蒋介石の島から「一中一台」へ

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蒋介石の島から「一中一台」へ

台湾への旅②
東シナ海の波高く

文=青木公

2010年9月、台湾を再訪した。9月4日は日本軍が国民党軍に降伏文書を署名した解放記念日だ。蒋介石の国民党軍は、毛沢東の中国共産党軍に追われて、台湾へ移った。9月末になって、台湾に近い沖縄・尖閣諸島で捕まった中国漁船を巡り中国と日本が激突。東シナ海は緊迫の海となり、台湾の人々はじっと見守っている。日中の歴史を学んだ10日間の旅だった。

前回、日豪プレス5月号で、中国と台湾の経済協力枠組み協定(ECFA)締結を紹介したが、6月24日に合意文書が交わされた。中国本土と台湾は海を隔てた両岸関係という。その両岸が結びついた。

対日戦争では、『国共合作』といって、蒋介石将軍の国民党と、ゲリラ組織だった中国共産党が協力して、日本に勝った。米国の軍事援助があっての勝利だったが、両党による内戦が起きて、国民党は敗れて、台湾へ落ち武者となった。

武力解放から経済協力へ


蒋介石をまつった中正記念堂で衛兵の交代。後ろは蒋の座像

時は流れて、中国本土は世界の大国へ。台湾は国際社会の孤児となってしまった。しかし、経済的には、台湾が中進国として繁栄した。台湾の投資家は、中国本土に合弁企業を作って稼ぎ、対米輸出で、中国を経済パワーに成長させた。台湾マネーは、影武者となった。

中国は台湾を武力解放しようとしたが、今は共存しているかに見える。台湾は、『一中一台』といって、別の国家だと主張する。一方、中国本土の北京政府は『1つの中国』政策で、台湾は中国の一部扱いしている。

現在の国際情勢では、中国は台湾を攻撃して占領はできない。米国も、台湾に武器援助して、中国を牽制している。台湾は、豊かな農業とIT技術に支えられて、民主的な国家として自立している。

こういった共存関係から経済協力の枠組み協定(ECFA)へ一歩進んだ。中国と台湾が関税を下げて2013年にゼロとする。銀行、保険、医療サービス分野で、台湾が中国市場に進出できるようになった。中台関係は緊密なものになった。

歴史の皮肉で、蒋介石系の国民党が中国寄りとなり、野党の民主進歩党や、国民党の名リーダーだった李登輝・元総統は「台湾が中国に呑み込まれる」と猛反対。国会の承認を得られるか分からない。民進党は台湾独立派でもあるから、北京政府にとっては頭が痛い。

両岸関係はECFAの時代へ

台湾の人々と話をすると、両岸関係は国境を感じさせない。双方の旅客機は自由に行き来しているし、台湾の人は本土に遊びに出かけ、中国人も台湾観光にやって来て、台湾がリッチなのを知って驚く、といったのが実態だ。中台はもう一体化しているといえよう。

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国民党による弾圧の犠牲者を悼む碑。平和公園で

日台間を結ぶ台湾系の旅客機のアナウンスは、北京語、台湾語、日本語、英語で、東アジアは結びついているのを感じた。台湾人や中国人は日本にショッピングに来ている。日本人は、台湾の温泉に入り、日本式の新幹線で台湾1周の旅や味覚を楽しんでいる。

台北滞在中の9月7日に、中国漁船が日本の海上保安庁の警備艇につかまり、中国の潜水艦が沖縄周辺に現れたりで、台湾のメディアでも大きく取り上げられた。台湾のメディアは、中国メディアと同じように、日本を非難するといった形で、チャイニーズ・ピープルは一体なのかと感じた。

同じ時、台湾メディアでは、いったい台湾の国語は何なのかという論議を載せていた。北京語なのか、台湾語なのか、先住民(高地人)の言葉なのか。台湾人といっても、蒋介石とともに台湾に逃げてきた外省人と、むかし台湾に移ってきた中国南部の人々の末えいの本省人がいる。そしてポリネシア系の先住民…。人口2,300万人の台湾人の背景は複雑なのが、対日戦勝利の日に改めて分かった。

日中摩擦で東シナ海荒れ気味

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台北一の超高層ビル101。高さ508メートル

台湾島のすぐ東側に、日本の与那国島が浮ぶ。中国漁船が日本に捕まった尖閣諸島と、東シナ海の波風は荒く、9月末になって中国政府は日本に謝罪と賠償を求め、日中関係は極めて悪化した。中国は同海域を「青い大陸」と称して、大国意識を丸出しにした。

台北では、TVは地元各局とCNN、NHKが観られる。日本語が通じる人、店は少なくない。台北の目抜き通りには、日本系のSOGO百貨店があって、開店時には、店員が最敬礼のおじぎで出迎え。

9月11日、米国のCNNテレビは、NYテロ9周年のニュースで溢れた。フロリダの牧師が、イスラムの経典コーランを焼くと言った騒ぎだった。台湾では、蒋介石の国民党が進駐してきた時、親日派の台湾人を殺すテロが横行した。台北の平和公園には、国民党軍に殺された受難者の慰霊碑が建っていた。台湾の別名、うるわしい島には、似つかわしくない出来事だった。

今の台湾は、経済的に中国に統合されながらも、自立、民主、平和の島だ。

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