日豪サッカー新時代(NAT)第74回「帰還」

日豪サッカー新時代

第74回 帰還
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

ティム・ケーヒルが戻ってきた。今年のAリーグの最大の見どころになる(写真提供:FFA)
ティム・ケーヒルが戻ってきた。今年のAリーグの最大の見どころになる(写真提供:FFA)

「未帰還」という題で、ティム・ケーヒルについて書いたのは半年程前だったか。その時の「帰ってきて欲しい」という願いが通じたわけではないだろうが、サッカルーズの英雄は祖国への帰還を果たした。18歳の彼が海外でのプレーを選んで国を離れてから、およそ18年。長いプロ選手としてのキャリアで初めて祖国のプロ・リーグでのプレーを決めた「英雄、帰る」の報は大きく伝えられた。

帰国したケーヒルが所属するのは、メルボルン・シティ。メルボルン第2のクラブとして、これまでは人気、実績共に、クロスタウン・ライバルのメルボルン・ビクトリーの後塵を拝してきた。しかし、シティ・グループ傘下に入って以来、Aリーグ有数の豊富な資金力で戦力の整備に余念がなく、戦力は着実に上がっていった。そこにきて今季はケーヒルという絶対的カリスマが加わったことで、順当にいけば十分に優勝争いに絡めるだけの戦力が整った。

10月7日に開幕を控えた16/17シーズンに向けてAリーグは、新たなゲスト・プレーヤー制度を整備した。これまでは、短期間しか許されなかったゲスト・プレーヤーのプレー期間が、一気に通年に伸びた。その制度自体は「メルボルン・シティのケーヒル獲得のため」と揶揄されたが、実際、Aリーグがマーケティング的妙味があると判断する選手獲得には金銭的な援助を行うという制度の在り様が競争原理に照らし合わせて、どうなのかという問題は残る。

しかし、この制度が英雄の帰還の呼び水になったのは、紛れもない事実。この制度が無ければ、ケーヒルの帰国は実現していなかったろう。更には、ライバルに触発されたのか、メルボルンVがガーナ代表でプレミア・リーグのチェルシーで活躍したマイケル・エシアンとのゲスト・プレーヤー契約間近との報道も出た。また、インド・プレミア・リーグとの契約が1月まであるディエゴ・フォルランを、契約満了のタイミングでブリスベン・ロアがゲスト・プレーヤー枠で獲得するという話もある。フォルランの代理人の売り込みがここ数年かなり活発という話は聞いていたが、FFAが彼をゲスト・プレーヤーとして申し分ないと判断したことで、一気に獲得へのハードルは下がった。

いずれにしても、豪州の英雄は祖国に帰還した。その千両役者の大向こうをうならせるような活躍を期待したい。そして、できるなら、エシアンもフォルランも見てみたいものだ。


【うえまつの独り言】
今季のAリーグの予想めいたことを少々。優勝戦線を引っ張るのはメルボルンの両チーム。更には、戦力的にそろったパース、昨季王者のアデレードも侮れない。シドニーの両クラブは、どこまで開幕までにきちんと高めていくか。ブリスベンは正直、今年は厳しいと思う。

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