日豪サッカー新時代(NAT)第70回「節目」

日豪サッカー新時代

第70回 節目
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

人生七十古来稀なり。唐代の“詩聖”杜甫が吟じた詩の一節から、70歳の誕生日を古くから「古稀」と呼びならわして祝う。当連載も足掛け6年弱を経て、ようやく「古稀」を迎えた。しかし、周りを見回すと連載回数で更に上を行く長寿連載が頑張っている。当コラムも、次は77回の「喜寿」、その次の「傘寿」とコツコツと積み上げていきたい。

こんな書き出しにも訳がある。Aリーグを代表する選手の人生、そしてサッカー選手としてのキャリアにも「節目」がある。そんなことを書きたい。

アーチー・トンプソン。Aリーグ、そして、リーグ最大のビッグ・クラブであるメルボルンVの正真正銘のレジェンド。そんな彼が、11季プレーしてきた、愛してやまないクラブを退団する。彼のキャリアは、それすなわち「メルボルンV」であり、彼こそまさに「Mr. Victory」なのだ。

惜しまれながら、メルボルンVを去るアーチー・トンプソン(© Melbourne Victory FC)
惜しまれながら、メルボルンVを去るアーチー・トンプソン(© Melbourne Victory FC)

11年と決して長くない歴史のAリーグには、1つのクラブに長いキャリアの全てを捧げる真の“ワン・クラブ・マン”は、まだ、ほとんどいない。若き日にベルギーで4季、帰国後もローンでオランダのPSVでプレーしたトンプソンも狭義の“ワン・クラブ・マン”には当てはまらない。

ただ、Aリーグ発足に合わせ、欧州でのキャリアを切り上げて帰国。以来、リーグの黎明期から得点を刻み続けることでAリーグの発展に寄与してきたトンプソンは、11季で90点のゴールを積み上げ、これは現時点のAリーグ記録でもある。

ケガに悩まされた11季目の今季も何とか1得点を挙げ、リーグ開始以来11季連続ゴールという前人未到の記録も成し遂げたベテランは、今年で38歳になるも衰えぬ運動量と勝負強さを発揮。そんな彼を欲しがるクラブは、Aリーグ内にもあるだろうが、そうなるとやはり年棒面の問題が出てくるであろう。

個人的には、十分にAリーグでもう少しやれると思うが、ビクトリー・ファンでは決してない筆者でも、ビクトリーの濃紺以外のカラーをまとう“アーチー”のイメージが湧かない。愛するクラブを去った時の涙から見ても、彼自身も自分がビクトリー以外のユニフォームを着てAリーグでプレーすることを潔しとしないのではないか。

選手としてのキャリアの大きな節目を迎えた“レジェンド”は、引退する気などさらさらない。サッカーを愛してやまない男の次の舞台がどこになろうとも、その活躍を温かく見守ろう。


【うえまつの独り言】
5月27日、13年ぶりのイングランド戦を控えるサッカルーズ。前回の対戦、イングランドに敵地で3−1と波乱を引き起こした試合の得点者には、ポポヴィッチ、キューエル、エマートンらの名前がある。イングランドにも、ベッカム、スコールズなど往年の名選手の名が見え、時代を感じる。

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