私の福島滞在記 オーストラリア人の復興への思い

東日本大震災特集

 

東日本大震災1周年 特別寄稿

私の福島滞在記

オーストラリア人の福島復興への思い

東日本大震災で地震と津波の大きな被害を受け、さらに福島第1原子力発電所事故という2次災害も起こり、そのつめ跡が今もなお残る福島県。そこに、2人のオーストラリア人女性が訪れ、1人は現在も外国語指導助手(ALT)として福島市に滞在している。彼女たちは現在の福島をどう捉え、何を感じたのか。本紙に特別寄稿してもらった。

皆人間だからこそ、困った時には助け合いたい

ハイジ・ブレスラーさん

特別寄稿
市内で行われた剣友会に参加(左から2番目がハイジさん)

TAS州在住のハイジさんは、日本政府の外国青年招致事業「JETプログラム」の元参加者で、2003年から5年間、福島県いわき市で国際交流員や、地域の小学校でALTとして勤務。日本の震災を受け、外務省と観光庁が企画した元JET参加者を対象とする「被災地招待プログラム」で9月17〜26日、いわき市に“里帰り”した。

滞在中は、大きな被害を受けた家庭を訪ねる機会もあったと言う。

「あるご夫婦を訪ねて、家の周りのお掃除を手伝わせていただいたのですが、地震でたくさんの屋根瓦が落ち、津波で家に砂が流れ込んできたのだそうです。その日、私たちは、砂や屋根瓦を取り除く作業をしました。“当たり前のこと”が当たり前じゃない、福島はそんな時代を迎えようとしているのだと思いました」


復興ボランティアの根本由美子さんと撮影

国際交流協会の元メンバーとも再会
Blog: www.yamato-damashii.net

一方、放射能汚染についてハイジさんは、「目では見えないから、どの土が汚染されているか分からなかったし、これから環境や人々にどんな影響を及ぼすのかも見当がつかなかった」と言う。また現地では、国内の観光産業への影響も大きいとの懸念があることも、ひしひしと感じていたそうだ。

しかし外国人として、被災地の復興に貢献できることも、滞在を通して確認できたと言う。その中でも、やはり募金活動の存在は大きかった。実際に、家をなくしたハイジさんの友人が赤十字から物資の支援を受けて、生活が少し楽になったのだそうだ。また、日本を訪れることが観光産業復興ひいては福島県復興の大きな助けになると、改めて感じたと言う。

「私たちは皆、人間だからこそ、困っている時はお互いに助け合っていきたいですね」

アリソン・ラムさん

特別寄稿
蓬莱小学校6年生との給食(写真右がアリソンさん)

シドニー出身のアリソンさんは、2011年7月23日から福島県福島市に滞在している、現役のJETプログラム参加者だ。現在はALTとして、市内の小中学校で子どもたちに英語を教えている。

今から6年ほど前、当時大学生だったアリソンさんは、日本の大学に4カ月間ほど留学した。しかし現地の友達ができなかった上、日本文化を肌身で感じる機会も持てなかったことを、ずっと後悔していたと言う。そしてリベンジを試み、2008年にJETプログラムに申し込んだが、この時は選考からもれてしまい、11年の2度目の応募で、やっと参加できることになった。けれども日本の震災で原発事故が起き、豪州のメディアでも大きく報道された、“あのフクシマ”に派遣されることに。

案の定、両親や友人からは放射能汚染を懸念して、ずいぶんと反対されたそうだ。もちろんアリソンさん自身も不安だったので、医者を訪ね、汚染のリスクなどについて相談した。しかし、実際にどの程度のリスクがあるのかは分からず、世界保健機関(WHO)などが出す情報を参考にするしかないと言われた。それでも「こんなに長い間、日本での生活を夢見たんだ。2度とこのチャンスを逃したくないし、リスクを負ってでも行くしかない」と、皆の反対を押し切り、福島に向かった。

特別寄稿
近所の居酒屋で常連客の皆さんと撮影

現在、福島第1原子力発電所から60キロ離れた福島市に住むアリソンさんは、現地の様子について、「いろいろな所で“がんばろう”“負けねえぞう”という言葉を目にします。福島市は比較的安全な地域に指定されていて、私たちはごく普通の暮らしをしています。けれども、これは“たてまえ”だと思う時もあり、実際はとても不安に思っている人がたくさんいるように感じます」と言う。勤務する小中学校でも、疎開のために原発20キロ圏内から転校してくる子どもたちや保護者に対して心のケアをするなど、慎重に対応するよう気を付けているのだそうだ。

放射能汚染の影響については、今のところ何も感じられず、市民の人は皆、政府などから来るガイドラインに従い、「例え内心では不安に思っていても、できるだけ落ち着いて生活するように努めている」という。

一方、子どもたちは驚くほど元気でたくましく、特に小学生は英語が分からなくても無邪気に接してくれるのだそうだ。「ティムタムの端からミルクを吸い上げる“ティムタム・スラム”を子どもたちに教えると、英語で数を数えるよりも早くそのワザを習得してしまいました。皆ともっと仲良くなりたいです!」

外国人として被災地の復興に貢献するには、やはりアリソンさんも観光を推薦する。「最近、日本への往復航空チケットが当るキャンペーンなどもありますし、これを機会にもっと多くの人に日本を訪れてもらいたいですね」。

特別寄稿
中野小学校でティムタム・スラムに挑戦する子ど もたち

それではJETプログラム参加者として、アリソンさんはどのように被災地の支援をするのだろうか。

「“あの福島に行くなんて、すごい勇気だね”と、こちらに来る前にたくさんの人から言われましたが、私はただ単に日本で住むという夢を叶えるために来ました。しかし今は、私が長期滞在することで、“福島は安全だ”という証明になりたいと強く思います」

「帰国後は今までにない達成感を得られるように、悔いのない生活を送りたい」と言うアリソンさんにエールを送りたい。

 

■JETプログラムとは 海外諸国との相互理解と日本の国際化促進 を目的とし、日本の総務省と外務省、文 部科学省の協力の下、自治体国際化協会 (CLAIR)が1987年以来毎年実施している 外国青年招致事業。参加者の主な職種は、 小・中学校で語学指導をする外国語指導助手 (ALT)と、各地域で国際交流活動に従事 する国際交流員(CIR)で、参加者の90%が ALTとして日本のさまざまな地域に派遣さ れている。

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