小野伸二、大きな実りのその先に


Photo: George Suresh

サッカーAリーグ、ウエスタン・シドニー・ワンダラーズ

小野伸二、
大きな実りのその先に

 本稿が読者に届くころにはウエスタン・シドニー・ワンダラーズ(以下WSW)は既にレギュラー・シーズンを終え、熾烈な優勝争いにも白黒が付いているはずだ。優勝を果たしても、そうでなくとも、新興チームをここまで牽引した小野伸二の功績は揺るがない。その小野の成し遂げた大仕事とその先にあるものは—。 
取材・文:植松久隆 写真:George Suresh、Richard Luan

 

シドニー・ダービー燃ゆ


シドニー・ダービーには多くの熱いサポーターが駆けつけた

3月23日、満員に膨れ上がったWSWの本拠地パラマッタ・スタジアムは、今までにないような興奮に包まれていた。今季3度目のシドニー・ダービーを迎えたスタジアムのスタンドには赤黒と空色のコントラストが浮かび上がり、試合前にはそれぞれのシンボル・カラーの発煙筒が焚かれるなど、良くも悪くもダービー・マッチの雰囲気は十分。優勝決定後の“大騒ぎ”に備えてか、いつも以上に多くの警備員や警察官の姿が見られるなど、いつもと違う緊張感が伝わってきた。

試合は、両チームが、それぞれ「優勝」と「ファイナル圏内死守」という強いモチベーションを持って臨んだだけに、ただでも熱いダービー・マッチが、さらに熱いタフなゲームになった。結果、両軍合わせて10枚のカードが飛び交った乱戦は、1―1の痛み分けに終わり、WSWの優勝決定は持ち越された。さらには、その翌日にセントラル・コーストがアウェーで意地を見せ、優勝争いは最終節の最終局面までもつれ込むことになった。

 

最終節での“産みの苦しみ”


シドニー・ダービーには多くの熱いサポーターが駆けつけた

勝てば、ホームの大観衆、しかもダービー・マッチを争うライバルの面前での文句なしの優勝決定。これは、WSWにとって考え得る最良のシナリオだった。しかし、そんな思惑とは裏腹に優勝決定はお預けとなり、WSWは、最終節で“産みの苦しみ”を味わうことを余儀なくされた。

破竹の10連勝で、トントン拍子に進んだWSWの“サクセス・ストーリー”を簡単にハッピー・エンドに終わらせたくない他クラブの選手の意地がそうさせたのか、初優勝を前にいつにない緊張感でゲームに臨んだWSW選手の気負いがそうさせたのかは分からない。いずれにしても、「さぁ、皆さん、続きは最終節で」という状況は、事の成り行きを見守るすべての耳目を最終節まで釘付けにした。

 

ケガ人続出、ファイナルをどう戦う


シドニー・ダービーには多くの熱いサポーターが駆けつけた

今、WSWサポーターや日本人ファンが最も心配しているのは、足を引きずりながら交代した小野伸二のケガの状態。締め切り時点では、そのケガの状況に関してのクラブからの正式な発表はない。現時点で分かっているのは、試合後の会見でのトニー・ポポヴィッチ監督の「グローイン(足の付け根)の問題で、以前(ハムストリングス)とは別の足だ。明日、スキャンをしてみないと何も分からない」とのコメントに尽きる。ここでケガの程度を邪推するのは避けたいし、今は程度はともあれ、1日も早く回復することを願うばかりだ。

小野も含めて、現在のWSWはケガ人が続出しており、決して厚くはない選手層の中での必死のやり繰りを強いられている。複数のポジションをこなし貴重な戦力だったDFラ・ロッカは、シドニー・ダービーでの一発退場で4試合の出場停止の裁定を受け、最終節はおろかファイナル・シリーズ(以下、ファイナルに)も出場できない。ファイナルは、どの試合も問答無用の1発勝負だけに、最終節から2週間ほどの準備期間で、どれだけケガ人がリカバリーして、どれだけベスト・メンバーに近づけられるかが非常に重要となってくる。

 

シーズンの締めくくり、ファイナルの勝算は?


残念ながらケガで途中交代となった小野。早い復帰が望まれる(Photo: Richard Luan)

前述のように、最終節で今季の順位が確定するわけで、ここで改めて、レギュラー・シーズンの後のファイナルに関して説明しておきたい。その方式の詳細は、別掲の図表が助けになる。Aリーグでは、10チーム中6位までが、ファイナルに参加できる。したがって、シーズン後半には、“シーズン優勝争い”と同時に、中位のチームによる“ファイナル圏入り争い”が激しく繰り広げられる。

ファイナルのフォーマットは、Aリーグ自体試行錯誤を重ねており、毎年のように改良が加えられるので、あくまでも今年の方式として理解してほしいが、当然ながら、シーズン優勝のチームと6位のチームを対等に扱うことはできない。上位2チームは、セミ・ファイナルのホーム開催を保障することで優遇される。逆に3位から6位のチームはセミ・ファイナル進出決定戦を勝ち上がる必要がある。

WSWの2位以上は確定している。そのため、ファイナルは4月第2週に行われるセミ・ファイナルからの参加となり、その試合はパラマッタ・スタジアムで行われる(筆者注:締め切り時点の最終節終了前段階では、開催日は4月12日か14日かのいずれかになることは決まっているものの、具体的な日程は未定)。そのセミ・ファイナルに勝てば、晴れてグランド・ファイナル進出という運びになる。WSWにしてみれば、シドニー・ダービーでの小休止の後の3試合を3連勝すれば、シーズン優勝とファイナル王者の2冠達成が実現可能ということになる。

 

偉業のその先に見据えるもの


シドニー・ダービーで技ありの先制点でらしさを見せたデル・ピエロ(Photo: George Suresh)

小野伸二が、ファイナルもさることながら、シーズン優勝に重きを置くのには訳がある。WSWがシーズン優勝を果たすことでの最大の収穫は、来季のACL参戦の権利獲得であり、その実現のために何としてもシーズン優勝を果たしたいというのが、小野自身の大きなモチベーションとなってきた。

しかし、ここに来て、少し状況が変わってきた。多言語放送 SBSの報道によれば、AリーグとAFC(アジアサッカー連盟)との来年のACLでの豪州出場枠に関する交渉で、「2.5」枠をかなりの確率で取り戻せそうだという。「2.5」枠は、まず優先的にシーズン王者とファイナル王者に割り振られ、残りの0.5枠はシーズン2位のチームに与えられ、そのチームはACL出場をかけてのプレーオフに進出する。もし、この報道の通りに決着すれば、WSWのACL進出の可能性はグンと上がる。もちろん、最終節できっちり優勝を決めて、文句なしのACL進出を決定するのがベストであることには違いない。ただ、小野個人にしてみれば、堂々の凱旋帰国を果たす可能性が増えるということは、大きなベネフィットとなる。

いずれにしても、レギュラー・シーズンのすべての結果は、本稿が読者の手元に届くころにははっきりしている。現時点で把握している限りでは、残念ながら、自力本願で夢を叶える最終節には小野は間に合わない公算が大。しかし、残されたメンバーが一丸となってシーズン優勝という大きな実りを獲ることで、ケガが癒えたファイナルで充実感に満ちた姿で躍動する小野を目の当たりにできるものと信じて待つばかりだ。 (文中敬称略)

 日豪プレスではウェブ版でも随時、記事をアップしております。トップページのウェブ特集「小野伸二、活躍の軌跡」よりぜひご覧ください!
■Nichigo Pressウェブ版
Web: nichigopress.jp

小野伸二選手がシドニー日本人学校でサッカー教室

小野伸二選手と小野選手が所属するウエスタン・シドニー・ワンダラーズのコーチング・スタッフが3月5日、シドニー北部テリーヒルズにあるシドニー日本人学校を訪れ、1日限りのサッカー教室を開いた。

全校生徒が首を長くして待つ体育館に午後2時45分に登場すると、大きな拍手とともに大歓声が沸き起こった。

体育館での質問大会。日本で言えば幼稚園「年長さん」のキンディー・クラスから小・中学生の子どもたちの興味の的は、日本からやって来たスーパースターのように自分もどうやったらなれるのか、という部分だった様子。「何歳からサッカーを始めたんですか」「サッカーが好きでしたか?」「一番好きなスポーツは何ですか?」など無邪気な質問が次々に飛び出した。

ちなみに5歳でサッカーを始めた小野選手は、寝る時以外は買い物に行く時も何をする時もボールを肌身離さなかったとのこと。

その後、グランドでミニゲームを開催。120人の参加希望者が4つのグループに分かれて、小野選手をはじめワンダラーズのコーチング・スタッフとサッカーを楽しんだ。
小さな子どもたちは元気に走り、そしてゴールキーパー役の小野選手に思い切りシュート。スーパースターと一緒にボールを追いかけることが嬉しくて仕方ない様子で、こぼれんばかりの笑顔でサッカーを楽しんでいるのが分かる。

そして最も印象的だったのは小野選手の表情。こちらも終始笑顔が絶えない。サッカーを楽しんでいる子どもたちを見ることを、心から喜んでいるのがすぐに分かる。

ミニゲームの直前、今日はどんなコーチをする予定かと尋ねた時に、「サッカーが楽しいんだということをまず伝えたい」とコメントしてくれたが、子どもたちにとってはもちろん、厳しい練習と優勝争いの連戦の日々を送る小野選手自身にとっても、ほっと心を解きほぐせるとても有意義な時間になったのではないだろうか。

小野選手のインタビューの様子など、当日の詳細は日豪プレス・ウェブ版の記事をご覧ください!
「小野選手のサッカー教室が開催」
Web: nichigopress.jp/sports/47227

ファイナル・シリーズ、いよいよ始まる!

4月からいよいよレギュラー・シーズン上位6チームによるファイナル・シリーズが開催される。ファイナル・シリーズでは、まずレギュラー・シーズン3位と6位、および4位と5位による「セミ・ファイナル進出決定戦」が行われる。それぞれの勝者のうち、順位の低い方がレギュラー・シーズン1位のチームと、高い方がレギュラー・シーズン2位のチームと「セミ・ファイナル」を戦い、それぞれ勝ったチームが「グランド・ファイナル」進出となる。ファイナル・シリーズにもぜひご注目を!

■順位表(2月27日現在)

試合数 ポイント
1 ウエスタン・シドニー・ワンダラーズ 26 17 5 3 38 21 17 54
2 セントラル・コースト・マリナーズ 26 15 2 6 46 21 25 51
3 メルボルン・ビクトリー 26 12 3 5 45 43 2 41
4 アデレード・ユナイテッド 26 12 3 4 37 36 1 40
5 ブリスベン・ロア 26 9 3 5 30 28 -2 32
6 シドニーFC 26 9 6 5 40 48 -8 32
7 パース・グローリー 26 9 3 4 28 30 -2 31
8 ニューキャッスル・ジェッツ 26 8 4 7 30 42 -12 31
9 メルボルン・ハート 26 8 4 3 30 38 -8 27
10 ウェリントン・フェニックス 26 7 6 6 29 46 -17 27

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