブラの一角にある住宅街ではこのほど、中古の戸建ての中央価格が220万ドル(地元不動産業者)を超えた。

「そんなに高額の家を誰が購入できるのか?」――。高騰前に移住し、このエリアに戸建てを購入した香港人男性(56)も首をかしげる。先進国でも屈指の所得水準を誇る豪州でも、一般的な勤労者にとって、日本円で約2億円もするマイホームは現実的とは言えない。

住宅高騰の波は周辺部にも及ぶ。南部郊外の幹線道路沿いにある高層マンション建設予定地。航空機や車の騒音が大きく快適な環境とは言えないが、「2ベッドルーム:最低価格72万5,000ドルより」との看板が立つ。元々、工場や倉庫だった広い敷地が多く、高層マンションの建設ラッシュに沸いている。

周辺は中東系移民が多い庶民的な住宅街だが、新築マンション群に移り住む新しい住民は圧倒的に中国系が多い。不動産業者の看板には中国語の宣伝文句が踊り、中華料理のレストランや食料品店が次々とオープンしている。

規制強化は「両刃の剣」

一定の移民受け入れと先進国としては高水準の出生率を背景に、豪人口は3年に約100万人のペースで増え続けている。海外や地方からの移住者がシドニーとメルボルンへ集中し、住宅価格の高騰につながった。

「ファースト・ホーム・バイヤー」(初めて家を買う人)と呼ばれる若い世代を中心に、家を買えないことへの不満が高まり、その解消は近年の重要な政治課題となった。高騰の背景には外国人の不動産投資熱もあり、「中国人のせいだ」という通説も浸透している。

このため、政府はここ数年、非居住者の不動産取得規制を強化し、ローン審査基準を厳しくするなどの対策に乗り出した。過去数カ月の市況の沈静化を見る限り、一定の効果を挙げた格好だ。低所得者の住宅ローンに対する国の債務保証や、安価な住宅建設の促進などの政策も与野党で議論になっている。

ただ、豪州では元々持ち家率が高いため、供給を増やすことで有権者の資産価値を下げるような施策は採用しずらいのが現状だ。小売など他産業への波及効果が大きい住宅産業が落ち込めば、景気や雇用への悪影響も心配される。政府は大胆な住宅価格政策に踏み込めないというジレンマに陥っている。


契約飲食店とのトラブルが報じられているウーバー・イーツ
契約飲食店とのトラブルが報じられているウーバー・イーツ

アプリで出前、需要急拡大

飲食店に不利な契約も

オーストラリアでスマートフォンのアプリを利用した食事の宅配サービスが急速に普及している。ピザの宅配を除くと、元々日本の「出前」のように温かい料理を配達する文化はなかったが、ここ数年、米配車サービス大手「ウーバー・イーツ」や、地場の「デリバルー」などの車やバイクが街に目立つようになってきた。

経済紙「オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー」が米金融大手モルガン・スタンレーの調査結果について報じたところによると、これらのスマホ・アプリによる宅配サービスの取引額は年間6億ドル以上に達している模様だ。

現在、豪州のオンライン宅配サービスの普及率は10%程度と、英国の34%と比べて低いとされる。このため同社は伸びしろは大きいと見ており、7年後の2025年には24億ドルの規模に拡大すると予測している。

オンライン宅配サービスの普及に伴い、調理施設だけを備えた「ダーク・キッチン」も増えている。客席もウェイター・ウェイトレスもいないキッチンでシェフが黙々と調理し、配達人に料理を渡すだけの新業態だ。

既存の飲食店にとってもオンラインで新規の需要を幅広く取り込むチャンスだが、トラブルも増えている。4月22日付の公共放送ABC(電子版)によると、ウーバーは優位な立場を利用して飲食店に不公平な契約を結ばせており、消費者法に違反している可能性があるとの指摘も出ている。

これによると、ウーバーは飲食店の売上の35%をアプリの利用手数料として徴収。運転手の落ち度で配達が遅れて料理が冷めたり、劣化したりした場合も、原則として飲食店側に弁償させているという。ウーバーはあくまでも「アプリ提供者」の立場で、契約上、配達の責任は負わないとされる。

配達の遅れが原因で冷めてまずくなった料理を食べた客が、ネットに店を批判するコメントを書き込んだために評判が落ちたことから、ウーバーとの契約を打ち切った飲食店経営者もいるという。オンライン宅配サービスが広く定着するまでにはまだ紆余曲折がありそうだ。

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