日豪サッカー新時代(NAT)第77回「拡張」

日豪サッカー新時代

第77回 拡張
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

英雄ケーヒルの凱旋で盛り上がるAリーグは、エクスパンションでの拡大路線に舵を切った(Photo: Nino Lo Giudice)
英雄ケーヒルの凱旋で盛り上がるAリーグは、エクスパンションでの拡大路線に舵を切った(Photo: Nino Lo Giudice)

当連載、今回で77回を数える。連載70回の時は「節目」と銘打って、「古来稀なるとされる古希」を枕に使った。そんな流れで77回目の連載は、「喜びを寿(ことほ)ぐと書く喜寿」を枕に使う。何かめでたいことは……と思いを巡らせると、1つだけあった。先日のFFA杯(日本の天皇杯に相当)でのメルボルン・シティの初タイトル。おめでとう、メルボルン・シティ。

さて、少し前置きが長くなってからの今回の本題は、最近、やたらとにぎやかなAリーグのエクスパンション。紆余曲折を経て、12月に入りAリーグが公式に18-19シーズンからの2クラブの増枠を表明したことで、その動きは一気に活性化した。噂に上っているだけで、メルボルン第3のクラブ、タスマニア、キャンベラ、シドニー第3のクラブ、ブリスベン/イプスウイッチ、ゴールドコースト、ジロング、ウーロンゴン、オークランド、ケアンズ、アデレード第2のクラブなど、候補地域には枚挙に暇(いとま)がない。

個人的には、エクスパンション自体には大賛成だ。広大な国土に10クラブしかない現行のリーグは正直、不完全なところが多く、いつかはクラブ間3試合ずつの変則開催も解消されるべきだと考えていた。一方で、初めに増枠ありきの安易な拡大路線にも疑念が拭えない。やはり、11年の短いリーグの歴史で既に3つのクラブの存続が立ち行かなくなった過去はそう簡単に清算されるものではない。

果たして多くの候補地の中で、今すぐ具体性を持って動けるチームがどの程度あるというのか。地域性を考えれば、現行でAリーグ・クラブがないタスマニアにこそクラブが必要なのだろうが、インフラ面や観客動員などの不安は拭えない。設備面や過去の実績を考慮して有力候補とされるサウス・メルボルンにも、メルボルン第3のクラブ設立を急ぐ誰もが納得できる大義名分は見つからない。

ここからは筆者の個人的な予想。地域性や他競技との競合も少なく地域全体の支持を得られそうな、キャンベラを新チーム候補の最有力に挙げておく。既に女子のWリーグでキャンベラ・ユナイテッドが運営されているのが大きな利点だ。そして、「ダービー」というキラー・コンテンツを増やす意味でNSL時代の名門ブリスベン・ストライカーズの参入の動きも推したい。しかし、各候補はいずれも「帯に短し、襷(たすき)に長し」の感は拭えないだけに、これからの推移をじっくり見守っていく必要がある。


【うえまつの独り言】
鹿島がレアル・マドリードを苦しめたクラブ・ワールド・カップ決勝。柴崎岳、昌子源など、今後の日本を背負う選手が世界のトップ選手に気圧されることなく対峙するのを目を細めながら見ていた。圧倒的な個を封じる戦い方を身をもって見せた鹿島の戦いぶりに、これから日本が歩む道のヒントがある。

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