日豪サッカー新時代(NAT)第88回「トリビュート」

日豪サッカー新時代

第88回 トリビュート
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

ポスタコグルー監督が残した実績は比類なきもの。後任は名将のレガシーを受け継いでいけるだろうか(筆者撮影)
ポスタコグルー監督が残した実績は比類なきもの。後任は名将のレガシーを受け継いでいけるだろうか(筆者撮影)

前回、豪州代表のアンジ・ポスタコグルー監督の去就について書いた。今月はFFA杯決勝(11月21日)の内容を取り上げようと、担当編集者に頼み締め切りを通常より遅らせてもらった。その結果、この大事なニュースに間に合った。ほぼ出来上がっていた内容を差し替え、再びポスタコグルーの去就について書くことにする。それだけ大事な話だから。

ホンジュラスに勝利し豪州が4大会連続5度目の本大会出場を決めてからというもの、世のフットボール・ファンの注目は「アンジの去就」の一点に集約されていた。12月1日、ロシアW杯の組み合わせ抽選会に臨む豪州代表監督は、アンジなのか――。この答えが思っていた以上に早く出た。前日にアンジとFFAのデービット・ギャロップCEOが長時間話し合いを持ったのを知り、明けて21日の早朝、起き抜けにメールをチェックすると「午前4時12分」に出されたリリースが同日午前9時からの記者会見を告げていた。これだけ慌ただしいのは「重大発表」、しかも、このタイミングならば「辞任」と察しが付いた。

そして9時までの間、どこかで「とはいえ、続投会見かもしれない」なんて淡い期待を抱いて待った。しかし、現実は厳しかった。メディアが一斉に速報で伝えたのは、予想通り「辞任」。そうだと知りつつも、一縷(いちる)の望みをつないでいたが、実際に「辞任」の文字を前にすると落胆しきり。

しかし、一番辛いのは本人だ。ブレない、頑固、クールというイメージとは裏腹に、実はエモーショナルで人情肌。それがアンジという男。今にも涙を流しそうなのを堪えながら言葉を絞り出す姿に苦悩の日々を重ねたことが見えた。

代表監督は孤独だ。代表チームには国中のフットボール・ファンの数だけの批評家がいて、批判の声は後を絶たない。アンジのような信念の人であっても、その連続に神経をすり減らしてきたろう。少し回り道はしても自ら2大会連続でサッカルーズをW杯へと導いたことで区切りにしたかったのだろうか。

本大会まで7カ月を切ったタイミングでの辞任には、「投げ出し」との批判も出るだろう。しかし、アンジが悩み抜いて出した答えを今は諒とするしかない。アジア杯優勝、2度のW杯出場と彼が残したレガシーをどう引き継ぐか。誰が就任しようがその大きな穴を埋めるのは楽ではない。

お疲れ様、アンジ。豪州フットボール界が誇るマエストロよ、永遠なれ。


【うえまつの独り言】
豪州代表の次期監督選びはどうなるか。このタイミングで長期政権を意図しての人選か。それとも、W杯本大会だけにフォーカスさせる大物のワン・ポイントか。どちらも一長一短あるが、とにかくは代表強化に停滞を招かない決定を望みたい。私の一押しは、世間の下馬評通りに現シドニーFC監督のグラアム・アーノルドの一択で。

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