日韓100年、日米同盟50年

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日韓100年、日米同盟50年

敗戦65年の夏に考える

文=青木公

日本の敗戦後、65年。明治以来、65年間も戦争がなかった時代はない。そんな平和国家で、日米同盟50年、日韓併合100年の夏だった。オーストラリアで暮らす邦人やワーホリ世代には、歴史の教科書に出てくる過去かもしれないが、改めて近現代史のおさらいをした。

8・6、原爆記念日の広島平和記念式典に、初めて、米国のルース駐日大使が出席。国連の藩基文(バン・ギムン)事務総長が初出席して、各国メディアが取材、国際ニュースとなった。米国のクリントン国務長官は、「米国大使のヒロシマ出席は、謝罪のためではない」と敢えて発言せざるを得なかった。

日韓交渉で韓国外相でもあった藩事務総長は、長崎も訪問。「ヒロシマ原爆の時、1歳だったが、少年時代に朝鮮戦争を体験して、戦争の惨禍を知った」と語り、日本人の共感を呼んだ。

ルース米国大使の式典参加は、昨年2009年春、オバマ大統領がプラハで核兵器の廃絶を宣言した結果だ。同大使は、慰霊碑への献花や、記者会見もなく、足早に新幹線で帰って、堅い表情からぎこちなさを感じさせた。

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原爆記念日の広島平和記念式典で献花する藩基文国連事務総長(Photo: UN / Eskinder Debeb)

オバマ反核大統領の影

筆者は1963年の夏、広島勤務だった。当時は、原水爆廃絶の集会が2つ行われ、良い核実験と、そうでない核実験が論じられていた。社会主義のグループは、米国の核は悪であると言い、人道派の反核グループを批判した。米ソ対立の時代で、中国はソ連を支持して、被爆者や一般市民は、しらけていた。朝鮮半島出身の在日の人々も被爆したが、冷戦に巻き込まれて、分断された。

今年の広島平和記念式典には、英、仏も、65年にして初めて駐日代理大使を出席させた。オバマ反核大統領の影響は大きかった。市民運動出身の日本の菅首相は「核の傘は、日本の安全保障に欠かせない」と日本同盟の絆を表明せざるを得なかった。沖縄の在日米軍、普天間基地の移転課題を抱えての発言だった。

日米同盟50年とは、1960年(昭和35年)に占領下で結ばれた日米安保条約を改定してからの歳月。いわゆる60年安保反対デモの中で、東大女子学生1人が死亡。岸信介首相は退陣に追い込まれた。以降、経済成長の時代に変わって、安定した日本社会が生まれた。

昨夏の民主党政権の登場で、日米同盟は揺らぎ始めた。鳩山前首相は、対等の同盟を目指して、沖縄の米海兵隊基地の国外移転を図ったが、ざ折した。菅政権は苦境に立っている。沖縄の米軍基地は、中国と北朝鮮の台頭で、重要性を増している。沖縄県外への移転は、さらに難しくなっているからだ。

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献花する市民や被爆者(Photo: UN / Eskinder Debeb)

首相の反省談話もめる

日韓併合100年。日本は1910年8月22日に日韓条約に調印。国号を朝鮮と改めた。実際には1905年、日露戦争の講和条約で、韓国の外交権を日本がとり、満州国(今の中国北東部)を日露で分割するという密約を結んだ結果だった。1905年に、日本の初代首相だった伊藤博文が、韓国総督になって、総督府を設立。朝鮮独立派の民族主義者を大量に検挙した。

台湾は、日清戦争の結果、斜陽の清朝から日本が領有したが、朝鮮半島は日露の密約で独立を失った。朝鮮では、日本のシンボル伊藤博文が暗殺されるという事態になり、日韓関係が現在も時としてぎくしゃくしている。

日韓基本条約は1965年6月25日、佐藤栄作首相が調印した。日本は5億ドルの経済協力金を支払い、韓国は賠償を求めない、という条件だった。韓国は、それを資金に経済発展に成功した。

民主党の菅首相は、併合100年を機会に植民地支配への反省を盛り込んだ首相談話を出そうとした。自民党の谷垣総裁は「果たして必要か、疑問だ。不用意にやると、賠償問題がむし返されるのではないか」と反発。日本側の心根が表れた形だ。結局、管首相は「反省とおわび」メッセージを送り、韓国大統領は受け入れた。未来志向へ望みをかけた。

日本にある朝鮮人学校の高校生に対して、日本の高校並みに授業料をただにするという民主党政府の方針への賛否でももめた。朝鮮人学校は、北朝鮮系といわれる。邦人の拉致問題に絡めて、北朝鮮への複雑な感情は無視できない。北との講和条約さえない。併合へのけじめはつけようがない現状だ。

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被爆のシンボル原爆ドームは歴史遺産

かつて北朝鮮の女性工作員だった、キム・ヒョンヒを日本に招き、拉致家族と会わせた件でも、担当閣僚は批判されたほど。北への不信は根強い。

伊藤博文とペ・ヨンジュン

奈良時代、朝鮮半島から新技術や仏教が入ってきて、日本の国際化に渡来人が活躍したという故事がある。近代では摩擦の100年だが、今は北東アジアの安定には日中韓の協力は欠かせない。NHKと韓国KBSの共同調査によると、韓国で有名な日本人は伊藤博文、日本で著名な韓国人は、ドラマ冬ソナの男優ペ・ヨンジュンだ、という。何とも落差が大きな双方の歴史認識ではないか。


筆者紹介・青木公(あおき・ひろし)

朝日新聞社友。日豪プレス創刊時に朝日新聞シドニー支局長。定年後、東南アジア、中南米、アフリカ大陸などの途上国を毎年、訪問・取材。現在、国際協力機構(JICA)サポーター。著書に『ODA最前線』『中高年、はつらつと海を渡る』『ブラジル大豆攻防史』ほか。海外日系紙に寄稿

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