日豪サッカー新時代(NAT)第91回「継承」

第91回 継承
文・植松久隆 Text: Taka Uematsu

サッカルーズ監督の座は、この2人(左:ファン・マルワイク、右:アーノルド)で引き継がれることになるのか(筆者撮影)
サッカルーズ監督の座は、この2人(左:ファン・マルワイク、右:アーノルド)で引き継がれることになるのか(筆者撮影)

2月1日、シドニーの豪州サッカー連盟(FFA)の本部で行われたサッカルーズ新監督ベルト・ファン・マルワイクの就任会見の取材に行ってきた。もちろん、ようやく決まった代表監督人事の注目度は高いのだが、監督自身も質問を否定しなかったように、今回の人選が“ショート・リリーフ”と誰もが分かっているだけあって会見場に高揚感は感じられなかった。

今回の監督選考は、ロベルト・マンチーニなどの世界的なビッグ・ネームとの交渉が難航して、早い段階から有力候補とされていたオランダ人のファン・マルワイクに落ち着いたという経緯がある。会見場で一緒になったジャーナリストの1人は、「W杯までの短期契約という条件を快く受け入れたのが、結局は彼だけだったんだよ」と、監督選考の内幕を語ってくれた。2000年代以来、豪州フットボール界がオランダ流に傾倒してきただけに「困った時のオランダ人監督」という選択肢は、FFAにとって安全牌だったに違いない。

新監督の会見の翌日、W杯後に長期政権でサッカルーズを指揮することが確実視される現シドニーFC監督のグラアム・アーノルドは4-0の大勝の後だけに上機嫌。その夜、ファン・マルワイクの視察があったことに関して「(ベテランの)アレックス(・ブロスク)なんかも代表入りのアピールをしていたね」と軽口を叩いた。思えば、アーノルド自身も現役時にオランダのエール・ディヴィジで長くプレーしており、かつて豪州を率いたヒディング、ピム政権時はアシスタント・コーチとして支えていたこともあって、オランダ系に連なる人材だ。

アンジ・ポスタコグルー前監督が「脱オランダ」を標榜した4年間を終えて、短期間とはいえ、オランダ人監督が戻ったという事実だけをして「先祖返り」と批判する気はさらさらない。ファン・マルワイクがどのようなチームでW杯を戦い、どのような結果と成果をアーノルドが継承していくのかを、じっくりと見守りたい。

サッカルーズの面々を見渡すと、ティム・ケーヒルがプロのキャリアを踏み出したミルウォール(英2部)に復帰することでようやく所属先が決まり、マーク・ミリガンがAリーグ真っ盛りのメルボルン・ビクトリーを退団、再び中東に渡るなど、W杯に向けて選手の動きが見られた。次に集合するサッカルーズに、ファン・マルワイクがどんな顔ぶれを招集するのか興味は尽きない。


【うえまつのひとり言】
Wリーグのグランド・ファイナルで、メルボルン・シティーがシドニーFCを倒し、頂点にたどり着いた。このチームには、元なでしこジャパンの近賀ゆかりが所属、貴重な戦力として優勝に貢献した。残念ながら直接取材の機会を逃してしまったが、いつか話を聞いてみたいものだ。

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